山田 零士 1年次夏期集中訓練 移動日(1)
今日は、夏期集中訓練の為の移動日だ。
日曜の早朝、朝6時に訓練校のグランドに、学年クラス別に集合。
点呼後、バスに乗車。
6時30分に出発。
予定では、バスの移動時間は1時間30分になっていたので、事前にスマホで移動所要時間を調べると50分位になっていた。
日曜日だし渋滞なんか無いよなと思っていたが、きっちり渋滞にハマった。
ほぼ予定時間通りに名古屋フェリー埠頭に着く。
次はフェリーに乗って7時間の船旅は、長すぎる。
まだ、フェリーに乗る前からウンザリしている。
クラス毎に点呼が取られ順次乗船を開始する。
お昼のお弁当を渡されて乗船する。
出入り口から少し離れたエントランスホールの端で明日香と章を待つ。
程なく、明日香と合流出来た。
更にしばらく待つと章とも合流出来た。
「移動するぞ」
と声を掛けると
「何処に行くんだ。やっぱり探検はしたいよな」
と章が言う。
「まずは、拠点となる場所探しだ。
乗降口から離れた展望室に向かおうと思う」
と俺が言うと移動を開始始める。
明日香と章が合流する前に、船内地図を確認したから問題ない。
「拠点探し?なぜだ?」
と章が聞くから
「ゆっくりと座れる場所は限られているぞ。
早めに場所を確保しないと、立ちっぱなしか床に座る事になるぞ」
と答えると
「おう。そうか、そうだな。
7時間も立ちっぱなしは嫌だな。
まずは拠点確保だな」
と納得した様だ。
「船内を探索したいなら、拠点確保後に交互に行けばよいだろう」
と言うと
「おう。それでいいぞ」
と元気よく返ってきた。
途中のレストランの前を通ったが閉鎖されていた。
自動販売機等が置いてあるエントランスホールの席もほとんど埋まっていた。
要所要所に教育官や2・3年生の優等生が立っていた。
訓練生が馬鹿をやらないかの監視の一環だ。
1年生の優等生は、2・3年生に対して何も出来ないので免除されている。
展望室に着くと、まだ半分位の席が空いていた。
早速、その一角に陣取った。
荷物を置き、俺と明日香が椅子に座ると
「ちょっと、船内を見て回って来ていいか?」
と章がソワソワしながら言ってきた。
「ああ、いいぞ。くれぐれも問題を起こすなよ」
忠告を与えると、
「おう。分かった。じゃあ、行ってくる」
と言うと、直ぐに展望室から飛び出して行った。
「あれは、しばらく帰ってこないな」
と呟くと、明日香がクスリと笑った。
特に会話を交わす事無く並んで座ったまま外を見る。
程なく船は出港した。
直ぐに港を出て外洋に出て進路を東に取った様だ。
しばらく窓から見える海を眺めていると、騒々しい連中が展望室に入ってきた。
ちらっと見ると、ガラの悪い6人組の男だ。
当然無視を決め込む。
少しすると
「お、いい女が居るじゃん」
「何処だ?」
「ほら、そこ」
「確かに、上玉だ」
と下卑た男共の声が聞こえた。
その声が近づいて来るから振り向くと、馬鹿共が下卑た笑みを浮かべながら近寄ってくる。
俺は、特定のパターンの魔力を素早く放射した。
直ぐに教育官がやってくるだろう。
ちらりと明日香を見て
「俺が相手する」
と言うと、明日香は頷いた。
俺は立上り、馬鹿共の前に立つ。
馬鹿共のリーダー格が、俺を見下して
「おう。分かってるじゃあねか。さっさと消えろよ」
と機嫌良く言う。
俺は
「ナンパはお断りなんで、さっさとき・え・ろ」
と不遜的な態度で言う。
ついでに、しっしと手を振る、
馬鹿共のリーダーは
「貴様、俺達が誰か分かってるのか?」
と怒鳴り叫ぶ。
訓練着の袖の色から、2年生だとは分かっている。
だから
「2年で学年最下位を争っている方々ですよね」
と言うと、周囲から吹き音や忍び笑いが聞こえてきた。
馬鹿共は怒りを表し、馬鹿リーダーは周囲に向かって
「うるせー。黙ってろ」
と騒ぎだたる。
すると、展望室に居た訓練生の1/3位が立ち上がった。
後ろに居る明日香から
「手助けは必要?」
と声を掛けられたので
「いや、いらない。
俺だけでも過剰戦力なのに、応援貰ったらただのイジメになっちまう」
と軽い口調で答えると、周囲から笑い声があふれる。
馬鹿共は
「うるせー。だまれー」
と奇声を上げている。
馬鹿リーダーが
「ふざけやがって。ぶっ殺してやる」
と叫ぶが、一歩も足が前に進まない。
それは、俺が最初に立ち塞がった時から威圧視で馬鹿共を牽制しているからだ。
まだ、習得してから3週間程度だが、コイツラ程度になら十分な牽制になっている。
最初に対峙してから3分位たっただろうか。
馬鹿共は相変わらず汚い言葉を発するだけで仕掛けて来ない。
しかし、状況は変わった。
展望室の入口に教育官が3名来た。
俺がチラッと見ると、1人の教育官が馬鹿共を指差し、親指で首を掻っ切る仕草後、親指を床に向けた。
俺が教育官に視線を向けたので、馬鹿共への威圧がなくなった。
「うおおおおおー」
と叫びながら、馬鹿の1人が殴りかかって来た。
俺は、馬鹿の拳を上体を左に捻って躱しつつ、右の拳を下から突き上げる様に
お互いに肩が打つかる位に接近した状態で停まった。
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