ー32-風鈴
蔵を閉め、いつもの様に
錠をする。
作業を終えて
寺の方に向かった。
風通しと、
目録と蔵の品との照らし合わせ。
当代ー養父は
そろそろ地下奥から戻ってくる。
汗で崩れてしまったシャツを
一刻も早く着替えたかった。
着替えたら。
戻った養父と
冷たいものでも食べよう。
冷蔵庫には
確か
ところてんがあったはず。
寺に来て
最初に食べて以来
ところてんが大好きだ。
ポン酢はまだあっただろうか。
汗を流し着替え終えて。
彼はポン酢にカラシを足した
ところてんが大好きなのだ。
縁側で食べるか。
台所の食卓で食べるか。
冷えた麦茶がよかろうか。
日差しは
多少
陰りに向けて。
風鈴が小さく鳴った。
縁側に彼がいた。
「ああ、帰ってたんだ」
「おう、ただいま。
ハゲはどうした」
「もう戻りますから
一緒におやつにしましょう」
「ハゲなんか待たずに
食おう」
「そんなことしたら
寂しくて
剃髪いらなくなっちゃうでしょ」
「うーん、撫でてジョリ、がないと
つまんねーな」
「そうですよ。
今用意しますね」
「おう、俺もいく」
風呂場から
水を使う音がした。
「ハゲ間に合ったな」
「
これから
ところてんだよ」
「おー」
風呂場から返事。
「
早く出ないと
食っちまうぞ」
風鈴。
「そうだったの?
ずっと そうだと思っていたよ」
「そう思っても仕方がない。
あの時は警官じゃなかったよ」
あの場所から連れて出てくれたのが
長い事『警官』だと思い込んでいた。
たまたま、の話題で
養父と彼と二人掛かりで違うと言われ
勘違いには納得する。
あの
物事を
冷静に判断出来たとも思えない。
ところてんを食べて
当時の事を ふと思い
聞いてみたのだ。
麦茶はよく冷えていた。
ところてんにカラシはよく合う。
うん、うまい。
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