おしゃべり
サホロ国から技術者の派遣をするという連絡はすぐにきたようです。
ただ全家庭に配備するのは無理があるのでまず飲食店、食品店に作る。
一般的家庭は小型冷蔵庫のようなものを配備して氷屋から氷を購入してもらうことになった。
肝心の氷の輸入はまだ先になるので新メニューは冬になってからミキちゃんに少しずつ作ってもらう。
季節は夏から秋になったけど残暑もあって暑い日はまだ続く。それでも日本よりはぜんぜん快適。これだとアイスはたしかにいらない……。
お店の日向で猫たちは相変わらずのんびりゴロゴロ。
お客様はまばらで少し暇な感じ。
猫エリアの奥にガラス窓があって、そこから外が見える。
比較的大きな庭があり一本の大きな木がある。
名前は知らないけどイチイの木によく似ている。
秋頃に赤い実をつけるのでそれを目当てに鳥たちがやってくる。
実がない時期は木の根元にエサを置いている。すると様々な鳥が入れ替わり立ち替わりやってくる。
猫たちはその様子を窓越しに眺めている。
たまに『カカカカカ』や『ニャニャニャニャニャ』と鳴いている。
これは狩猟的クラッキングという。狩りをするときに興奮して発生する。ただしない猫もいる。
お客様はそんな猫たちを眺めている。
その木の向こうには湖が見える。トークオ湖だ。かなり大きくて対岸がギリギリ見えるくらい。魚も豊富に穫れる。
お店は湖の南東にあり周りを囲う湖岸線はL字のような形になっている。
以前、海外旅行へ出発した港は南の方にある。
一方、表側は大通りではないものの比較的人通りの多い道。
お店の両隣は空き家なので安心して営業ができている。
道は左右にのびており右へ進むと道なりに南へと下っていく。湖岸のL字に沿っている感じ。
お店から左に少し進むと大通りと交わる。そこには大きな噴水があって憩いの場になっている。ギルドもここにある。
噴水を越えてそのまま真っ直ぐ進むと王宮がある。
噴水から南北に延びる大通りはそのまま町の外まで続く。
こちら側が好きな猫もいる。行き交う人々を見ている。
日当たりはこちらの方がいいので窓辺で寝ている猫も多い。
猫エリアは全席座卓になっている。お客様も猫と一緒になって寝転びたいがお店は通り沿いに面しておりたまに店内を覗く方もいるので少し勇気がいる。
ただ日差しで暖かくなった猫の体に顔を埋めるのは至福の時。
触られるのが苦手な子たちはキャットタワーやキャットウォークの上でゴロゴロしている。
キャットウォークは透明な板なので下から見ることができる。普段の生活ではまず見ることのない位置なので面白い。肉球だったり香箱座りだったりぺたんこになっている被毛がかわいい。
お気に入りの場所がそれぞれあるけどたまに先客がいるとそのまま一緒に寝ることが多い。多いときは三匹が重なっているときもある。
流石に四匹は重たいみたいで一番下になっている子は逃げ出すことが多い。
「オーナーさん。この子たちは兄弟ですか?」
よく聞かれる質問。
「いいえ。この重なっている子たちはみんなバラバラな所から来てますよ」
「こんなに仲がいいのに違うんですか」
「ええ。はじめは警戒するのですが気がつくと一緒に寝ていますね。ごはんを一緒に食べているからでしょうか」
「ヤハリ、ごはんをいっしょにたべるのはダイジだぞ」
「そういえば、デンさんは仲を取り持つことはあまりしないですね」
「ソウダナ。あいてのスキやキライはそれぞれだからマカセテおる。ムリヤリなかよくさせてもいみがナイじゃろ?」
「そうなんですね。デン様はしっかり仲間のことを考えているのですね」
「さすがデンさんですよね」
「ソレはな。かみをやっているからにはアタリマエじゃ。
まぁおきたケンカはさすがにとめるぞ。けがをするしミンナこわいだろう」
「たしかに……危ないですね」
「とはいえ、ハンパにとめるとぎゃくこうかだからな。はんだんはムツカシイ」
「難しいですね」
「うまいことお願いしますね。デンさん」
「まかせろ」
お店ではお客様が驚いてしまうのでケンカはやめさせる。
自宅では取っ組み合いにならない限りとめないようにしている。
しかしかなりの大声。とめたくてもぐっとこらえるがうるさいことにかわりない。なので考え方を変えてみている。
実はふたりとも耳が遠くて大声で挨拶をしている。と思うようにした。
よくやるのはトトとポン太。顔を近づけて
「おはようーーー!!!」「おう!おはよーー!!!」「今日もいい天気だねーー!!!」「そうだねぇーー!!!」
とお互いしゃべっているのだろう。
デンさんは「ん?ふつうにケンカだぞ」と言っていた。知っている。知っているけど気持ちの持ちよう……。
★登場人物
*トト:飼い猫
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