ー28- 鈴 





ほむらと狐火と呼ばれる炎の長い列。

轟音の中を

割き響く鈴の音。




ち、り・・・ん。




見掛け、視て。

走り出す先代を碓井うすい溫烱はるきも追っていた。

必死に追い、

先代は驚く程に足も速く、

 碓井うすい溫烱はるきは足を取られ転び掛け、

思いも寄らぬスピードで

 坂を駆け抜け、

   山を登り抜けー


 

    


ちり・・・ん。





     ほむらと狐火と呼ばれる炎の長い列!






伸ばす先代の手に

ほむらまとい絡み。



絡むほむら

 先代の口に

    眼に。




ちり・・・

     ん。

 






先代が燃え上がっていた。


一瞬でほむらに包まれ。


炭となり。

焼け跡となり。



豪雨と、その轟音。

今どこにいるか判らない程に

白みかすむ中。


き響く

鈴の音。



碓井うすい溫烱はるきの目の前で

先代が焼け落ちた。



ほむらまとう黒い影、に

視えていたモノは。

焼けた、黒い痕跡となった先代を、

見。


声もない叫びをあげる碓井うすい溫烱はるきを。

見。



碓井うすい溫烱はるき

先代だったあとから

ほむらまとう黒い影を見。




あとだけ残した先代、だったモノ。


ほむらの黒い影、だったモノ。

影だった場所に貌がある。



焼け痕になった先代の顔が

ほむらの黒い影のかおになった。






先代は

異形の狭間はざま

成り果てた地で

異形の狭間のほむらに焼かれて喰われ。

ほむらの黒い影、に成ってしまった。




ちり・・・ん。






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