-22-蕉ー打
ありありと。
記憶。
激雨。
豪雨。
「
あの日。
八角堂を前に。
「お願いします!
どうか!
願いを!
お願いします!」
あの時も
豪雨だった。
「お願いします!」
砂利の上で
土下座する姿。
法隆寺の八角堂に似た
それを前に。
豪雨と
その
声を張る。
「お願いします!
お願いします!」
何度も額を
何度も頭を下げる。
「主!
お願いします!
人の子を助けて下さい!」
豪雨激しく。
涙は紛れ、
それでも声を限りに
叫び願う。
前日に備えた菖蒲は
豪雨で倒れていた。
小さな塔。
朽ちるかと思える風貌と
頑強さ。
彼のいる空間。
小さな八角堂、奥深く。
「お願いです!
あの子を助けて・・・・!!」
額の先に気配を感じた。
目だけやると、足がわかる。
視界。
菖蒲の先が
下を向いている。
「約束をしろ。
顔を上げた先にー
ああ、彼だ。
「二度と
「わたしでは出来ません。
どうしても出来ません。
あの子が死んでしまう、
急がないと助けられない。
人の子です。
本当に 人の子なんです。
お願いします、お願いします。
わたしには・・・」
「いいか、約束だぞ。
二度と主とは呼ぶな」
!
芭蕉の葉が
砂利を打つ音と。
急ぎ顔を上げる。
芭蕉を持つ彼が
飛び去る後ろ姿。
たちまち
小さくなっていった。
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