それぞれの予定
昼休みの教室、いや学校では浮わついた雰囲気で満ちていた。
というのも、一週間後に夏休みが迫っているからだ。
みんな、夏休みの計画を立てている。
「ゆうくん、今年の夏祭り一緒に回ろう?」
それは、愛莉も例外ではなかった。
「いいよ、っていうか毎年行ってるじゃん」
「今年は特別なのっ!」
そっか。今まで俺が好きだったから誘ってくれたのか。
本当に気づかなかったな。
でも、今年はお互いを意識しての夏祭りか。確かに特別だな。
「小川くん、二泊三日の旅行に行かない?」
と、隣から早川さんの声が。
二泊三日か。それも男女。
行けるのか……?
「あら、愛莉と夏祭りは行けるのに、私と旅行には行けないのかしら?」
「行けるよ!」
そんな悲しい声で言わないでくれ。
俺の心に来るから。
「ありがとう」
まあ、早川さんの笑みが見れたからいいか。
そのあとは、愛莉と早川さんがバチバチに睨み合っていた。
平和だなあ。
◇◆◇◆◇◆
「お嬢様、大丈夫ですか?」
ひかりの部屋でひかりの正面に座る忍が声をかける。
ひかりの表情は珍しく暗く沈んでいた。
「何の問題もありませんよ?」
「ですが……」
忍から見るひかりの様子はどこか虚ろだった。
何をしても覇気がない。そんな感じだ。
「今日も食堂に来ませんでしたわ」
「……はい」
誰とは聞かない。
優良のことだ。
優良は最近2人が交代でお弁当を作ってきてくれているため、教室で3人で食べているのである。
しかし、そんな情報は既にひかりの耳に届いている。
それなのに、焦燥しているのは、優良の頭からひかりの存在がなくなっているのではないかという危惧。
「そんなことはないのです。だって今まで私のモノにならなかったモノなんてなかったのですから」
「……お嬢様」
「そうですよ。私のモノにならないなんてあり得ないのです。今までは、少しの思い出作りと見逃してあげてましたけど、もういいでしょう。忍、準備をしなさい」
ひかりが立ち上がり忍に命令する。
「お嬢様、何を?」
「夏休みが始まってから、優良さんをお家にお招きいたします」
「……はい」
忍にはそれでひかりの意図が伝わったのか重々しく頷いた。
「そうですね、お父様に頼めば10日……いえ、一週間は大丈夫でしょう」
忍はひかりの声を背に部屋を出る。
「……お嬢様、そのやり方では手に入ったとしても」
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