山田 零士 入学後の初週末(3)
駅に到着後、俺の案内で喫茶店に向かう。
駅から徒歩10分程の少し入り組んだ道沿いにそのお店は在った。
年季の入った看板には「カフェ 月光」と店名が記されている。
店内は、落ち着いた雰囲気のお店で、老夫婦が運営していた。
親父が訓練生時代から通っていたお店だけある。
地元の常連達に注目されながら、各人が席に着き、メニューとにらめっこしている。
俺と章は、親父から「この店に来たら一度は必ず食べろ」と言われた「スペシャル ・モーニング」を注文した。
注文を受けに来た女将さんが、驚いた顔をした。
「あんた、ここは初めてでしょ。
スペシャル モーニングは、誰から教わった?」
「親父からです。ここに来たら、一度は必ず食べろと言われました」
そう返すと、女将さんは俺の顔をジーと見つめ
「あんた、山田
「巌は、俺の親父です」
「巌の息子か。よし待ってろ、今作ってやる」
店主が上機嫌で、調理を始めた。
「あの、親父とはどういう関係ですか?」
「なんだ、聞いてないのか?
巌は、俺が現役時代の部下で、俺が最後に育てた隊員だ」
「そうだったのですか。
それにしても、お店はそれなりに歴史があるように思えますが?」
「そりゃあ、この店もいい加減ボロだからな」
そう言うと、豪快に笑い出した。
「この店は、開店してから50年になるが、殆改装していないからな。
ちなみに、俺が5代目の店長になって10年位だ」
「随分と老舗なんだ」
「その様子だと、この店の事を何も聞いてないな」
「はい。聞いていません。
街に出る機会があったら、一度は寄れとしか言われてません」
「そうか。
ここは、対魔庁を退役した者で、飲食店の経営に興味のある奴が老後の楽しみとして運営している店だ。
今の時間は、俺達夫婦しか居ないが、他の時間なら他の連中も居る。
それに、ここの常連にも退役隊員が多数いる。
だから、たまに顔を出せ。
必要ならお前達にも助言してやる
ほら、出来たぞ」
出来た料理が運ばれてきた。
料理は、小倉トースト・ホットサンド・サラダ・オムレツ・ソーセージ・コーヒーと大盛りだった。
俺と章は、スペシャル・モーニングに戦いを挑むのだった。
流石に多かったが、時間を掛けて食べ切れた。
他の面々も、各々頼んだ物を食べ終えていた。
「おう、お前達はこれからどうするんだ?」
店主の言葉に先輩が
「この後、この周辺の公園と史跡を巡っりながら、幹線道路沿いのお店を見てからショッピングモールに行こうと思っています。
あ、その前に、そこの二人がこの近くにお店に行きたいと言ってましたので、そのお店に行ってからです」
と答えた。
「どこの店に行くんだ?」
俺は、メモを確認して
「えーと、
と答えると、お店の客の一人が立ち上がり、俺達の席に来た。
身長は190cm位のガタイの良い初老位の男性が
「俺の店に何のようだ?」
と言うので
「
「二人共、同じか?」
「「はい」」
「なら、
「26.5です」
「27です」
俺と章が、それぞれのサイズを答えた。
「分かった。準備しよう
俺は、先に店に戻る。
お前達は、もう少しゆっくりしてから来い」
そう言って、会計をしてから店を出て行った。
それから、20分程休憩してからお店を出る。
スペシャル・モーニング、アレだけの量で料金は1,200円だった。
店内に入ると、小さい商店の割に商品が豊富で、品質も良い物が置かれていた。
奥のカウンターに店主が居た。
俺達に気付いた店主が
「来たな。物は準備できているぞ」
と言って、カウンターの上に
「え、貴方達、
購買に売っているのに、わざわざ此処まで買いに来たの?」
と疑問を呈した。
他の1年生も疑問に思っている様だ。
実際、入学時の購入品に
俺がその事に答える前に、店主の石割さんが笑いながら答えた。
「まあ、当然の疑問だな。
普通は、訓練校指定の物を買うしな。
まあ、コレの見てくれは訓練校指定の物と大差無いが、全く別物よ。
お前達が買ったのは、見てくれだけの安物。
1年保てば上出来、訓練校卒業まで保てば
だが、ここに用意した物は、戦術課に収めている物だ。
高耐久で体への負担も軽減する一品だ。
当然、それなりに値は張るが、長く使える代物よ」
「え、戦術課で使用している物が、買えるのですか?」
「その通りだ。
うちで買えるのは、
当然の事だが、品質と耐久性が全く違う代物だから、それだけ値が張るがそれなりに長く使えるから買う価値はあるぞ。
さて、坊主共。
どうする?」
後ろからは、「タカ」、「高い」と値段に驚いている声が聞こえるが、俺と章は迷うこと無く「買います」と答える。
後ろでは、俺達が即答した事に驚きの声が上がっている。
まあ、購買での価格は、
それに、入庁すれば
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