伊吹 明日香 1学期中間テスト後の日曜日(2)

 この特殊なカードがココにあるのは、華山さんの個人の持ち物だからだ。

 その検査の結果、零士君の発露可能性の高い魔眼は、魔力視、遠視、威圧眼の3つだった。


 魔力視は、対象の魔力量や魔力分布を見る事が出来る。

 遠視は、遠くを見る事が出来るだけでなく距離も分かるそうだ。

 威圧眼は、対象を威圧する能力だ。

 魔力で威圧する場合は、どうしても周囲に魔力が漏れる為、周囲に感知される可能性がある。

 一方、威圧眼は、視野内の対象のみを周囲に感知させずに威圧出来る事だそうだ。

 また、魔力の威圧よりも強い萎縮を与える事も可能だそうだ。


 その他に発露する可能性がある魔眼も見つかった。

 この魔眼は、麻痺眼、解析眼の2つだ。


 麻痺眼は、一定時間相手を視界に納める事で相手を麻痺させる事が出来るそうだ。

 ただし、使用者の攻魔力能力と相手の耐魔力能力の差によって、麻痺の度合いと掛かるまでの時間が変わるそうだ。

 だから、相手が強いと効果が無いし、実力差が大きいと心肺停止で即死が可能な程の威力を持つ危険な能力アビリティだそうだ。


 解析眼は、対象の事象を見る事が出来るそうだ。

 この魔眼で分かるのは、使用者と相対的にどの様な強さを判別できるそうで、物理・魔力の攻撃力・防御力、魔力量、移動速度を見分ける事が可能になるそうだが、情報量が多いため使いこなすのが難しいそうだ。

 だから過去の所有者は、強攻撃の時の判断のみに使っていたらしい。


 特に解析眼は、過去に未来視に進化した事があるそうだが、過去に1例有っただけだそうで解析眼の所有者も過去に3人しか居なかったそうだ。

 ただ、未来視と言っても最大で1秒先までの未来しか見れないし、大量の魔力を消費するらしい。

 それでも、戦場の様な極限状態ではかなり凄い切り札になるそうだ。


 魔眼の能力アビリティは、非常に貴重な能力アビリティで、一部例外を除いて「見→視→眼」の順に強くなるそうだ。

 ちなみに、見の技能スキルは有用なものが多いので、遠見や魔力見は習得する様にと言われた。


 私と章君は、まだ基礎の魔力纏身まりょくてんしんを習得していないので、魔力纏身まりょくてんしんを習得後に行う事になった。


 10時の休憩中に石割さんが遅れてやって来た。

 その事を章君が聞いくと

「ちっと野暮用で遅れた」

 と言っていたが、頭をちょくちょく触りながら

「痛てて…」

 と言っているのを聞いた華山さんが

「父娘喧嘩は、程々にしときなよ」

 と呆れた様子で言っていたので、良くある事なんだろう。


 零士君でも、今日の訓練で魔眼を使える様にはならなかった。

 でも、基礎訓練を憶えたから寮でも訓練出来ると言っていたから、近い将来には習得しそうだな。


 午後3時に訓練が終わった後、章君は一人で帰るからと言って早々に出て行った。

 夏服を買いたかったので、零士君と一緒にド◯キに行く。

 折角だから零士君に服選びを手伝って貰った。


 その最中、零士君はよく周囲を見渡している。

 その度に

「どうかしたの?」

 と聞くが

「大した事では無い」

 と返される。


 そう言えばド◯キに入ってから、周囲を窺う様な仕草をしていた。

 それで

「大した事で無かったら、なぜそんなに周囲を警戒するの?」

 と問う。

 すると、ため息をついてから周囲を指差し

「俺達がド◯キに入ってから、複数の人間が俺達を見ている。

 今居るのは、あそこに3人、そっちに2人、向こうに8人の3グループだな。

 今の所問題はなさそうなんだが、気持ち悪いから警戒している」

 と言う。


 指差しされた場所をよく見ると、確かにこちらの様子を伺う人達が居た。

 その中には見知った顔も有った。


「さて、どうしたものか」

 と言って、零士君は考え込んでしまったので

「そんなの放置よ。放置。

 どうせ遠くから眺める位しか出来ないだから。

 もし、なにかする気があるなら既に行動を起こしているでしょう」

 と私が言うと、小さく笑い

「そうだな。

 ちょっと考えすぎたか。

 一応、警戒する程度でよいか。


 明日香さんの服選びの方が重要だな」

 と言って、私の服選びに戻った。


 服とちょっとした化粧品を買い、軽く散策してから寮に戻る。

 その際、零士君が荷物を持ってくれた。

 そして零士君は、ちょっと照れくさそうにしていたが、反対の手で私の手を繋いで歩いた。

 なんか、妙に照れくさかったがこういうのも良いな。


 荷物を部屋に置いてからお風呂に入る。

 お風呂から出ると、零士君1人が待っていた。

 二人で食堂に行き、同じ席に着いて夕食を食べる。


 いつもなら、2人一緒なのにと思って聞いてみると

「章に確認すると、先に食べたと返事があった。

 まあ、あいつなりに気を回した結果だろう。

 あとは、今日の夜の勉強時間が無い事も影響しているかも知れない」

 と言う。

「夜の勉強時間?」

 と私が聞くと

「あー、変な事ではないぞ。

 学科の復習や宿題をやっている時間だ。

 章を放って置くと、勉強しないからな。

 だから、一緒に勉強をする時間を作っていたんだ。


 中学までの勉強の復習もようやく一段落したから、日曜日の勉強時間を辞める事にしたんだ。

 だから今頃マンガでも読んでいるんじゃないかな」

 と言った。


 付き合いは短いが、確かに章君らしいと思う。


 夕食後、零士君と別れ自室で自己鍛錬をしていると、同室の子が帰ってきた。

 相変わらず不機嫌そうな顔だ。


 しかし、この時間に戻ってくるのは珍しい。

 いつもは、消灯時間まで戻ってこないのに。

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