山田 零士 入学後の初週末(2)
翌朝、普段と同じ時間に起き、走って帰ってくる事を考え、走りやすい格好に着替える。
荷物は、スマホと財布だけの必要最低限だ。
買い物を入れるリュックは、街で買うから非常に身軽だ。
朝7時に、集合場所である校門に章と共に向かうと、引率担当の女性先輩と数名の女性訓練生が待っていた。
男性訓練生は、俺達が最初だった。
それから10分後、集合時間になった。
先輩が点呼を行った結果、女性訓練生は全員揃ったが、男子訓練生は3名が着ていなかった。
更に5分待ったが現れないので、バス停に移動開始した。
バス停でバスの到着を待っていると、派手で軽薄そうな、いかにもチャラ男っぽい格好をした3人組が、訓練校の方からやって来た。
男1「おー、居た居た」
男2「俺達を置いていくなんて酷いっす」
男3「お、可愛い子発見」
先輩「貴方達、遅刻ですよ。
遅刻したら置いていくと、通告していたでしょう」
男1「そんな堅い事言わな言ってないで、先輩も街に出たら一緒に遊びにいきましょう」
男2「そうすっよ。俺達と一緒にいい事しましょうよ」
男3「ほら、君達も一緒に遊ぼうよ」
3人共、ニタニタして気色が悪い。
あからさまに、女性陣が嫌がっているのにお構いなしに言い寄っている。
横目で見ると、先輩がスマホを操作している。
恐らく、非常通報システムを操作しているのだろう。
だから俺は、先輩と3人組の間に割って入って視線を塞ぐ。
「おい、お前らいい加減にしろ。
お前らみたいに腐った連中は、大人しく寮のベットの上で寝言でも言っていろ」
と怒声を上げた。
男1「お、正義の味方のつもりか」
男2「お前はお呼びでないっす。何処かに行くっす」
男3「お前は関係ないだろうが、邪魔をするな」
「関係ならあるな。
お前らの様なゴミクズを黙認したら、俺まで同格になってしまう。
だから、排除させてもらうぞ」
俺に注目させる為に、
3人組は、顔を紅潮させ
男1「人が下手にしてたら、調子に乗りやがって」
男2「カッコつけた所で、3対1っす。勝ち目なんて無いっす」
男3「ぶっ殺してやる」
章が俺の右横に立ち、不敵な笑みを称え
「俺も加勢するぜ」
と
それに呼応する様に、女性陣の中から3人が俺の左横に立ち、その中の一人が
「私達も加勢します」
と宣言する。
他の参加者も黙って俺の後ろに並んだ。
それを見た3人組は、多少怯んだ様だが睨み返してきた。
睨み合いが続く中
先輩「はい、そこまで。
君達3人の外出許可申請は、今取り消したから10分以内に訓練校に戻りなさい」
男1「ちょ、横暴だ」
男2「そうっす。何の権限が有って言っているんすか」
男3「ふざけた事言うんじゃない」
先輩は、慌てた様子も無く淡々と告げる。
「訓練校の生徒は、相互に監視しているのを知らないの。
貴方達の様に馬鹿をやる訓練生は、必ず毎年出るのよ。
だから、通報システムを通じて証拠を提示すれば、合法的に貴方達に制裁を課す事も可能なの。
貴方達を通報した結果、即時帰還命令が出たわ。
この命令に従わない場合、強制的送還しろって指示も出ている。
この人数相手に暴れるつもり?
そうなったら、確実に強制収容所行きになるわよ」
男1「チ、ふざけやがって。行くぞ」
そう言うと、悪態を突きながら訓練校に向かって歩きだした。
残り二人も悪態と捨て台詞を吐いて戻っていった。
先輩が俺の前に来て
「貴方が視線を遮ってくれたお陰で、通報システムが使えたわ。
ありがとう」
「いえ、大したことはしていません。
俺もあいつらにムカついていたので、時間を稼いだ位です。
それに、此処に居る全員で遮ったのであって、俺一人の功績では無い」
「そうね。皆もありがとう」
先輩の一言で、それまでピリピリしたムードが弛緩した。
こうして、馬鹿共を排除して落ち着きを取り戻した頃に、バスが到着した。
バスで駅街に移動中に先輩から今日の行動予定として提示されたのは
「まず、朝食を食べていない人が多いから、近くにあるコンビニで弁当を買って公園で食べよう」
と言うものだった。
なので
「駅の近くに喫茶店があるのでそこに行きませんか」
と提案すると、先輩が驚いて
「近くに喫茶店が在ったの?」
聞き返してきた。
「ええ、親父から教えて貰ったお店が近くにあるみたいです。
一応、ネットでも調べたら、やっているみたいなので行ってみたいのですが?」
「飲食店が在ったなんて知らなかった。
じゃあ、そこに行きましょう」
という事で、駅に到着したら親父に紹介された喫茶店に行く事が決定した。
その後の予定は、近場の公園や史跡を巡ってから幹線道路沿いのお店を見てからショッピングモールに移動すると言うので
「朝食後に近くのお店に寄りたい」
と言うと許可を貰えた。
他の人にも「行きたい場所があるか」聞いていたが、誰も居なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます