なんで俺に彼女が2人いるってなってるの?

 何が起こっているのだろうか。


「ねえ、どうしてあなたがゆうくんの腕に身を寄せてるの?離れてくれないかな、匂いが移るでしょ」


「あら、上書きしてるのよ?」


 いつも通り愛莉と一緒に登校していると、早川さんが左腕に絡み付いてきた。

 それに対抗するかのように愛莉も右腕に絡み付いてくる。

 そして、俺を挟んで喧嘩している。


「私のゆうくんに触れないで!」


「聞き捨てならないわね。今は私の小川くんよ?」


 いや、俺は俺のだからな?

 にしても、早川さんがこんなことするなんてどうしたんだ?

 一周回って冷静なんだが。

 愛莉に関してはいつも通りなんだが、言葉に棘があるな。


「2人とも落ち着きなよ。結構注目浴びてるぞ?」


 俺は穏やかに注意する。

 すると2人は俺の方に顔を向ける。


「ねぇ、ゆうくん!この女どういうこと?ねえ、もう他の女作ったの?私に飽きたの?でも浮気はダメだよね?ねぇ?ねえねえ?」


「小川くん、本当のことを言うべきよ。愛莉のことなんて興味ないって。もう、私にしか眼中にないって。じゃないと、可哀想でしょ?」


「え?2人とも何言ってるの?」


「「は?」」


 2人の足が止まる。

 2人が暗い目で俺を見つめる。

 怖いんだけど……。


 いや、でも本当に何を言ってるんだ?

 だって浮気というかそもそも愛莉とは付き合ってないし。

 私にしか眼中にないって、まるで俺が早川さんのことが好きみたいになってるじゃないか。


「ゆうくんこそ何言ってるの?私の言ってることは間違ってないよ?だって、私たち付き合っているのに、ゆうくんが他の女と……」


「え?俺たちいつから付き合ってたの?」


 俺の記憶にそんな覚えないんだけど?


「そういうことよ愛莉。小川くんと付き合っているのは私よ?」


「え?早川さんとも付き合ってないよな?」


 俺の記憶にそれもないぞ?


 待って、2人ともおかしくない?


「ゆうくん、忘れたなんてふざけないで!あの日、あの屋上で告白したよね!!」


 いや、そんな記憶……


「……」


 声が出なかった。確かにあったからだ。というか、一昨日に。


「小川くん、昨日のこと忘れたとは言わせないわよ?『じゃあ、試しに付き合ってみる』って言って『お願いするよ』って答えたのは誰かしら?」


「……」


 全身から嫌な汗が吹き出る。

 まずい、何の言葉も出ない。

 言い訳をするなら、予行練習だと思ってたし、聞き間違えたわけだし。

 俺が悪いわ。


「で、もう一回聞くけど、浮気なの?」


「小川くん、私としても浮気は許せないわよ?」


 2人が詰め寄ってくる。


 これほどまでに迫られた場面はあっただろうか。

 俺はどうしたらいいんだろう。俺、このままだとただの二股最低グズ野郎じゃん……。

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