ー30-散





笑みが歪み、

先代のかおが縦に裂けた。



裂け目から、


          赤黒いものー

      闇に溶けた濃い血糊ちのり

血と腐乱ふらんの進む臓物ぞうもつの臭気をまとうー




飛び散る。




せ返るような臭気。

染みるままに

涙が止まらず。


胃液が口に広がり。





ほむらの黒い影は笑っている。



闇に溶けた焔。


赤黒い

溶けた血糊と腐乱の進む臭気を

まき散らす

ほむらと。



裂け目から飛び散ったモノ。

帯び。

揺らぎ震れながら

飛んでくる。



湿り気を帯びた音。


じゃぶ、り。


飛び散り。


真っ直ぐに。



じゃぶり。



ほむらの黒い影は笑っている。



ち、り・・・ん。



…り、ん。

















碓井うすい溫烱はるき

走り出した。



寺に向かって走り出す。


戻る。

もどる。





ほむらの黒い影を追う時よりも

早く走っていた。


寺に戻る。











八角堂へ。





あるじに願う。


ほむらの黒い影を退け。

人の子を助けたい。


八角堂の奥、

あるじに心から願うのだ。

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