「知ってはイケナイ。」

ー21ー視ー見

崖岩に無理やり

足が置ける。

ただ見ると

岩があるだけ。

視れば足場は判る。

掴（つか）まる処（ところ）もない。

右足を置くと

左足は置けない。

右に断崖。

左側を

崖壁（がいへき）に

擦り付けるように歩く。

半ば森に飲み込まれている崖岩。

きちんと視れば

歩き方が判るのだ。

正しい順番で足を置けば

きちんと目的の場所に

たどり着く。

『人はいない。

　獣（けもの）もいない。

　蟲もいない。

　生きている、こちらのモノはいないんだ。

　だから向こうの山には

　入っちゃいけない』

森に

山に

喰われかけた、

誰も足を踏み入れない断崖。

上から下へと断崖を這う形で伸びる木々。

森。

上の方が木々が深い。

崖と森

しかない。

『正しい順番で決して上ってはいけない。

　間違えた順番でもいけない。

　向こうの山に、触れたら最期なんだよ』

碓井（うすい）溫烱（はるき）は立ち尽くす。

深い木々。

さらに奥の

森の奥の。

＿＿がこっちを見ている。