山田 零士 ゴールデンウィーク 訓練校1年目(10)
章を睨みながら
「どういう事だ?」
と問うと
「あ、やっぱり嫌だった?」
と伊吹さんが、慌てた様子で声を上げた。
「いや、急に名前呼びになったから、章が何を吹き込んだのか気になっただけだ」
と弁明する。
章は、相変わらずニヤニヤしている。
俺が睨み直すと
「なに、単純な事だ。
俺と零士だけが名前呼びで、明日香さんだけが名字呼びだと、仲間はずれっぽいだろ。
だから、名字ではなく、名前で呼んでくれって話しただけさ。
ついでに、零士も名前呼びしてくれと言っただけだ」
さも当然と言わんばかりのドヤ顔をしてやがる。
ちょっと腹が立ったが、今は章より伊吹さんの相手の方が重要だ。
伊吹さんの方を向き直り
「章が無理を言ったみたいだな。
俺と章の事は、好きに呼んでくれ」
と言うと
「全然嫌じゃない」
と頬を染めながら
「じゃあ、零士君って呼んで良いかな?」
と言われた。
これ、普通に断れないでやつだろうが
「構わない」
と答えると
「じゃあ、私の事も名前で呼んで」
と笑顔で言われた。
コレも断れないでやつだな。
「分かった。あ、あ、明日香さん」
とシドロモドロに言うと、明日香さんは満足した様だ。
章の奴、爆笑してやがる。
覚えていろよ。
「何がおかしい」
と章を睨み、ドスの利いた声で問いかけると
「だって、女の子の名前を呼ぶのに、キョドってるのがウケるっていうの。
舞ちゃんや
と笑いながら言いやがった。
「佳奈美ちゃんと舞ちゃんは、お前と優の妹だろうが。
小さい時からの付き合いの相手に緊張する訳ないだろうが。
異性の同級生相手に言うのとは違うぞ」
「へぇー、私相手だと緊張するんだ」
と明日香さんは、意地悪く言ってくる。
「そりゃあ、するさ。
なにせ、家族や幼馴染以外の異性で、名前呼びなんて初めてなんだから」
と言ってから、そっぽを向いた。
顔が赤くなっていると思う。
気を取り直して
「取り敢えず、30分まで休憩したら試験勉強するぞ」
と宣言すると
「なんでだよ。勉強なんて後で良いじゃん」
と章が言いって、ブーイングをする。
明日香さんの方を見ると、耳まで真っ赤にして話を聞いていなかった。
明日香さんの意識が戻ってきた所で
「これも厳島教育官からのアドバイスだ。
魔力訓練で、
だから、お昼まで試験勉強を行う。
午後も、3時まで魔力訓練を行ってから勉強だな」
と言うと
「魔力訓練の後、どの位の時間が有効なの?」
と明日香さんが問うので
「訓練後、1時間位内に始めれば良いらしい。
あと、勉強中に魔力を頭に流す様にすれば、継続時間が伸びるとも言っていたな」
と言ったら
「じゃあ、勉強を始めましょう」
と明日香さんは、かばんから勉強道具を取り出したので、俺も勉強道具を取り出す。
章も渋々と言った感じで、勉強道具を取り出し勉強を始めた。
お互いに分からない所を聞いたり教えたりしながら勉強を続けていると、グググッと音が聞こえた。
「わりぃ、腹が鳴っちまった」
と章が言うので、時間を見ると12時半近くになっていた。
「取り敢えず、飯にするか」
と俺が言うと
「さんせー」
と章が即反応した。
体を
その帰りに
「休憩室に冷蔵庫があれば、何度も移動する必要がないのにな」
と俺の後ろからボヤキ声が聞こえた。
「無いものは仕方ないだろう」
と俺が答えると
「そうだな」
と後ろから返答が返ってくる。
俺と明日香さんが並んで歩き、章が少し離れて後ろから着いてきている状態だ。
たぶん、今頃ニヤニヤしながら着いてきているのだろう。
俺と明日香さんは、そんな関係では無いのだがな。
と内心ため息をつく。
休憩室に戻り、それぞれ昼食の準備を始める。
章は、エー◯コックのスー◯ーカップ1.5倍の豚骨ラーメンにパックご飯だ。
俺は、日◯のど◯兵衛 特盛きつねうどんだ。
明日香さんは、◯美屋のご飯付きの五目中華丼だ。
俺と章は、目を見張った。
まさか、レンジで丼物が食べれるとは思ってもいなかった。
しかも常温だと。
「零士」
「なんだ」
「次は、俺達もこのシリーズを買おう」
「そうだな」
と言う事で、俺達の食のレパートリーが増えそうだ。
食後、ゆっくりしていると、章がトイレに行くと言って出て行った。
俺と明日香さんの二人きりになってしまった。
なんとなく気不味く、不自然な沈黙が支配する。
俺と明日香さんは、同じテーブル側に座っているので、間には1席分空いているだけで並んで座っている。
何か話しかけないと思うも、何も思い浮かばない。
食事や休憩中の時は、そこそこ雑談が出来ていたのに、二人きりになると何も話せないとは。
どの位時間が経ったか分からない。
不自然に喉が渇く。
内心、冷や汗をダラダラと流していると、制御室側の扉が開いた。
慌ててそちらを向くと厳島教育官が居て
「なんだ、お前ら二人だけか?」
と声を掛けた。
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