山田 零士 1年次夏期集中訓練 移動日(5)
「科学的に確立していない?
じゃあ、自動能力測定機は?」
と問うと
「自動能力測定機は、発露済みの
だが水鏡検査法なら、大まかな属性や方向性が分かる。
だが、当然問題もある。
まず、特殊系と言われるモノの判断が出来ない。
これは水鏡検査法で反応しないからだ。
次に見ての通り水の状態変化を見て判断する訳だから、判定する人間に依って判定が変わる。
だから3人が同時に判定し、2人以上が一致したモノを属性として評価する。
1人が判定したモノは、可能性有りと評価するんだ。
まあ細かい所もあるけど、まずは見石君の評価を見いてみようか」
と金崎教育官が言うと、若林教育官が
「見石君の属性評価を発表するよ。
強化、具現化、風、土の4種」
と発表した。
「強化は、
具現化は、魔力で物質化が出来る。
風と土は、分かるな」
と金森教育官が言うと
「はい」
と章が答えた。
俺が、水鏡の状態を見つめているのに気づいた金崎教育官が
「水鏡のどの状態で判定したか気になるか?」
と問われたので
「はい」
と答えると
「まず、水が盛り上がって溢れただろ。
あれが強化の特徴だ。
次に、その水が高い粘度を持っていた。
これは具現化の特徴だ。
放出だと水が吹き出す。
コップに沈んでいる紙を見ろ。
刃物で切ったみたいに真っ二つに切れているだろう。
これは風の特徴だ。
火だと焦げるか燃え上がる。
水だと紙が溶けるか、具現化系限定で水が増える。
土だと沈む。
基本的には、こんな所だ」
と説明された。
「じゃあ、次は誰が受ける?」
と若林教育官が言うと
「私が先で良いかな?」
と明日香が言うので
「はい。どうぞ」
と答える。
明日香の反応は章と良く似ていたが、コップの上の紙は真っ二つに切れた上で燃えた。
評価は、「強化、具現、火、風」だった。
俺の結果は、コップの水が吹き出し凍った。
まるで前衛彫刻みないな物が出来上がった。
「こいつは、難しいぞ」
と金森教育官が呟きながら評価をしている。
俺の評価は、「放出、氷、水、風」だった。
俺の評価が難しいと言った理由は、凍ってしまうと強化が入っているかを判別が難しいからだそうだ。
他の属性なら噴出の勢いで判断出来るそうだ。
まあ、なにはともあれ、俺達の属性も判明した。
「船が研修島に着くまで、まだ1時間位ある。
魔力弾の訓練を続けなさい」
と金森教育官に言われ、章が
「はい」
と元気良く返事をした。
俺達は、船が入港するまで訓練を続けた。
下船後、埠頭の広場で整列して点呼を受ける。
2年の方でちょっと騒がしいが気にしない。
点呼が終わると、優達5人が呼ばれ前に出る。
すると、スーツを着た女性が優達の元に近づき2・3言話した後、優達を連れて移動していった。
確かあの女性は、以前優の護衛をしていた氷室さんだったはず。
その氷室さんが優達を連れて行ったと言う事は、やはり別メニューでの訓練を行うのだろう。
移動する優達を見ていると、俺も名前を呼ばれ前に出る。
呼ばれたのは、俺、章、明日香と2年の霜月さんの4名だった。
若林教育官に連れられて移動を開始する。
随分と複雑な経路を進む。
途中から地下通路を通って出た先は、真新しい壁に囲まれた場所だった。
そこに真新しい建物が在った。
若林教育官が
「夏期集中訓練期間中は、貴方達にはココで生活して貰います」
と言うと、章が壁を見ながら
「なんか、刑務所みたいだな」
と言うと
「そんな事言わないの。
この壁は、新型防壁の試作実験として設置されているだけよ。
それに、最新設備を貸し切れた幸運を喜びなさいよ」
と言われた。
「最新設備を貸し切れた?」
と俺が疑問を口にすると
「そうよ。
今、研修島では設備の老朽化と演習島の消失で手狭になっているの。
だから、島の拡張と再開発が行われている最中なの。
それでココは、その拡張された場所よ。
そして、ここに設置された施設は好きに使って良い事になったのよ」
と言う。
「よく借りられましたね」
と霜月先輩が言うと
「ちょっと意外な所からコネが出来たからよ。
まあ、それより宿舎に入るわよ」
と言って、建物に向かって歩き出した。
建物の1階は、エントランスになっている。
「まるでホテルみたい」
と明日香が呟く。
「ああ、そうだな」
と答えながら、回りを見る。
「そりゃそうよ。
ここは、上級士官及び外来者用宿舎なんだから」
と若林教育官が教えてくれた。
入って直ぐに右側にカウンターが有り、直ぐ隣にエレベーターが設置されている。
カウンターの向かい側には机と椅子が置かれ、休憩できる様になっている。
入口奥にあるのは食堂の様だ。
奥の食堂の方から2人の女性がやって来る。
1人は白衣を着た女性で、もう1人はスーツを着ている、
スーツを着た人は、中学の時に優の護衛をやっていた人だ。
白衣の女性が、軽く右手を上げながら
「よう。
よく着たな。
長旅で疲れただろう。
そいつ等が期待の訓練生か」
と笑いながら近づいてきた。
「お久しぶりです。
三上1佐。
今回の優遇措置、ありがとうございます」
と若林教育官が直立して返答する。
「そう固くならなくて良い。
それと、階級呼びは好きでないんだ。
肩書で呼ぶなら主任の方で頼む」
と三上主任が若林教育官を見ながら言うと
「分かりました。
失礼ながら、主任呼びさせてもらいます」
と返し、三上主任は微苦笑で答えていた。
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