-7ノ締-




店主は、カメラ屋を手放した。


修行寺から帰って、

昼夜問わず 妙な囁き声が聞こえ続けた。

耳鳴りのように奥で響く小さな声が止まらない。

持ち帰ったお札は すぐに文字が濡れて崩れてしまった。


それ以外は

大した出来事は起きてはいない。

ただ

無性に怖くなった。

住職は店主がその後どうしているかは知っているようだが、


「お元気ですよ」


としか言わない。


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3人目の彼女ー

その後の様子は判らない。


家族への連絡や他の2人のことに関しては

やはり住職が修行僧の代わりに 色々手を尽くしていたようだ。


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祓えないモノの この話を最初に聞いた時から

山を三つは超えるほどの年月が経っていると思う。


今、

住職は鬼籍に入られ久しく。

修行僧は あい変わらず。





彼女はどうなったんだろうか。



「祓えないモノはある。

 外に広がらないように 封じ続けるだけ。」



修行僧は 今でも封じの行を続けているのだろうか。





「アレは、オとした」


なにかの折に

修行僧が呟く。



アレを?

アレ・・・オとした?

落とした?


封じは続いている、と聞く。


落としたものは

何に封じた?



3人目の彼女。

生き残った。

とだけ聞いている。


それ以上は誰も答えてくれない。






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