山田 零士 ゴールデンウィーク 訓練校1年目(9)
「十分信頼されているじゃない」
と伊吹さんが呆れていた。
「まあ、試されてていると言うのは、俺の感想だからあまり気にしなくていい。
取り敢えず、教育官公認でこの部屋が使えると言うことだ」
と言うと
「問題がないなら良いや」
と章が言う。
「まあ、その通りね。折角だから使わせて貰いましょう」
と伊吹さんも理解を示した。
部屋の広さは、畳12畳位かな。
部屋の中央に6人掛けのテーブルとパイプ椅子が設置されている。
小さい流し台も設置されており、水も問題なく出る。
電子レンジとポットも置いてある。
エアコンも設置されている。
あと、冷蔵庫が置いてあると完璧だったんだがな。
休憩室としては十分だ。
俺がちょっと物思いにふけっていると、章は
「零士、向こうの扉は何だ?」
と言って訓練室側と別にある扉に近づき、扉を開けようとするが開かない。
「あれ、開かないぞ」
と言いながらガチャガチャやっている。
「章、そっちの扉は鍵が掛かっているから開かないぞ」
「そうなのか」
と言って、扉をいじるのを辞めた。
章を扉見ながら
「向こうに何があるのか気になるなー」
と呟いているから
「扉の向こうは、制御室だそうだ」
と言うと、章と伊吹さんが俺を見た。
「俺も聞いただけだ。
制御室の向こう側に、魔力制御訓練棟の入口にあるカウンターの裏にある部屋に繋がっているそうだ。
色々と重要な機器が置いてある部屋だから入れないぞ」
と言うと
「そうか、ちょっと見てみたかった」
と章が未練がましく言う。
「だから此処に入るのは、隣の訓練室を使う必要がある。
これから訓練室を選ぶ時は、極力此処を選ぶからな。
あと、他言無用だ」
「了解」
「分かったわ」
と二人の返事を聞きながら、机に荷物を置く。
二人も俺に習って、荷物を机に置いた。
早速、訓練室に戻り訓練の準備を始める。
魔力モニターの設定を行う時に、ふと思い出した。
「伊吹さん。休み前に新しい設定を教えられたのだが、伊吹さんは教わったか?」
と声を掛けると
「いいえ、何も教わっていないよ」
と言うので
「ちょっとこっちに来てくれないか」
と伊吹さんを呼ぶ。
「新しい設定ってなに?」
と言いながら、俺の横に来た。
俺は、伊吹さんに新しい設定を教えながら、測定と表示設定を変更する。
すると、壁に設置されているモニターに、今まで表示されなかった情報が表示された。
表示された情報は、これまでと同じく魔力総量が表示されている。
新しく表示されているのは、魔力分布と放射魔力量だ。
魔力分布は、身体の部位毎の魔力の厚みを色の濃淡で表現し、最大値、最小値、平均値を表示している。
放射魔力量は、体外に放出している魔力量だ。
魔力分布と同様に体外に放出される魔力が、映像と数値で表示されている。
その表示内容と意味を教えると伊吹さんが
「こんな便利な表示方法を教えて貰っているなんて、ずるい」
と拗ねた声を出した。
「俺も、一昨日教えて貰ったばっかりだ。
自分で設定するのは、初めてだ」
と言うと
「それでも、教えて貰える事自体がずるい」
と更に拗ねた。
「まあ、これからも新しい事を教えて貰ったら、共有するよ」
と言うと、伊吹さんは俺の顔をジーと見つめる。
なんとなく、気恥ずくなり目線を逸らした。
「約束だからね」
と言うので
「ああ、分かった」
と答える。
伊吹さんが、離れたのでホッとした。
章が驚いた様な顔で俺を見ている。
「どうした」
と章に声を掛けると
「なんでもない」
と慌てた様子が見れたが、深呼吸を数回したら元に戻っていた。
「取り敢えず、俺と伊吹さんが
章は、最大出力維持を行ってくれ」
と言うと二人から了解を得た。
そこからは、各人がモニターを確認しながら自己鍛錬を行った。
章は、とにかく最大出力の維持に努め、伊吹さんは魔力を
俺もモニターを確認しながら、師匠に言われた魔力の均一化を気にしながら取り組む。
10時過ぎまで訓練を行ったので、休憩をする事になった。
休憩するので飲み物を買いに厚生棟まで行こうという話になった時
「じゃんけんで負けた奴が買いに行くってのはどうだい?」
と章が提案してきた。
「私もそれで良いよ」
と伊吹さんも賛同した。
厚生棟まで片道200m位だから、全員で行っても大した時間が掛からないんだがちょっと遠い、折角なので章の案にのる事にしたので
「分かった」
と返事をして、じゃんけんをする。
1発で俺の負けだった。
章と伊吹さんからお金と飲み物のリクエストを貰い、厚生棟に向かう。
伊吹さんは
「やっぱり、一緒に行こうか?」
と言ってくれたが
「大丈夫だ。ちょっと行って来る。休んでいてくれ」
と言い残して買出しに出た。
章と伊吹さんと自分の分を両手に持って、魔力制御訓練棟に戻る。
訓練室から、休憩室に入ると
「零士、ご苦労様」
「あ、零士君。おかえり」
と章は普段通りだったのだが、伊吹さんは少し頬を染め、ちょっと恥ずかしそうに俺の名前を呼んだ。
「ああ、ただいま」
とちょっと
出来るだけ平静を装いながら、近くにいる章に近づき
「ほら、お前のだ」
と言って、章にコーラを手渡し
「サンキュー」
と言って受け取った。
伊吹さんの横に移動して
「伊吹さんの分」
と言って、カ◯ピスウォーターを手渡す。
「ありがとう」
と言って受け取ってくれたのは良いが、うつむき加減で上目遣いをされると可愛いじゃあないか。
内心で悶えながら椅子に座る。
対面に座る章が、ニヤニヤしていやがる。
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