山田 零士 入学後の初週末(4)

 お金を払い、戦闘靴ブーツ戦闘背嚢バックパックを受け取る。


「お前達、直ぐに履いて行くのだろう?」

 店主の言葉に頷く。


「なら、靴を脱いでその装置に乗れ」

 店主の指差す先によく分からない体重計の様な板がパソコンに繋がっている。


「足圧測定器だ。

 これで、足圧を調べる。

 さあ、乗った乗った」


 店長に急かされたので、俺、章の順で測定をした。

 測定データを見た店長は、カウンターの下から2種類の中敷きを出して

「こいつは、オマケだ。

 そいつを、戦闘靴ブーツに入れてから履け」


 俺と章は、戦闘靴ブーツに履き替える為、お店の隅に置いてある椅子に移動する。

 入れ違いに先輩が店主の元に行き

「すみません。

 訓練校が買える訓練靴ブーツとの違いを教えてください」

 と尋ねると

「おう、良いぜ。

 まず、訓練校で買える訓練靴ブーツは、大量生産の既製品だ。

 一方、この戦闘靴ブーツは、専用工場で作っている少数生産品だ。


 まず、靴底、訓練靴ブーツのアウトソールはポリウレタン樹脂が使われている。

 こいつは、優れた耐摩耗性や弾力性、耐油性があり、ゴムと比較して軽いなどの特徴があるが、加水分解という劣化を起こす事からあんまり長く保たない。


 一方、こっちの戦闘靴ブーツのアウトソールには、ケブラー繊維とカーボン繊維の網目状メッシュを合成ゴムの一種のSBR(スチレンブタジエンゴム)で挟み込んだ構造をしている。

 SBRは、自動車用のタイヤの材料にも使われている素材で、耐摩耗性、耐老化性に優れている。

 ケブラー繊維とカーボン繊維の網目状メッシュを間に埋め込む事で、耐刃性、耐刺突性を高めている。


 ミッドソールは、訓練靴ブーツがポリウレタン樹脂を使っているが、戦闘靴ブーツは、EVA(エチレン酢酸ビニル)を使って耐衝撃性を高めている。


 インナーソールは、どちらもポリウレタン樹脂を使用しているので差が無い。


 靴の裏材、ライニングにも違いがある。

 訓練靴ブーツは、ナイロンを網目状メッシュにした物が使われている。

 戦闘靴ブーツは、ナイロンと中空糸を網目状メッシュにした物が使われいる。

 中空糸を使った方が、より蒸れにくいのが特徴だな。


 靴の外材は、両方とも合成革だが、戦闘靴ブーツにはケブラー繊維とカーボン繊維の網目状メッシュが裏打ちされている。


 あと、つま先保護も着いている。


 この様に目に見えない部分が全くの違う。

 当然、性能も値段も高くなる。


 戦闘背嚢バックパックも、材質や細かな作りが違うからこの値段だ。


 どうだ、少しはわかったか?」


 店主の説明を聞きながら、実際に出された戦闘靴ブーツを手に持って確認していた先輩は

「とても手の込んだ良い代物だと分かりました。

 検討させてもらいます」

 そう言って、戦闘靴ブーツをカウンターの上に戻した。


「そうか、性能からすれば安い物だが、いい値段するから躊躇ちゅうちょするのも当然だ。

 もし、気が変わったら買いにきな」

 豪快な笑顔をだが、ちょっと怖い感じがする。


 俺と章が履き替えると、ビニール袋を渡された。

「今まで履いていた靴は、それに入れて持っていけ」


 俺と章は、礼を言って受け取り、戦闘背嚢バックパックに仕舞った。


 石割商店を出た後、公園、史跡を巡りながら幹線道路沿いに出る。

 公園や史跡を巡るのは先輩の趣味だった。

 それに、幹線道路に向かう道沿いにあるので、大した遠回りにもならないから問題ない。

 もう少し離れた場所にも史跡があるらしいけど、ショッピングモールに向かう方向と反対方向になるので行かないそうだ。


 あと、先輩の話しだと、幹線道路沿いのお店を回るのは早朝に出発する2組だけらしい。

 9時と10時代のバスは、多くの生徒が乗って来るが、駅からショッピングモールへ直行するとの話しだ。


 幹線道路沿いには、大きなお店も多数あるため一時解散となった。

 集合時間は、お昼を済ませた13時になった。

 この後、ショッピングモールに移動するのに、なぜお昼を食べた後に集合となるのかと言うと、先輩曰く

「ショッピングモールのフードコードは終日混む為、食事時しょくじどきは30分以上待たされるし、お昼に時間がかかり過ぎるとお店を見て回る時間が失くなるそうだ。

 だから、幹線道路沿いに出て食べた方が、早く確実に食べれるそうだ」


 俺と章は、道路沿いに「驚安の殿堂」が在ったので、そこに寄る事した。

 ここで、電気ケトル、カップ麺、お菓子、マグカップ、箸、お茶等を購入した。

 カップ麺は、地元では見たことも無い物が多数在った、しかもどう見ても期間限定だったので、予定よりも多く購入してしまった。


 買い物の後、近くのファーストフード店でお昼を食べ、時間を調整してから集合場所に向かう。


 集合場所には、時間通りに全員が揃った。

 ショッピングモールに移動して、帰りの集合時間の16時まで店舗内を散策する。

 このショッピングモールには、映画館やゲームセンター等もある大きなショッピングモールだった。

 確かに、見て回るだけでも結構な時間が掛かるのだが、それ以上に思った以上に混んでいた。

 先輩が言った通り、フードコード等の飲食店は盛況だし、休憩可能な場所も人で溢れている。

 そんな人混みを歩いていると聞こえてくる内容をまとめると、「ショッピングモールが混んでいる事への不満」と、「隣の市に在ったショッピングモールが閉鎖した事への不満」だった。


 比較的人が少ない所で、スマホを取り出して調べてみると、隣の市にあったショッピングモールは、2ヶ月前に魔物の出現によって半壊しており、未だ復旧出来ていない状況だった。


 だから、余計に人が集まっているのかも知れない。

 まあ、俺達の買い物は、一通り終わっているので問題は無い。


 本屋に寄って、以前から読んでいる小説の続編が出いたので購入したりしながら、集合時間まで適当にお店を回って時間を過ごす。


 集合時間少し前にトイレを済ませ、500mlの水のペットボトルを2本買い、戦闘背嚢バックパックを背負った状態からでも取れる左右のサイドポケットに、それぞれ1本ずつ収納してから集合場所に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る