篠原 奏姫 手芸部の意地

 「第54話 文化祭の準備」から「第61話 文化祭」までのお話です。


 私は、神城さんを手芸部の部室に連れ込み、部室に居た部員達と一緒に測定を終え、教室に戻る。

 神城さんには、偶々居た部員達に手伝って貰った体を取ったが、実は事前に全員を元部長権限で招集していたのだが、全員でお出迎えすると逃げられそうだったので、2人を測定のお手伝いにして、残りの部員には隠れてもらっていた。


 教室には、全員が残っている。

 山田「篠原さん、こっちは終わったぜ。

 コスプレ衣装は、極力自前で用意する事になった。

 今の所、衣装が無い奴で、クラスメイトから借りれるあても無い奴が3名だけだ。

 こいつらの分の衣装代と内装用の予算で1万円を貰うから、予算の残り2万円とカンパ2万円の合計4万円で足りるか?」


「手芸部で保管している部材と部費からも出すから十分だよ。

 あと、渡していたデザイン画で、どれが良いか決まった?」


 山田「ああ、この妖精と姫で意見が分かれたけど、最終的に姫で決まったよ。」


「分かったわ。このデザイン画を元に作成するよ。

 時間が無いから、直ぐに作成にかかる。」

 お金を田山さんから受け取り、鞄を持って大急ぎで部室に戻る。


 部室に戻ると、7人の部員全員が待ち構えていた。

 早速、部員達にデザイン画を見せてイメージの共有と実際に使う布の種類やアクセサリーを決めながら、部室にある部材の在庫も確認して買い出しリストを作成していく。


 次に役割分担として、私を含めた8人の作成部位を決める。

 次に買出し班と居残り班を振り分け、資材を購入に行く間に、居残り班が全員の型紙を作成する事になった。


 全員のモチベーションは非常に高く、今すぐにも作業に入ろうとするが、短期集中で作業するので、しっかりとご飯を食べてから作業する様に言ってから、一旦解散をした。


 午後、買出し班のリーダーでもある私は、集合時間より30分も早く行きつけの手芸店を訪れたが、他の二人は既に布や小物を吟味していた。

 二人と合流して、物色しながら話を聞くと、やはり我慢できなくて、お昼を食べたら即来てしまったそうだ。


 普段なら3時間位かけるものを、1時間で吟味を重ねて、資材を選び購入する。

 3人で、両手一杯の資材を持って学校に運ぶ。


 部室に戻ると、既に全員の型紙が完成しており、部室にある資材で作成可能な部位から作成を開始していた。


 全員で、購入した資材を確認して、買い忘れが無いかを確認してから、作成作業を始める。

 この日の最終下校時間まで、作成に没頭してしまった。


 翌日の試験休みのこの日も、朝7時から最終下校時間まで作業を続けて仮縫いまでこぎつけた。


 翌日、朝の7時の部室では、仮縫いのドレスをマネキンに着せて仕立て具合を確認しているうちに8時になってしまった。

 今日の衣装合わせには、間に合った事を一同で喜びつつ、教室に向かった。


 6限目の文化祭準備時間に、神城さんを連れて部室に向かう。

 部室で、部員達が黄色い歓声を浴びせていたが、時間がなかったので、早々に試着させると、腰回りのボリュームが足りない。

 やはり、パニエを着けてスカートを広げる事にする。


 パニエを着けて試着させると、良い感じになったので、小物の組み合わせを試しては写真に収めていく。


 時間一杯まで組み合わせを試していたので、ホームルームにはギリギリ間にあった。

 放課後、帰宅する神城さんに耳元で、「明日中には、完成させるから楽しみにしていてね。あと、当日はストラップレスか外せる物を着けてきてね。でないと、ノーブラで着てもらう事になるからね。」とささやくと耳まで真っ赤にして俯いてしまった。

 そんな彼女を残して部室まで走って行く。


 部室に戻った後は、手直しと本縫いをして仕上げていくが、翌日の最終下校時間までに完成しなかった。


 文化祭当日も、朝7時から部室に籠もり、お昼間近になってようやく完成した。

 部員全員で完成を祝い、達成感を共有している最中に、神城さんが訪れた。


 早速、神城さんを飾っていく。

 最後にティアラを載せたその姿は、まさにお姫様。

 その姿をカメラと記憶に焼き付けていると、護衛の人が神城さんをこの場に留めてどこかに連絡する、2人の護衛の人がやってきて化粧を施し、お姫様の所作の練習を始めた。

 私達は、一部始終を動画に収めながら見とれていた。


 模擬店の呼込みとして、店頭に立つ神城さんは大人気で、常に人に囲まれていた。

 特に、小さい子供からは姫様として、圧倒的な人気を得ていた。

 そんな姿を見ていて、いい仕事をしたと実感できた。


 文化祭終了時間になっても、子供が減らないどころか増えたのには驚いたけど、それでも一人一人きちんと対応する神城さんは、マジ姫様でした。


 文化祭で着た衣装を、神城さんに渡そうとしたが、固辞されたので部室で飾る事になった。

 部室には、神城さんの背丈に似せたマネキンにドレスを着せて、神城さんが着た時の写真を添えて飾ってある。

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