ひとまず一命は取り留めました
まずい。
何の言い訳もできない。
愛莉の好きな人が全く予想もできなかったのは俺だったからか。
「その、2人ともごめん。まさか告白されているなんて思いもしなかったんだ」
俺は2人に素直に頭を下げる。
許してもらえるかは分からないけど、謝らなければいけないだろう。それほど、最低なことをしたんだから。
「へえ、そっか。嘘だと思っていたんだ、私の告白」
「うん。練習の相手にされているんだと」
俺は正直に答える。
普通に怖いです。顔をあげれない。愛莉の表情を見れない。
「じゃあ、私は?嘘だと思ったわけ?」
早川さんが尋ねる。
めちゃくちゃ言いづらい。
だが、俺は言うぞ……っ!
「あの、『試しに、会ってみる?』と聞き間違えて、冗談言ってるんだと思いました」
「……そう」
底冷えするような声が上から降ってくる。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
「本当にごめん。俺にできることなら何でもするから!」
俺はさらに深く頭を下げる。
周囲に見られているが気にする余裕もない。
「はあ、もういいよゆうくん。ちょっとショックだけど謝ってくれたし許すよ?だから、これからもよろしくね?」
愛莉……っ!
「あの時、私もどうかしてたわ。両思いでもないのに告白して。でも、これから小川くんが私のことを好きになればいいだけよ。だから、これからもよろしくね?」
早川さん……っ!
「2人ともありがっ――」
ちょっと待て。
『これからもよろしくね?』、だと?
それはどういう意味だろう?友達として?それとも恋人として?
前者と後者で重みが全然違うぞ。ここで間違えたら今度こそ終わる。
「あ、あの俺と愛莉はその、これからは友達なのか?」
「は?」
愛莉の瞳から光が消える。
「い、いやごめん!恋人だったな!」
「はあ?小川くんの彼女は私よ?」
隣から早川さんが低い声で言う。
「何言ってるのかな?今、ゆうくんが恋人って言ったよね?」
「言わせたの間違えじゃないかしら?脅迫した上で付き合うなんて、小川くんが可哀想よ」
「……ゆうくんに愛されていない癖にっ」
「お互い様でしょ?」
怖い。2人が向き合って言い争っている。
「ね、ねえ。2人とも」
「「なに?」」
2人の顔が同時に俺の方を向く。こわ。
「い、一度、友達からやり直さないか?」
俺は命を賭ける。
この発言はそういうことだ。
「どういうこと?私の告白なかったことにするの?ゆうくんが私のこと好きじゃないとかそんなの気にしなくていいんだよ?私のこと好きにさせてみせるから」
「小川くん、私は昨日勇気を出して告白したのよ?それがちゃんと伝わらなかったのは悲しかったけれど、気にしなくていいのよ?小川くんは私に委ねればいいの」
それじゃ、二股なの変わらないじゃん!
「はあ?さっきからあんたが邪魔だって言ってるの?」
「どう考えても愛莉が邪魔よ。ちゃんと告白しておいて振られた幼なじみさん」
「振られてないしっ!」
「振られたの同然でしょ」
いや、たぶんこの2人蹴落としあうな。
いずれ二股は回避できそうだ。安心安心……できるかっ?!
「お、俺はちゃんと好きになりたい!だから好きになるまでは友達でいてくれないか?そして、好きになったら俺から告白するからっ」
もう、これしかないだろ。
「友達……いやでもゆうくんから告白……っ」
「これで、選ばれた方が本当の両思いの恋人ということね」
2人が頭を下げて考える。
「それでいいよ」
「私も構わないわ」
「あ、ありがとう……っ」
こうして、俺は無事に生き延びれたのであった。
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皆さまのおかげで一昨日ぐらいからラブコメ週間ランキングで100位以内に入れました。
ありがとうございます。
まずは完結を目標に頑張ります。
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