神城 翔 親として(2)
夕食後、娘が部屋に引き籠もった後、妻と二人っきりになったので、優の検査の様子を聞く事にした。
「問題は無かったわよ。
担当の人は、一応私の知り合いよ。
研究者としては、一流の人だから悪い様にはしないはず」
と言う妻の言葉に不穏な単語が混ざっている気がするのだが…
「それと私が思うに優ちゃんの
妻の言葉に驚いた。
息子は、何処をどの様に見ても女の子になっていたからだ。
でも、俺は非能力者だから、
しかし、妻は能力者で、対魔庁の戦術課に配属されていた経験を持っているから、きっと俺より詳しく知っているはずだ。
だから
「どうして、そう思うんだい?」
と尋ねると、おとがいに人差し指を当て首を傾げながら
「そうね、何から話そうかしら。
まず、性転換の事例なんだけど、世界でも片手で数えられる位の事例が無いの。
しかも、性転換直後は、衰弱してベットから起きる事も
でもあの子は普通に動けて魔力を有していたわ。
むしろ、今までが異常な程、魔力を感じなかったわ。
だから、性転換では無いと思うの」
さも当然と言った感じだ。
「そうなのか?
俺は非能力者だから、能力者の
それじゃあ、性転換以外で性別が変わる
と更に問うと
「そうね、一番考えられるのは、
でも、擬態で周囲に溶け込む事ができるわね。
魔力を使用して質量・体積・性質も変える事が出来るけど、それにはかなりの量の魔力が必要だし、無機物への変態すると元に戻れなくなる事もあるから要注意な能力ね。
例え身体が女体化した状態でも生体情報から見ると男のままなのよ。
だから、子供を作る事は出来ないの。
それでね、どちらの
つまり、維持出来る魔力がなくなると元に戻ってしまうの。
だから、何も心配していないわ。
それでね、優ちゃんの場合、身体が小さくなって、体重も軽くなっていたから、
だから、魔力切れを起こせば、きっと元に戻れるはずよ。
でも、発露直後だと自分の意志で上手く戻れない事も多々あるそうよ。
だから、専門機関で適切な
優ちゃんが検査を受けている場所なら、適切な処置をしてくれるから大丈夫。
それと、
「そうか、君がそう言うのならそうなんだろうな。
どうやら、かなり大変な
今から女の子として生きるのは、物凄く大変だろうからな」
この時は、本当に心底から安堵のため息が漏れた。
「あら、私は娘が2人になっても問題ないわよ。
あ、でも、優ちゃんの鑑定結果が出るまでは、正確な事が分からないわよ」
妻は、あっけらかんと笑いながら言い放った。
「そ、そうか。この事は、舞に教えたのか?」
「ええ、教えたわよ。
『元に戻れるなら、なんにも心配しなくて良いんだね』
と言っていたわね」
俺は、何とも言えない気持ちになった。
「ところで、舞が予習はバッチリとか言っていたんだが、何か知っているかい?」
俺は、娘が言った一言が何か聞いてみた。
「ああ、アレのことね」
妻は笑いながら答えた。
「アレとは?」
俺の疑問に
「ラノベや漫画の事よ。
あの子、性転換物の物語も結構読んでいるからね」
妻はにこやかに答えてくれた。
「ラノベ?」
「ライトノベル。娯楽小説の事よ」
「そうか、そんな物もあるんだ」
「ええ、性転換した人物の物語も1ジャンルとして確立しているぐらいよ」
「随分と詳しいんだな」
「ええ、始めはこっそりと読ませてもらったけど、結構面白くてね。
ついつい読み込んじゃったのよ」
「そ、そうか」
「だからかな?
優ちゃんが女性化したものだから、物語が現実になったてはしゃいでいる側面もあるみたいよ。
それにあの子、お兄ちゃん大好きっ子だしね
あと、『男に戻る前に戻ってきて欲しい』と言ってわね」
と言って笑っている。
俺が、呆れて空いた口が塞がらないでいると
「ほら、あの子が男に戻ったら、家族の前で女体化なんて行わないだろうから、私達もあまり見る機会はないと思うよ。
だから、上手く
チャンスがあるなら、私もお世話焼きたいかな」
と言って微笑んでいる。
俺は、これから優とどの様に接して行けば良いか悩んでいるのに、妻と娘はものすごく
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