1-7

「ぐおおおおッ」

 強烈な重力とダメージに抗いながら、エニシはついに床の破壊に成功していた。

 エニシと共に落下するムラクモ。

 星式によってエニシを真下に叩きつけることも可能だったが、ムラクモは自身にまとわりついた氷を砕くことを優先した。

 既に凍結の侵食は止まっている。

 氷結の権限拡大が解除されたのだ。

 ムラクモは破砕の一撃を警戒し、敵から少し離れた位置に着地した。

 前方にはカナタ。

「伏せろ!」

 カナタの声でムラクモが身を屈めると、その頭上を氷の槍が突き抜けた。

 ミナモは間髪入れず、つま先に生成した氷の刃でムラクモを蹴り上げる。

 だがそれよりも早くカナタの飛び蹴りがミナモを突き飛ばした。

 その隙にエニシが背後からカナタを襲う。

「速式」

 引力を用いたムラクモの高速突進。

 エニシは両腕で突進を防ぐも、その身体は壁を突き破って廊下にまで押し出された。

 さらにムラクモは敵の足を掬いにいく。 

 星式によるマウントポジションはムラクモの必勝系である。

 すかさずエニシは破砕の拳で反撃する。

 否、その一撃が放たれることはなかった。

 背後に出現したカナタが、エニシの腕を抑えていたのだ。

 ムラクモがエニシを押し倒し、馬乗りになった。

 ここから始まるのは、重力で敵を押さえつけた状態からの乱打である。

 だが、ムラクモの後方ではミナモが槍を担いていた。

 氷結の力を十分に注いだ槍は、先程よりも巨大なものに成長している。

 その時、ムラクモの背中を守るようにカナタが前に出る。

 ミナモは躊躇なく槍を投げ放つ。

 そしてそれはカナタを貫く直前で、消失した。

「悪いな」

 深淵のコードは、実体無き領域に干渉する力。

 カナタに触れた槍は深淵に消え、今、その右手に握られている。

 投げ返された氷の槍が、ミナモの胸を貫く。

 廊下では、ムラクモによる打撃音が絶え間なく響いていた。

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