山田 零士 1年次夏期集中訓練 移動日(完)
章は、ホッとした様子で
「そうなんだ。大したこと無くて良かった」
と言った後、真面目な顔をして
「しかし、師匠を1撃で倒した魔女って強いんですね。
魔女って、言うからやっぱり黒い服を着た老婆なんだろうか?」
と言うと、師匠達が爆笑した。
俺はため息をつき、霜月先輩は微苦笑を浮かべている。
章と明日香はよく分かっていない様で、首をひねっている。
章は少し考えてから
「ひょっとして、魔物?」
と言った。
師匠達の笑いのツボに刺さった様で、お腹を抱えて笑っている。
しばらく笑った後
「ギックリ腰だ」
と土森さんが言った。
「ギックリ腰?」
と章が反復する。
「石割師匠は、ギックリ腰になったからココに来れなかったと言っているんだ」
と俺が補足すると
「なんで、ギックリ腰になるんだ?」
と聞き返す。
「ドイツ語で、ギックリ腰の事を
日本語に直すと魔女の一撃になる」
と霜月先輩が答える。
少しして、明日香が
「そうなんだ」
と理解を示したが、章は考え込んでから
「魔女と呼ばれる人物か魔物かと思ったんだが、違ったのか」
と真面目に答えた。
俺は呆れていたが、師匠達はまた笑っている。
笑いが収まると、土森さんが
「まあ、石割は来れないから、代わりの奴が来るから、そのつもりでいてくれ」
と言って小さく笑いを続ける。
「随分とツボに嵌まっている様ですけど」
と俺が言うと
「そりゃな。
俺達は新幹線移動だったから、名古屋駅まで電車で移動するために駅で待ち合わせしたんだ。
そしたらあいつは、集合時間の1時間前から待っていたんだよ。
それで俺達が着くなり、遅いだとか文句を言っていたんだ。
『まったく、遠足前の幼稚園児かよ』って突っ込んだら、気不味そうな顔をして何事も無かった様に床に置いた荷物を持ち上げ様とした瞬間にゴキっと音がしたと思ったら、床に倒れこんだ。
大慌てで近寄ると
『腰がー』
と繰り返して呻いていた。
周りも集まり大騒ぎになったので、駅の職員の休憩室で休まして貰っている間に
まあ、最後は強制的に引きずられて車に乗せられていたな」
と言って笑っている。
状況は、容易に想像出来て苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
「ところで、杏奈ちゃんって?」
と章が聞く。
「杏奈ちゃんは、石割さんの娘さんよ」
と華山さんが教えてくれた。
娘さんが居たんだと思っていると
「安心しろ。
あいつに似ず、奥さん似の美人だ。
あと、既婚者だから変な期待するなよ」
と章を見ながら土森さんが言った。
章は
「そんな事考えていない。
ただ、師匠に娘が居た事に驚いていたんだ」
と力強く反論している。
章の態度見て
「そんな反応するから、からかわれるんだよ」
と小さくつぶやき微苦笑を浮かべる。
「雑談はここまでだ。
夏期集中訓練の予定を話すぞ。
椅子に座れ」
と土森さんに言われ、俺達は対面する席に着く。
土森さんは、霜月先輩の方に顔を向けると
「坊主は、この夏期集中訓練期間中に可能な限り強くなれ」
と言うと
「随分と無茶を言う」
と苦笑いを浮かべて返す。
「訓練課題は、こちらで用意してある。
それに、教育官達も協力してくれるから覚悟しな」
と言って、ニヤリと笑う。
「お手柔にお願いします」
と霜月先輩が返すと
「おう。
楽しみにしとけ」
と言って声を上げて笑った。
土森さんが俺達の方を向き。
「お前達には、属性訓練と戦闘訓練を並行して行う。
夏期集中訓練期間中に、新入隊員相当の技量を叩き込む。
ビシバシ行くからな」
と言われ、俺と明日香は無言で頷き、章は
「望むところだ」
と気合を入れていた。
「1日の大まかな流れを教えるよ」
と華山さんが声を上げた。
俺達の注意が華山さんに向くと
「5時30分 起床
5時35分 点呼
6時00分 朝食
6時30分 早朝訓練
8時30分 午前訓練
12時00分 昼食
13時00分 午後訓練
17時00分 夕食・入浴・洗濯
19時00分 夜間訓練
22時00分 就寝
22時15分 消灯
が基本よ」
と言った。
若林教育官が、ホワイトボードに書き出していた。
俺は、メモ用紙を取り出し書き写し始める。
それを見た明日香も、慌ててノート出している。
章は、ホワイトボードを見ながら
「みっちり訓練漬けだな」
と呟いて呆けている。
「そうだね。
他の訓練生より、訓練時間を多く取られているね」
と霜月先輩が答えた。
「そうなんですか?
他の訓練生は、違うのですか?」
と章が聞く。
「そうだね。
去年だと、起床時間が1時間遅かったから、早朝訓練は無かった。
後は、夜間訓練も無いね。
その分、午後の訓練時間が1時間長く、夕食の時間が18時からだったと思った」
と霜月先輩が答えると、若林教育官が
「今年もそうだぞ」
と微苦笑を浮かべながら答えた。
「俺達だけって事ですか」
と章が驚きを表すと土森さんがムスっとした顔で
「正直。
これでも訓練時間が足りない。
神城教導官の班に追付こうと思ったら、この倍の時間が欲しい位だ」
と言った。
「まあまあ。
時間は有限だから仕方無いわよ。
その分、濃密な訓練になるから覚悟しなさい」
と華山さん言われ、覚悟を決める。
「いい顔になったな。
早速だが、今日の夜間訓練から始めるぞ。
19時からここで訓練を行うから遅れず来いよ。
取り敢えず解散だ。
飯と風呂等を済ませておけ」
と土森さんに言われ
「夜間訓練が終わったら、直ぐ寝れる様に準備もした方が良いわよ」
と華山さんに言われた。
こうして、俺達の夏期集中訓練が始まった。
女体化したら最強(凶)!? サイドストーリー イリュウザ @Iryuza01
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