思金東海支局 開発記 【守護者専用破壊小銃】

 破壊砲ブラスターキャノン、それは異能を科学的見地で解釈・再構築した魔導学と工学の融合、魔導工学によって生み出された兵器である。

 現在、人類が携行できる兵器の中で最大級の破壊兵器でもある。

 この兵器のお陰で滅亡を免れた地域も存在する。


 そして、この破壊砲ブラスターキャノンの開発は、世界各国で行われていたが開発に成功したのは日本の研究機関思金おもいかね東海支局だけだった。

 実際、高出力魔力砲の機関部を作成できるのは、思金おもいかね東海支局の工廠こうしょうだけだ。

 他国でも魔力砲の開発には成功しているが、我々と比べ物にならない程の低出力で非効率な物しか出来ていない。

 その為、破壊砲ブラスターキャノンを導入する国は後を絶たない。


 そんな我々に、この国の守護者専用破壊砲ブラスターキャノン作成依頼という栄光が舞い降りた。

 このプロジェクトリーターとして、この俺、深山ふかやま 総司そうじが選ばれた。

 選ばれた理由は、水嶋室長が忙しすぎて指揮を取れない事からリーダーを変更する必要になった為、主要な破壊砲ブラスターキャノンの機関部の設計を行ってきた自分に白羽の矢が立った。


 正直、リーダーなんてガラでは無いのだが、このプロジェクトの予算が豊富な上、守護者が協力的なので新技術が色々と試せるチャンスなのだ。


 時間的都合で、既存の破壊砲ブラスターキャノンを再設計する事になったが、事前検証の際に色々と検証した結果、魔力共鳴増幅器を使用する事になった。


 この増幅器の設計開発は俺が行った物で、従来とは全く異なった理論で作成した物だ。

 従来の圧縮型に比べて低増幅だが、増幅速度が早く小さいのが特徴だ。

 この増幅器を使用した為、従来の補機類を全て外す事になり、大幅に機構が簡略されてしまった。

 まあ最も、この増幅器の開発目的が、破壊砲ブラスターキャノンの機構の簡略化を目指して開発した物だから当然の結果だったが、別の問題が発生した。

 連射機能の実装だ。


 これまでの破壊砲ブラスターキャノンは、魔力量の関係で単発しか撃てないので連射を考える必要がなかった。

 しかし、守護者が使う場合、膨大な魔力が供給出来てしまう。

 まだ、原理はまだ不明だが、トリガーを引いた状態を維持すると破壊光線の塊である擲弾グレネードを生成してしまう。

 すなわち、意図的にエネルギーの供給を止めて破壊光線を作る必要がある訳だが、補機類が無いため、中間にシャッター機能を付けることが出来ない。

 供給元から切断する必要があるのだが、此処でも問題があった。

 守護者の魔力送量が非常に多いのだ。

 魔力回路によるシャッター機構では、魔力を止められなかった。

 シャッター式なら、安定して秒間15回は出来たのになー。


 なので、物理的に開閉する開閉器を使う必要があるのだが、守護者の魔力送量に耐えれる接点を使うと大型化してしまう。

 銃に仕込む為に、小型の開閉器を使わざる得ないので、接点の強化と開閉器を5個並列で使う事で容量を確保したが、連射速度が犠牲になった。


 ここで大きな問題点は、5個の開閉器の同期を取る事だった。

 どれか1つでも先に回路が閉じるもしくは閉回路が残ると、そこに大魔力が流れ込んで焼き付いてしまうので、5個が同時に開閉を実現しなければならなかった。


 開閉器単体なら、秒間10回は安定して開閉出来るが、開閉器を5個同期を取りならが開閉を行うと秒間3回が限界だった。

 これでもかなり頑張ったんだぞ。

 当初、秒間0.7回から始まって、部品から選別して個体差を減らし、同期回路の調整を試行錯誤して、秒間5回まで成功したが、不定期にチャタリングを起こして動作不良になるので、安定稼働する秒間3回で妥協せざる得なかった。

