山田 零士 1年次 6月総合試験 反省会(5)

 アイツの事は、直ぐに意識から追い出し時間を確認すると丁度夕食の時間だ。

 風呂の準備をしてから章の部屋に行く。


 章の部屋をノックしてから入ると、章と相部屋の奴が部屋の掃除でてんやわんやしていた。

「何をしている?」

 と問うと

「掃除だ」

「いやー、掃除を始めたらスイッチが入ってしまってね。

 アレやコレも気になり始めて収拾がつかなくなってしまったよ」

 と返ってきた。


「そうか。

 でも、夕食の時間だぞ。

 一旦辞めた方が良くないか?」

 と言うと

「もうそんな時間か」

「本当だ。でも、いま辞めるとキリが悪い。

 キリが良い所で区切ろう」

「分かった」

 と言うので

「じゃあ、先に行くぞ」

 と告げると

「おう。そうしてくれ」

「時間を教えてくれて、ありがとうな」

 と返ってきた。

「じゃあ。程々にな」

 と言って、章達の部屋を後にした。


 風呂から出ると丁度明日香も上がった所だった。

 一緒に夕食を食べる。

 その時、章が居ない事を聞かれたので

「なんか相部屋の奴と一緒に掃除で盛り上がっていた。

 それでキリが悪いから、キリが良い所まで掃除をするって言ってたぞ」

 と返すと

「そうなんだ。

 私の所も掃除を始めたら、相部屋の子も掃除を始めたのよ。


 まあ、理由を聞かれたから『明日の成績発表後に部屋変えが行われるから、その準備』と答えたら納得してくれたわ」

 と言った。


「そうか。明日香も章も相部屋の奴がまともで羨ましいな」

 と言うと、明日香はちょっと困った顔になって

「まともに戻ってくれたから良かっただけよ」

 言った。

 その戻ったと言う所が気になったが、気にしなくて良いと言うからそこまでにした。


 その後

「そういう風に言うって事は、零士の相部屋の人って変な人?」

 と聞かれたので

「ああ、兄だかが戦術課の隊員だからと言って威張っている馬鹿だ。

 本人の実力なんてCクラスの中の下って所だな。

 それなのに、自分の方が偉くて強いって感じの傲慢野郎だ。


 俺が掃除していたら、自分の所もやっておけとかほざいたから、速攻で拒否してやったよ。

 そうしたらキレたから、『Cクラスで燻っている奴がAクラスの人間に指示するな』と言ってやったら、『直ぐにお前なんか追い抜いて、足元に平伏させてやる』と捨て台詞を残して部屋を出て行った」

 と言うと

「そうなんだ。大変だね」

 と返ってきたので

「それも明日までだ。だから気にしていない」

 と答えると

「それもそうか。明日までだもんね」

 と言って微笑んでいた。


 明日香と一緒に食堂を出ると、章と章の部屋の奴が風呂に入っていった。

 それを見届けてから俺と明日香は、それぞれの寮に戻って行った。


 部屋に戻り室内の様子を確認すると特に荒らされてた様子も無かった。


 あの馬鹿の事だから、癇癪かんしゃくを起こして嫌がらせの1つでもしたと思ったので、丁寧に確認すると物色した跡はあったが何も取られていないし壊されていない。


 用心して見える位置に置いてある物は、私服等の大した価値の無い物だけだ。

 貴重品は厳重に隠してある。

 だから見つけられなかったのだろう。


 しかし、改めて荷物の山を見て、思いの外に荷物が増えていた事に驚きしか無い。

 今後の事を考えると、コンテナボックスの様に物を仕舞う物が欲しくなるな。

 今度、ド◯キかホームセンターで探してみよう。

 そう思いながら、細かい所を掃除していった。

 掃除が終わると、自主訓練を行ってこの日を終えた。



 翌日も普段通り朝訓練を行ってから教室に行く。

 朝、章に会った時に掃除の状況を聞くと、夜9時過ぎまでやっていた様だ。

 まあその御蔭で、今日は直ぐに移動出来る位には片付いたそうだ。


 むしろ、たった3ヶ月でそこまで掃除が必要な必要な程散らかしたのか?

 そっちの方にびっくりした。


 ホームルームが終わると、訓練着に着替えてグランドに集合する。

 1年生の能力検査は11時頃だからどうするのかと思っていたら、優等生の発表が行われた。

 男女共にトップから発表された。

 トップは、俺と都竹さんだった。

 順当に発表が進み、事前に聞いていた通り明日香も章も呼ばれた。

 まあ、当然の事だが、あの馬鹿は優等生に入らなかった。


 その後、能力アビリティ訓練のクラス分けが行われた。

 都竹さん達4人と俺達3人がSクラスになった。

 同じSクラスと言っても、実質2グループが名目上纏められただけだからな。


 全クラス分けが終わった後、注意事項を言われてから各訓練クラス毎に分かれて能力検査の時間まで訓練を行う為に別れた。


 当然の事ながら、あの4人はグランドから離れていった。

 俺達は、厳島教育官の元に集合した後、グランドの端で身体強化を用いた走り込みを行った。

 グランドの反対側では、2年生が訓練を行っていたのだが、気が付いたら居なくなったので能力検査に行った様だ。


 霧咲教育官がやって来て走り込みを中止され、新しい訓練を行う事になった。

 新しい訓練は魔力弾の生成だ。

 霧咲教育官が説明しながらお手本を示す。

 俺は親父に習っていたので既に出来る。

 明日香も直ぐに出来た。

 問題は章だ。


 上手く魔力を纏める事が出来ず、手の中で霧散させている。

 霧咲教育官が、付きっきりで丁寧に指導を行っている。

 俺と明日香は、魔力弾を維持する訓練を行っている。

 俺は10分、明日香は7分維持出来た。

 章は、……頑張れ。

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