児童文学によせて 6 冒険者はネズミ

あんらん。

冒険者はネズミ

『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』の作者、斎藤敦夫さんは今、関東のとある幼稚園の園長先生をされています。


某出版社に勤務されていた二十代後半の頃、奥様に代わり生まれたばかりのお嬢さんを寝かしつけながら、この作品を執筆していたと昨年の講演で語っていました。


この作品がテレビアニメとして放映されると、悪役イタチのノロイは、当時の子どもたちを恐怖の底へ落とす、今でいうラスボスでした。作者の意図は十分汲んでもらったというところでしょうか。


斎藤さんは、「幼少期に海外の歴史的な戦記ものを好んで読んでいた。日本に同じようなものがないことに気づき、自分で書いてみようと思った」と話されていました。

日本の児童文学では珍しく、戦うことを前面に出した作品です。


主人公ガンバは、海も見たことがない都会のドブネズミですが、男気溢れる若者です。

「なぜドブネズミだったのか」よく聞かれるというこの問いに、斎藤さんはまた答えます。

「職場へ向かう途中の交差点で、ふと目の前を通り過ぎるドブネズミを見たのです。」

都会の喧騒の中、ひたむきに駆けていくその姿が健気に映ったと。


物語は、ある島で暮らす島ネズミたちが、何倍も大きなイタチに攻撃され、もうあとわずかというところまで追い込まれ、助けを呼びに、命からがら人間の船に乗りやってきた一匹のネズミ。そこにガンバが遭遇することから始まります。


ノロイの名前が出て、大勢のネズミは尻込みします。その奇々怪々な力は誰も太刀打ちできないと恐れます。

しかし、ガンバは何も知らないことをいいことに、また、船に乗って大海原を見てみたい欲求にかられみんなを説得します。

そして、15ひきの仲間と共に、島ネズミたちを助けに行くことになります。


ガンバと仲間たちの活躍に沢山の子どもたちが胸躍らせました。この作品の前作の『グリックの冒険』、続編『ガンバとカワウソの冒険』で、斎藤さんはガンバの冒険シリーズを完成させました。


長年執筆されてきた方の声を聴けることは、たとえプロではなくとも意義のあることです。作品の背景や作者の心境を知ることは、自らの創作のきっかけにもなります。

なによりも、小さい頃観ていたテレビの主人公が目に前によみがえってきて、忘れていた感情を思い出させてくれます。


園長先生として日々、子どもたちの成長に関わっている斎藤さんですが、講演の中では、園の子どもたちはもとより職員、保護者とともに取り組んでいる、あるイベントの様子も話してくださいました。


それを詳しく紹介することはできませんが、まったくの第三者が聞いても、楽しくなり、参加したくなるものでした。

キーワードは「新たな物語をみんなで作る」です。さてさてどんな物語なのか。

きっと冒険あふれる物語に違いありません。




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