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彼女は取り乱していた。






2人死んだ。


わたしも死ぬ。


写真の通りに

2人死んだ。


わたしも

写真の通りに

なるんだ。



泣き叫ぶ彼女。




店主は必死になだめる。




この手の

「あらぬモノ」の時に

写真や

関係者の面倒を見てくれるー

プロに初めて連絡をした。



知人に

以前世話になったのだと、

もしもの場合にと。

連絡先を教えて貰っていた。



そんなことには

そうそうなるまい。

そうは思いつつ

捨てずに取っておいたメモ。



滅多に行くことはないが

場所はなんとなく

わかる。

寺の場所。



閉店には早いが。

それでも

彼女を放り出せない。




取り乱す彼女をなだめている最中さなか


「今すぐ2人で来い」




寺からの電話だ。


店主は

急いで店を閉めた。



店主はのちに思ったのだ。



「あの時の電話はタイミングがよかった。

 たぶん 視えていたんだろう。

 わかる人だから」





店主。

写真とフィルムをわし掴み。

錯乱しかけている彼女を引きずり出す。

目的地に向けて車を飛ばした。



電話で指示された通りの道を

ひた走る。


後部座席ー

蒼白に震える彼女。


「すぐ着く。付いたら大丈夫だよ」


「大丈夫だから」


必死に言い聞かせながら、車を走らせた。

ハンドルを握る手が震えていたことを

店主はのちのちにも

よく覚えていた。





寺の門前ー

僧侶らしき人物がが待ち構えていた。


寺には入れてもらえないばかりか!

車から降りてはいけない。

近寄ってもいけない。


「ウチで手に負えるような代物シロモノじゃない」




カメラ屋の店主が連絡をした後日。

ー3人目の彼女が

写真の現像を頼んだ翌日のことになる。


住職の元には

知人の修行僧から電話があったのだ。


「住職は『アブナイモノ』と関わりになった。

 ソレはあんたの手に負えない。

 寺に入れてもいけない。

 寺に落ちるから。

 出来るだけ近づけないで。

 すぐにこちらに来るように伝えなさい。

 こちらでなんとかしてみる」



普段の修行僧は優しく柔らかな口調で。 

語気も強く

只ならぬ物言いの修行僧に

住職は身構えた。

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