 今回は使用した小型開閉器の耐久性は低いが、公開演習の間保てば良いので、大変不本意ではあるが良しとした。


 破壊砲ブラスターキャノンのデザインも大砲から小銃に変更し、プルバック方式を採用が決まっているが、1からデザインしていては間に合わない。

 既存のプルッバック方式のライフルのデザインを踏襲しようと思うが、守護者の好みが分からない。

 なので、使いやすく性能が良いと評判の物のデザインを3種類選定して、機関部を収める筐体の設計は別の者が担当している。


 手が空いている内に、一般隊員向け用の試験用機関部を作成しよう。

 破壊砲ブラスターキャノンの小型化、整備の簡易化の一環で合体分離砲を作った時の不適合部品が流用できそうだから、それで組んでみよう。

 あの時は、余りにも低出力だったので不適合だったが、今回の用途には向くので組み合わせる。

 あと、合体分離砲の同期回路を少しいじれば、出力調整ユニットに早変わり。

 不適合部品の組み合わせで数種類の機関部が出来た。


 銃身は、守護者用で作成した物の選別落ち品を使ってオープンフレームに仮組みをして試射を行う。

 設定と射撃データを取りながら出力と精度を調整していく。

 守護者専用破壊砲ブラスターキャノンいや破壊小銃ブラスターライフルは、事前にある程度データが取られているから良いが、一般隊員向け破壊小銃ブラスターライフルは全くの新規の為データがない。

 その為、出力調整機能の範囲は、E1からC1までと幅広く設定可能としている。

 最終的に5点位の出力値に可変可能設定にする予定だが、テスト用は実際に使う出力を探る意味を含めて幅広い設定が出来ないと不便だからな。


 基礎データが取れた処に、銃身の設計を行っている者が試作品を持ってきた。

 何でも、実弾と破壊光線の両方に対応した試作品を作成したそうだ。


 銃身は、20式5.56mm小銃と互換に作ったとの事なので、銃の機関部は20式5.56mm小銃を使えるという。


 破壊砲ブラスターキャノン破壊小銃ブラスターライフルの銃身は、破壊光線の偏光増幅器の役割を担っているので空洞だが、銃身に使っている魔力誘導体は銃弾の衝撃に耐える事が出来る程強くない。

 なので、魔力伝導体を特殊鋼で挟んだ多重管にライフリングを施しているという。


 試作品は、5種類。

 誘導体が薬室から銃口へ真っ直ぐ4本が十字に配置されているタイプで、標準的な破壊砲ブラスターキャノンでも採用されているだ。

 この誘導体の内側の管の厚みを変えた物を3種類。


 誘導体が、左右2対で片側の2枚の間隔が30度の物で、内管が厚さ中の物。

 誘導体が、内管のライフリングと同じ螺旋を描いている物で、内管が厚さ中の物。


 テストしていた一般隊員向け用の試験用機関部の銃身を5種類の試作品に順次切り替えながらデータを収集していく。


 結果を纏めると、厚みを変えた場合は、内径の厚みが薄い方が良好な結果になった。

 誘導体の形状の違いでは、十字に配列した物をA、左右二対に配置した物をB、旋条銃砲身と同じに配置にしたものをCとした場合。


 破壊力:C>A>B

 貫通力:C>B>A

 命中精度:C>A>B

 射程距離:A>B>C

 弾速:B>A>C


 一長一短あって面白い結果となった。

 今回は、誘導体の形状が同じな為、形状を変える事で性能が変化するか検討・調査する必要がある。

 誘導体の最適な配置と形状の探究は奥が深そうだ。

 それはともかく、実弾使用時に耐えられるかも検証する必要があるが、破壊小銃ブラスターライフルと実弾小銃として機能を有する事が可能になった。


 取り敢えず、公開演習までの時間も残り少ない為、完成した筐体に守護者専用の試作機関部を収めて調整を行う。

 試射出来ないので、レーザー測定器等を用いて照準誤差や重心の調整を行う。

 出力等の調整は、公開演習前の訓練時に行うしか無い。


 守護者の訓練中は、調整班以外は暇になるから、一般隊員向けの試射と試験データの取得でもやらせよう。

 守護者用の試射データは良いのか?

 それは、調整班が同時に計測するから大丈夫だ。


 一般隊員向けの試作機は、何種類かの銃身と機関部の組み合わせを作って持っていこう。あと、守護者用と混同すると困るから銃床を黄色く塗っておこう。


 20式5.56mm小銃にも誘導体を十字に配置した内管厚中の物を取り付け、残りの銃身も持って行こう。


 計測班や調整班は、既に研修島に乗り込んでいるし、我々開発班も完成した試作機の運搬準備も終わった。

 予備部品の作成が終われば、我々も出発だ。

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