第8話 マネージャーになることになったんだが、どうすれば良いんだ!?
「良いじゃん、スミスミブス専なんだから、その子でピッタリじゃん」
ミズレは言うと、スマホで俺と宝条をツーショットにして写真を撮った。
「勝手に決めないでよ! マネージャーくらい私が認めた人に——」
「でも今の今までそう言って、私たちが紹介した人たち全部蹴ってきたじゃん。スミスミ、私はアンタの事を思って言ってるの」
「それは……」
アカネの言い分に周りのミズレ達は、うんうんと首を縦に振る。宝条は彼女の言葉に何も言えない様子だった。軽はずみに言ってしまったな……やっぱやめるって俺が言うべきだな。
「やっぱ俺マネージャーやめ——」
「分かった」
俺が言葉の撤回をしようと口を開いた時、その発言を遮るように宝条は言葉を発した。
「分かったわ……皆の意見もたしかに間違ってない、だから一ヶ月! 一ヶ月間神島くんを私のマネージャーにする! それでマネージャーの適性があるなら私のマネージャーにする! これでどう?」
それを聞いた俺を除くアカネ達は「おぉ」と感心した声を上げる。しかし、その一方で俺は「うへぇ」と驚きのあまり憔悴してしまう。
そして、彼女は俺の元へ歩み寄ると、俺と硬い握手をした。うん、何この握手? てかマジで決まったの? 俺まだ覚悟決まってないんですけど……え、ホントに?!
「おいブスくん、スミスミを頼んだぞ」
「へ?」
ボーっとしている俺にミズレはニシシと笑いながら言うと、それに続いてアカネやソウが応援の言葉を残していく。
「よろしくお願いします、神島くん……いいえ、マネージャーさん」
「うへぇ」
というわけで、俺の青春にアイドルのマネージャーとかいう謎の要素が仲間に加わりました! さて、この先どうなっていくことやら。
※
昨日の件が頭から離れないまま迎えた次の日の朝。
「おはおは! 神島!」
教室に入ると俺を出迎えてくれる穂状。
「穂状か……なんか俺お前見てると安心するわ」
「え?! なにそれ、どういう意味?!」
昨日の件で色々と疲れた俺は、ついそんなことを言ってしまう。いやまぁ安心するのは事実なのだが。
こうして穂状と話していると、教室にこのクラスのマドンナが入ってくる、そう宝条菫だ。彼女が入ると相変わらず周りにいた生徒たちが宝条に群がる。本当にこの現象はどうにかして欲しい、だって、この現象が俺の席で起こると座れないんだもん!
「おはよう、神島くん」
「お、おはよう」
宝条はこちらへ優しく微笑みながら言うと、俺はつい挨拶を返してしまった。
※
スミスミのマネージャーになった事に未だに実感が湧かない俺は、ボーっとしながら先生の授業を聞き流していた。ダメだ、まったく授業に集中出来ねぇ……。
俺は持っているシャーペンを回しながら、ふと、宝条の方へ視線を送る。すると、彼女はこちらを甘い瞳で見ていた。
「——ッ……」
一瞬、彼女と目が合ったことに驚いたものの、俺はサッと宝条を視界から外した。そして、気づけば四限目の授業の時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、授業が終わった。
さて売店でパンでも買って、あの場所でゆっくりするか。俺は席から立ち、財布を持って売店へ向かおうとした。が、その時、誰かが俺のクイッと袖を掴む。
「神島くん、どこに行くの?」
袖を掴んでいたのは宝条だった。
「いや、売店でパンでも買おうかなと」
「お弁当じゃないの? 育ち盛りの高校生がパンだけだとちょっとアレじゃない?」
「いやまぁそう言われればそうだけど……俺料理できないから弁当とか作れねぇんだ」
「お母さんとかお父さんは作ってくれないの?」
「うーん、俺の両親共働きだから」
言うと宝条は納得したような顔になると、バッグをゴソゴソと漁り出す。そして、どこか照れた様な表情で俺にある物を渡した。それを見た俺はつい「何これ?」と言葉を漏らした。
すると、彼女は小声で何かゴニョニョと言っている。
「え、何こ——」
「お弁当!」
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