1-6
そこは、狭く薄暗い部屋だった。
棚や機器が積み上げられた、いわゆる物置部屋である。
部屋の中心に、一人の少女があぐらをかいて座っている。
名前はミナモ。
氷結のコードを持つ契約者。
その背後から、音も無く現れたのはカナタ。
ミナモはコードの実行に集中しているのか、動く気配が無い。
カナタはその細い首をへし折るべく手を伸ばす。
次の瞬間、鮮血が散った。
振り向きざまに放たれたミナモの斬撃が、カナタの腕を切り裂いたのだ。
それはナイフではなく、少女の手を覆う氷の刃である。
ミナモはさらに踏み込みながら氷の手刀を突き出す。
だがカナタの前蹴りが先にミナモの腹部を捉えていた。
棚に衝突しながら、ミナモは氷の刃を投げつける。
カナタは大きく跳躍してそれを躱した。
そのまま天井に両手を付き、押し返す反動で真下に蹴りを放つ。
ミナモは左腕に生成した氷の盾でそれを受け止めた。
カナタは盾を踏んで仕切り直そうとするが、ミナモに左足首を掴まれて脱出ができない。
一瞬のうちに左足は氷塊で覆われた。
カナタはとっさに棚を掴んで崩す。
崩れ落ちる資料にミナモが僅かに気を取られた隙に、カナタは深淵の力で部屋の隅へと脱出していた。
だが、左足は氷で覆われたままだ。
悠長にそれを砕いている時間は無かった。
資料の山から立ち上がるミナモの手に握られているのは、氷で生成された大きな槍。
避けきれるか。
否、避けたところで片足の使えない状態では反撃が難しい。
一瞬で意識を飛ばすことができなければ、掴んで凍らされる。
「死ね、略奪者」
ミナモが槍を構える。
その時、天井に大きな亀裂が走った。
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