平田 南 回顧(2)

 戦術課への移動試験は、機動戦略隊に合格した。

 試験も面倒なだけで何も難しい事もなかった。


 中部駐屯所に配属になり、最初に配属された班では退屈なだけだった。

 強い魔物を相手にする事もあるが、死にたがりで倒せない敵は壊したがりが倒していった。


 2年程過ぎたある日、目撃された魔物の群れの討伐任務が下された。

 私達の班を含む6班が現地入した。

 そして私達の班は、ランクC7のオークソルジャーを含むオークの群れ50体と遭遇した。

 その時は私達の班だけだったので戦闘を避け、応援を呼ぶと班長が判断して撤退中にオーク共に気づかれた。

 班長は私に応援を呼びに行けと命令したが、無視をしてオークの群れに飛び込んだ。

 死にたがりがオーク数体倒した所で壊したがりが目を覚まし、オーク共と戦闘を引き継いだ。

 班長が何か叫んでいたが、戦闘音に紛れて聞こえない。


 振り下ろされた棍棒を躱してオークの身体を切り裂き、その後ろに居るオークの喉元に剣を突き出し切り裂く。

 オークの返り血を浴びながら、次のオークに剣を振り抜き、袈裟斬りにする。

 後ろから、班長達がオークと戦っている音がするが、気にする事無く次のオークを

 ただひたすらにオーク共を倒す。

 残りの数が後5匹になった時、オーク共の増援が見えた。

 班長達が何か叫んでいるが、残り5匹のオークに向かって駆け出す。


 その5匹を倒している間に、オークの増援が襲ってきた。

 直ぐに5匹を倒し切り、増援部隊に矛先を切り替える。

 それを見た班長達が撤退を開始した。



 班長達が撤退してどの位時間がたったのだろう。

 オークの増援部隊を既に2つを撃破したので、3つの部隊を殲滅させたと思う。

 右手に持った魔鋼製のロングソードは、刃毀はこぼれと血油で切れ味が落ちた。

 左腕に装備したアームシールドは、ボロボロで機能を失いつつある。


 次の敵部隊が見えた。

 先頭を粗末な衣服を身に着け、棍棒を振りかざしたオークが2匹が先行し、後ろ3匹が並行に走ってくる。

 先頭を走ってきた2匹を切り捨て、並列に走って来た真ん中のオークと対峙しようとした時、直感に従ってアームシールドと剣を交差させ、右に飛ぶ。

 オークの体を打ち抜いて来た物体は、剣身は1/3を残して折れ、アームシールドは衝撃で砕け、僕を吹き飛ばした。


 体勢を立て直すと、飛び去った物体が戻ってくる。

 横に飛び、飛翔物体を躱す。

 飛翔物体は、目の前に居たオークを打ち抜く飛んで行く。

 その先に居た全身鎧のオーク・ソルジャーがキャッチした。

 飛翔盾フライング・ソーサー持ちのオークソルジャーだ。


 盾士のオークソルジャー後ろから、全身鎧を身に着けた別のオークソルジャーが3匹飛び出し、更に後ろに居るオークアーチャー5匹が山なりに矢を射る。


 矢を回避しつつ、先頭にオーク・ソルジャーの一撃を折れた剣で受け止める。

 左右のオークソルジャーが切り込んできたので、バックステップで躱すと左手に居るオークソルジャーが、視線を後ろに向けた。


 視線を切ったオークソルジャーとの距離を一気に詰め、左手でオークソルジャーの持つ剣の柄尻を握り、折れた剣で兜と鎧の隙間から剣を突き刺す。


 オークソルジャーの頭部に折れた剣が、脳まで突き刺さる感覚を確認しつつ、盾士のオークソルジャーから見えない様に左に回りつつ剣を奪う。


 直後、僕の真横を高速回転した盾が通り過ぎる。

 倒したオークソルジャーの左側から盾士のオークソルジャーに向かって走る。


 盾士のオークソルジャーが、左腕を右、左、手前に振った。

 投げた盾を操作したのだろう。

 後ろから、唸る様な音が近づいて来た。


 タイミングを合わせてしゃがみ、盾が通過した直後に全力疾走し、盾に追走する。

 盾士のオークソルジャーに明らかな動揺が見て取れる。


 盾士のオークソルジャーが、盾を受け止めた直後に腕を下から切り上げて切り飛ばし、返す剣で鎧兜ごと首を切り飛ばす。


 オーク共が呆けている間に落ちた飛翔盾フライング・ソーサーを拾い上げ、左手のアームシールドの代わりに装備する。

 すかざすオークアーチャーに向かって投げ、操作して周囲に居るオークを10匹以上殺した。

 流石に正気に戻ったオーク共が襲って来たが、剣と飛翔盾フライング・ソーサーで蹂躙した。


 その後もオーク共はワラワラと湧いてくる。

 剣がダメになれば、適当にオーク共の武器を奪い、飛翔盾フライング・ソーサーと併用して戦う。


 いや、戦っていない。

 ただ、機械的に殺しているだけだ。

 どれほど虐殺したのか、どの位時間が経ったのか分からない。


 目の前に巨大な全身鎧兜に巨大な剣を持ったオークが、剣を打ち込んできた。

 盾で受け流し切り返すが、鎧に阻まれ、ダメージを与える事が出来ない。


 オークは、振り下ろした剣を横薙ぎで振ってきた。

 それを盾で受けながら後ろに飛ぶ。


 対峙し直し、お互いに剣戟の応酬が続く。

 どれ程続いているのか分からない。

 すでに30合以上打ち合っているはず。


 5分?10分?

 ひょっとしたら1分と経っていないかもしれない。

 お互いの剣戟の間合いが離れた時、オークは両手で剣を持ち大きく振りかぶった。


 あの時と同じだ。

 が死に損なったあの時と。


 父親がゴルフクラブを振りかぶり、私に振り下ろす時と

 魔物がボロボロの剣を振りかぶり、大好きだった養護施設の職員を殺した時と


 そう、本懐を果たす時が来たのだ。

 オークの一撃を喰らい死す事。

 の一撃でオークを殺す事。


 オークの渾身の一撃が振り下ろされる。

 オークの心臓に向かって、剣の切っ先向け全力で突きを放つ。


 オークの一撃は、左肩から肺に届く程深く切り裂き、突きは心臓を貫き、オークの背中から剣先が突き出ている。


 お互いに崩れる様に倒れ込む。


 意識が薄れる中、人の声が聞こえた気がする。

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