都竹 都 能力訓練(1週間目)

 訓練校の能力訓練が始まって1週間が過ぎ、神城さんの訓練を受けて6日たった。

 この日の訓練時間も、私達4人と眼光が鋭い男子訓練生と背の高い色黒の女性訓練生の6人が一緒のグループだった。

 そういえば、何となくお互いに自己紹介もしていないので名前を知らない。


 一緒になった初日は、魔力量が私達より多く、最大出力状態の維持時間も私達よりも圧倒的に長かった。

 今は、魔力量では及ばないが、最大出力の魔力纏身まりょくてんしんの維持時間は私達の方が遥かに長くなった。

 彼らの3倍近い時間を維持できる様になった。

 これも神城さんの訓練のおかげだ。


 私達のグループ以外は、多くの人がまだ最初のグループに居る。

 一段上のグループは、30名位に増えている。

 ここに宮園さんや飯田君が見て取れる。


 その一段上のグループは20名位だ。

 こちらも増えたが見知った顔は無かった。


 訓練開始から15分位過ぎた頃に、教育官が別の男子訓練生を連れて来た。

 教育官は、彼にも

「ここで魔力を最大出で可能な限り維持する様に」

 と言い残して戻っていったが、彼は訓練もせずに私達に一方的に話しかける。


 私達は無視続けるが、諦める様子も無く、ついに私の肩を掴み怒鳴りつけて来たので、思いっきり男の頬にビンタを打ち、大声で「教育官 来て下さい」と叫んだ。

 ビンタを打たれた男子訓練生は、少し呆けた後「このアマ何をしやがる」と怒りを露わにする。


「訓練もせず、一方的に話し掛けて来たばかりか人の体を触ったでしょうが」

 と大声で反論すれば


「ただのコミニュケーションだろ。

 それを無視したのは、お前達だろうが。

 お前達の方が悪い」

 罵声混じりでおかしな理論を展開している。


「俺は、『ここで魔力を最大出で可能な限り維持する様に』と言ったはずだ。

 コミニュケーションを取れとは一言も言ってない」

 その声で、男子訓練生は後ろを振り返り驚いている。


 私は、大声を上げた直後にこちらに駆け寄ってくる教育官に気付いていたが、目の前の男子訓練生は気付いていなかった様だ。


「それに、人の訓練の邪魔するとは、訓練生としての心構えが出来ていない様だ。

 訓練初日に言ったはずだ。

『訓練時間は、一切の私語と他者の訓練の妨害を禁ずる』と言ったはずだ」


「挨拶は相互理解の為のコミニュケーションであり、私語では有りません」

 おお、開き直った。


「そもそも、訓練時間に行う事ではない。

 それにお前の持論などどうでもいい。

 他者の訓練の妨害をした事実は変わらない。


 お前にはペナルティを課す。

 ランニングコース100周終わるまで能力訓練に参加を禁ずる。

 5周毎の時間が20分を超えた場合、その5周はノーカウントとする。

 30分を超えた場合は、1分毎に1周追加だ。

 周回カウントは、機械計測だからズルは出来ないぞ。

 欠席の場合、100周追加だ。


 残周1,000を超えたら、強制収容所行きだ。


 お前達6人は、次の段階に進んでもらう。

 俺が戻ってくるまで、各自訓練に励め」


 そう言うと、色々と理不尽な自己主張ばっかりして、喚き散らしている男子訓練生にアイアンクローを噛まして、引き摺っていった。


 10分程で戻ってきた。

 私達を連れて移動中に、校舎前で学生証を持ってくる様に言われ、大慌てで更衣室に取りに戻った。

 教育官の元に戻り全員が揃うと再び移動を再開した。

 移動した先は、魔力制御訓練棟だった。


 教育官は、入り口近くにあるカウンターで各人の学生証を預かると、端末を操作し始めた。

 学生証を各人に返して、電光掲示板側にある端末に教育官のIDをかざして、小ホールと書かれた画面をタップすると、使用中に変わった。

「この様に、訓練に使う部屋を選ぶ。

 今日は、説明の為に俺が部屋を選択したが、今後はお前達自身で部屋を選択してもらう。

 お前達も学生証でID認証を行え。

 終わったら設備の操作説明を行うから、小ホールに移動するぞ」

 順番に学生証でID認証を行ってから小ホールに移動し、教育官に設備の操作を一通り習った。

 神城さんが使う訓練室の設備と、機能・操作方法に変わりがなかった。


「魔力制御訓練棟での訓練の許可は、通常6月以降でなければ出さない。

 しかし、お前達は新入生の中でも特に優秀で真面目だ。

 よって特例で許可を出す。

 ここの使用時間は、朝7時から夜6時30分までだ。

 土日や連休中も使えるから、自主訓練時にも使用して良い。


 来週月曜日の訓練時間からここに直行して最大魔力量の増加と、維持時間の増加を目指す様に。

 その際に、必ず学生証の認証を通す事を忘れるなよ。

 通し忘れたら、サボったものとするからな。


 何か質問はあるか?」


「はい」

 眼光が鋭い男子訓練生が手を上げた


「よし、言ってみろ」


「時間外の自主訓練の際に、普段一緒に訓練している者を連れて来ても宜しいでしょうか?」


「少人数なら良いだろう。

 ただし、責任者はお前になるぞ」


「分かりました。問題有りません」


「他には無いか?」


 誰も反応しない。


「よし、では訓練時間終了まで各自訓練にはげむように。

 そうそう、お前達は長い付き合いになるかもしれん。

 自己紹介の時間位目をつぶってやる。

 何かあったら、非常呼び出しボタンを押せ」

 そう言うと、小ホールから出ていった。


 折角の教育官からの好意なので、お互いに自己紹介をした。

 眼光が鋭い男子訓練生は、C組の山田 零士君。

 背の高い色黒の女性訓練生は、B組の伊吹 明日香さん。


 お互いにクラスと氏名だけの自己紹介だ。

 その後は、訓練終了時間まで全員小ホールで訓練を行った。

 お互いに、部屋を変える時間が勿体なかったからだと思う。


 訓練後、ホームルームで処罰を受けた訓練生のクラスと名前と罪状が公表された。

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