本物だった……っ!

「……優良さん、好きです」


 静かに告げられる言葉。


「……」


 俺の心を占めるのは驚き。言葉が出なかった。


「やっぱり、気づいてなかったのですね」


「……ごめん」


「いえ、咎めているわけではありません。それに、咎められるのは私の方です。優良さんを自分のモノにしたかった。だから、ここに連れてきたんです。ずっと私といれば私のモノになると思って」


 ……そっか。

 ひかりはどうやら本物だったらしい。

 本物のヤンデレだったんだな。


「ごめん。ひかりのことは友達として好きだけど、異性としは好きではないんだ」


 俺は後ろにいるであろう、ひかりに告げる。


「……はい。もう少し時間があれば」


 ひかりの声に悔いが混ざる。

 そして、わずかな非難。それが誰に向けてなのかは、考えるまでもない。


「……ひかり。たぶん、どれだけ時間をかけてもひかりのことを好きになることはないよ」


 たぶん、酷いことを言っている。

 でも言わないといけない気がする。


「俺は、たぶん昔好きな人がいたんだと思う。今は何故かそんな気持ちを抱けない」


「……」


 砂浜が静寂に包まれ、波の音だけが響き渡る。


「初恋でした。初めて、私を普通の女の子として扱っていただけたから。あなたと一緒にご飯を食べる度に想いが大きくなりました」


 ひかりがポツリとこぼす。


「……ごめ――」


「だから、諦めません。一回振られたぐらいでは。何回もしつこく粘ります。優良さんのことが好きだから」


「うん」


 砂浜に再び静寂が訪れる。


「ゆうくん、帰ろ」


 破ったのは愛莉だった。


「そうだな」


 俺は立ち上がり愛莉の傍に寄る。

 愛莉が歩き出すのを俺は黙って着いていく。


「あ、ひかり」


 俺はひかりの方を振り向く。

 そこには、今も上裸のひかりがいたけど、膝を抱えて座っているから何とか隠れている。大丈夫だ。


「なんですか?」


「楽しかったよ。ありがとう」


 ひかりは少しだけ悲しそうにして、笑った。


「……ひどい人ですね」


「あと、東雲さんにもありがとうって伝えといて」


「忍は……」


 ひかりの視線が下に下がる。


「東雲さんはひかりを悪意あって傷つける人じゃないと思うんだ。だから、話だけでも聞いてみたらどうだ?」


 この6日間、ふたりのことはよく目に入った。

 ふたりとも互いに信頼していて、ただの侍従関係じゃないことは明らかだった。


「友達なんだろ?」


「……忍はただの……いえ、そうですね。少しだけ話してきます。それから、優良さんの持ち物は全て私の部屋にありますので勝手に取って行ってください」


 ひかりはそれを言い残して走り出した。

 東雲さんが去って行った方へ。

 ちなみに走る前にビキニはきちんと着けていた。


「ゆうくん」


「なに?」


 愛莉の方に顔を向ける。


 ゾクッ


「家に帰ったらお仕置きだよ?」


 ハイライトの消えた瞳で見つめられ、淡々とした言葉が耳に入る。


 俺、悪くないのに。








―――――――――――――――――――――

昨日投稿できなくてすみませんでしたぁぁ!

書く時間がありませんでした。本当に申し訳ございませんでした!

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