山田 零士 ゴールデンウィーク 訓練校1年目(2)
「あの4人って、能力訓練棟の使用許可を持つ4人組の事だよな」
と俺が聞くと
「その通りよ。
あの4人、戦術課の隊員達に認められていて、課外訓練を受けているみたいよ。
だから余計に嫉妬していると思うよ。
確かに、羨ましいし、私も受けたいと思うけど。
だからといって、妨害やイジメをしていいわけないわよ」
と言って憤っている。
章も
「現役の戦術課の隊員に訓練をつけてもらえるのはいいなー。
どんな訓練をやっているのかな」
とボヤいている。
まあ、こいつの場合、裏表無いから本気で思っているのだろう。
俺は少し考えてから
「なあ、伊吹さん。今日時間あるかい?」
と聞くと
「おお、ナンパ?」
と軽い感じで返ってきた。
「いや、真面目な話だ」
と返すと
「そっか。それは残念。
今日の予定は、連休中の食料の調達だけだから時間はあるよ」
と軽い感じの返事が返ってきたが、何のお誘いか興味津々の様子が出に取るようにわかる。
「ところで、朝飯は食べた?」
と聞くと
「実は、まだなんだ。
街に降りてから食べようと思っていたからね」
と言うので
「実は俺達も同じなんだ。
だから、一緒に行かないか?」
と言うと
「やっぱり、ナンパに聞こえる。
でも、『一緒に朝ご飯食べない?』というのは斬新かも」
と言ってケラケラ笑っている。
俺は、そんなにおかしな事言ったかと、首をひねりながら
「どうする?」
と聞くと
「面白そうだから、一緒に行くよ」
と回答を得た。
バスが駅前に着くまで、他愛もない雑談をして過ごした。
バスが駅に着くと、伊吹さんを伴って「カフェ月光」に向かう。
カフェ月光の前に着くと
「へぇー、こんな所に喫茶店があったのね。
しかも、年季が入っていてThe・昭和って感じ」
と少しはしゃいでいる。
俺と章に取っては、くたびれた店構えにしか思えないのだがな。
俺が扉を押し開けると、ドアベルがカランコロンと鳴る。
伊吹さんは、その様子になぜか感激している。
若干、首を傾げながら店に入ると
「よく来たなガキ共。今日は女連れかい」
とマスターが大声で笑いないながら迎い入れてくれた。
俺はマスターに
「スペシャルモーニング3つ」
と注文しながらマスターの正面のカウンター席に着く。
章が俺の左隣に座り、伊吹さんが右隣に座った。
伊吹さんが
「私、自分で選びたかったな」
と言うと、章が
「ここに来たら、1回はスペシャルモーニングを食べないとダメだぜ」
と返し、女将さんが
「はい、これがここのメニューよ」
と言って伊吹さんにメニューを渡した。
俺はため息をついてから伊吹さんに
「今回は俺が奢るから、食べてみてくれ」
と言うと
「俺は?俺は?」
と章が聞いてくるので
「野郎は知らん」
と答えると
「ヒデー」
と言って拗ねたふりをしている。
その様子を見て、伊吹さんは大笑いしている。
ひとしきり笑った後、メニューを眺めながら
「へぇー、こんな物もあるんだ」
「これ、美味しそう」
「今度、これ食べてみよう」
とか言っている。
そうこうしている内に
「ほら、スペシャルモーニングだ」
と言って、伊吹さんの前に大盛りの料理を置いた。
伊吹さんが、山盛りの料理を見つめている横で、俺達にも料理が来た。
当然、こちらも山盛りだ。
俺と章が「いただきます」と言って料理に手をつけると、伊吹さんは料理を指差しながら
「コレ多くない?」
と言う。
「スペシャルモーニングだからな」
「美味いぞ」
と俺と章が返すと
「そ、そうなんだ」
と言ってから、意を決した様に食べ始めた。
俺達は、食べ終わるまで会話無く山盛りの料理と格闘を続けた。
そして、伊吹さんも完食した。
俺は、食後のコーピーを飲んでいた。
章は、コーラーを飲み。
伊吹さんは、紅茶を飲んでいる。
食後の余韻を楽しんでいると
「この後はどうする?早速買い出しに行く?」
と伊吹さんが聞くので
「いや、これからが本番だ」
と俺が言うと
「なにそれ?」
と言うので
「まあ、直ぐに分かる」
と言って立ち上がり、お会計を済ませる為にレジに向かう。
伊吹さんは、自分の分は払うと言っていたが、今回は無理に奢った。
会計中の俺と章に常連客が
「おい、先に行ってるぞ」
と言い残して店の奥に消えた。
伊吹さんは、状況が飲み込めず
「あの人達となにかやるの?」
と聞いて来たので
「まあ、直ぐに分かる」
と言って会計を終わらせる。
章も会計が終わったので、伊吹さんも連れて店の奥にある階段から地下に降りる。
そこは、幅15m、奥行き20m、高さ3mのコンクリートが打ちっぱなしの地下室だった。
壁の四方には、アンテナみたいな物が立っており、それに繋がった制御装置が置いてあるだけの広い部屋だった。
そこに年配の男女3人が待っていた。
「よろしくお願いします」
と俺と章が言うと、伊吹さんは俺達と年配の方々を数度見渡した後
「ちょっと、この人達は誰?」
と言うと
「なんだ、何の説明せずに連れてきたのか?」
と年配の男性の1人が声を上げた。
「ええ、その方が面白いと思って」
と俺が答えると
「確かにその通りだな。
では、自己紹介をしよう。
俺は
すぐ近くにある石割商店の店主だ」
と言って、豪快に笑っている。
すぐ横の老婆が
「既に隠居じゃろ」
とツッコミを入れた。
「次は俺だな。
俺は、
ただの隠居だ」
と言って穏やかな笑みを浮かべている。
「私は、
ここの常連で、コイツラとつるんでいるばばあだ」
とニコニコしながら言った。
「えーと。はじめまして。
と伊吹さんが挨拶をすると、3人共優しそうな笑顔で応じていた。
伊吹さんは俺の方に顔を向け
「えーと、ここで何をするの?」
と尋ねるのだった。
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