第7話 マネージャーになるように言われたんだが、どうすれば良いんだ!?
「ほほう、そうきたか」
ま、マジ? 新曲聞ける、てマジなの!?
興奮と驚きに心が支配される中、そんな俺を置いて淡々と話を進める宝条達。いや待て待て俺を置いて行かないで? 一番混乱してるの俺だから。
「いや待って待って、私も歌うの? ちょっとダルいんだけど」
ミズレは気だるそうに言う。それを見たアカネは「まぁまぁ、やってみない?」と言って彼女を誘う。そんな二人の様子を見ていたソウは、アカネのようにミズレを誘う。
「……まぁカスミがそう言うなら、やってあげても良いけど」
ソウの言葉に動いたミズレは言うと、触っていたスマホをポケットにしまう。そして、アカネ、ミズレ、ソウは自分の更衣室に入って行った。そして、残った宝条は俺に振り向く。
「勘違いしないでね、これはただのお礼だから」
言って、彼女も自分の更衣室に向かって行った。
※
一人観客席に着いた俺は、照明が当たるステージをワクワクしながら眺めていた。すると、明るくなっているステージに仮面アイドルの四人組が現れる。現れた四人組はいつものアイドル服ではなく、練習用の黒服を着ていた。
「それじゃあ、いきます。新曲「幻想郷」」
スミスミがステージの壇上で言うと、辺りから心を踊らせる様な音色が流れ始める。それと同時に踊り出すスミスミ達。まだ振り付けを決めたばかりなのか、微かにペースが良くない、だがそれをカバーするように他のメンバーが足りない部分を補っていた。
そして、流れていた曲は最終局面を迎え、流れる音色に合わせて完璧な踊りを見せるスミスミ達。そして、新曲が終わると、俺は思わず立ち上がり、拍手をした。それを見たスミスミらは、こちらへお辞儀をして終わった。
「良かったよ! めちゃくちゃ良かった!」
「ありがとう」
スミスミは言うと、彼女達はステージから立ち去った。あまりの曲の音色と音程、アイドル達のパフォーマンスを見た俺は、少しばかり放心状態になっていた。
「ねぇ、君、スミスミちゃん達のお友達?」
そんな放心状態の中でいる俺に話しかけてきたのは、ここの事務所のスタッフさんだった。ふと声の方へ視線を送ると、スタッフさんの両手には瓶コーラがあった。
「これスミスミちゃん達に渡してきて、あの子達、相当頑張って曲を作ってたからさ」
「そうですよね、めちゃくちゃ良かったですもん」
俺はスタッフさんから瓶コーラを受け取ると、さっきいた会議室に戻った。
※
会議室に戻ると、そこにはくたびれた様子の宝条達がいた。
「はいこれ、スタッフさんの差し入れだって」
俺はテーブルに持っていた瓶コーラを置いた。すると、その瓶コーラを見たミズレは目をキラキラとさせ、素早くコーラを手に取り、それを口に注いだ。
「たまんねぇ! やっぱりひと仕事を終えた後のコーラは格別だー!!」
「神島くん、どうでしたか? 私達の新曲は」
「めちゃくちゃ良かったです! 感無量でした!」
俺の感想を聞いた宝条はニコッと笑うと「良かった!」と言った。そんな様子を見ていたアカネはニシシと言って、俺達の前に立った。
「そういえばー? スミスミてマネージャーさんいなかったよねー?」
「ま、まぁ……まさかアカネ……」
「もうこの際だから、オタクくん、君さスミスミのマネージャーになってみない?」
「ま、マネージャー?!」
「ちょっと! アカネ!」
「良いじゃん良いじゃん、だってスミスミとソウちゃんだけだよ? マネージャーさんがいないの」
アカネは小悪魔のような微笑みを見せる。そんな彼女の言い分にぐうの音も出ない様子の宝条。いや待て待て、マネージャーて何か話がぶっ飛んでないか?
「で、どうすんの?」
「それは……」
宝条はアカネの問いに、どんな答えを出そうか迷っていた。そんな中、アカネはニヤリとした表情で俺に歩み寄る。そして、彼女は魔性の笑みを見せてきた。
「もしオタクくんがマネージャーになるなら沢山の特典がつくよ?」
「と、特典?!」
不覚にも「特典」という言葉に食いついてしまった。そうオタクにとって特典という言葉は、半額セールのシールを付けられた刺身を見つけた時と同じような高揚感になる。そんな俺の様子を見逃さなかったアカネは追い討ちをかける為に俺の耳元で、
「そうその特典はこの私たちがさっき来てた練習用の黒服、非売品のものを差し上げよう」
「マジですか?!」
「マジです!」
「ちょっと、アカネさっきから何言って」
「俺やります、スミスミのマネージャー」
「はぁ!?」
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