お仕事?

 翌朝


 つい3時間前まで飲んでいたのにもかかわらず、三人ともビシッとした服装を決めて宿を出る。


「紬はお酒に強いのね」


「いえ。お二人に比べればぜんぜんです。しかし本当にすごいですね。まったくお酒が残っていないんですね」


「ふふふ。これもたしなみのひとつよ」


「勉強になります。それで今日会う方はどんな方なのですか?」


「そうね……。この国の代表ってところかしら?」


「国の代表って!昨日はなにもおっしゃっていなかったじゃないですか」


「あら?そうだったかしら?マリー覚えているかしら?」


「ごめんなさい。覚えていないわね」


「大丈夫よ。紬。私たちがいるからまかせなさい」


「そうよ。紬。まかせなさいな」


とりあえず二人について行く。


 屋台がならぶ路地を抜けてしばらく歩くと大きな屋敷に着いた。


 しかし建物へは入らず庭園の中に進む。


 そこには東屋とティーセットが並んでいた。


「ポメロ様。ごきげんよう」


「ポメロ様。ご機嫌うるわしゅう」


「カイリもマリーもげんきそうじゃな。そちらのむすめがれいのこじゃな?」


カイリさんとマリーさんがポメロ様に挨拶を交わしているが肝心の姿が見えない。しかし姿は見えなくてもなにも言わないのはよくないのでなんとなく奥の席に向かって挨拶をする。


「はじめまして。元井紬と申します。お目にかかれて光栄です」


「うむうむ。きだてのよさそうなむすめじゃ。デンのやつがきにいるのもわかるのぉ。さ、さ。みなすわるのじゃ」


ありがとうございます。と言い席へ座る。とテーブルに一匹の猫さんが飛び乗る。真っ白な長毛のその猫は気品のあふれるいでたちで見ほれてしまう。


「さて。と。みな。きょうはよくきてくれたのじゃ。あらためてかんげいするのじゃ。とくに、デンのつがいつむぎよ。ありがとうなのじゃ」


「へっ!?つがい!?デンさんの!?ちょっと。え。ポメロ様って猫さん!?」


「おや?しらなかったのか?このくにのまもりがみ。そしてようしたんれい。みるひとをとりこにするびのけしん。ポメロとはこのワシのことなのじゃ」


「しゃべられるのはデンさんだけじゃないのですね……」


「あやつはがんばってしゃべっておるが、まだまだこどもじゃし、ねこのすがたになるのもはじめてじゃからな。ききとりにくいじゃろう」


「たしかにデンさんに比べるとポメロ様のは聞き取りやすいです。デンさんはまだ子供なのですか?」


「こどももこどもなのじゃ」


「そこのあたりはわたしが説明しますね」


カイリさんが語り始める。


「まずは、そうね……。

この世界には7つの大国といくつかの小国があるのは知っているわよね?大きな国にはそれぞれ守り神がいて。

サホロ国のハシカプ様。

ナーゴ国のミカン様。

オーカサ国のフィグ様。

フクカ国のキーウィ様。

オキ国のシークワスン様。

トークオ国のデンカ様。

そしてコチ国のポメロ様。

この7柱神の他にあと2柱神がいるんだけど。合わせて9柱神と言われているの。

私たち姉妹はその神様同士を繋げる神子なの。で世界中を飛び回っているわけ。まぁこれはいいとして。

猫には9つの命があると言われていてね、生きているうちに修行を積む。徳を積む。など善行をして亡くなるを繰り返して9つ目に神様になることもできるの。

皆様かなり長い間神様を務めていてね。ハシカプ様が一番上でもう1000歳をかるく超えているというわ。

デンカ様が若くて500歳くらいかしら。もちろん正確な年齢は私たちもわからないわ。

何度も繰り返すうちに人の言葉を覚えるけどおしゃべりするためには声の出し方を勉強しないといけないの。

で、肝心のデンカ様だけどあのお姿になるのは初めてなの。

だから声の出し方が上手じゃないの。声帯が赤ちゃんだから」


「そ。デンカはあかちゃんなのじゃ」


 ポメロ様が笑う


「500歳で子供扱いされてしまうとは……私たちなんて子供にすらなりませんね」


「そうね。私たちはそこまで長生きや命を繰り返すことはできないからね。だからこそ私たちは子孫へ繋げていくのよ」


続く命と繰り返す命。いつかは終わる命。経験したことを繋げていくのは大事だと思う。


「しかし守り神様ってデンさんだけではなかったんですね。他にも居るというのははじめて知りました。カイリさんやマリーさんのお仕事にもびっくりです」


「ただ遊んでいたわけじゃないのよ?」


「なにをいっておるのじゃ。ただあそびにきておしゃべりしてかえっていくだけなのじゃ」


「そんなことないわよ。その証拠に。ほら。デンカ様から預かった例のものよ」


「おおおーわすれておったのじゃ。ごくろうなのじゃ」


 そういってカイリさんはポメロ様になにかが入った紙袋を渡した。その中身をみて。


「さすがデンカじゃよくわかっておるのぉ。カイリ、マリー。そしてツムギたいぎであったのじゃ。で、ツムギよ。いつデンカとちぎりをかわすのかの?」


「その話は全然知らないのですが……。どなたからそんな話が出たのですか?」


「だれから、ということはないのじゃ。さっきカイリがせつめいしたとおり、あやつはいままでかみとしてくにをほごしてみまもっていただけなのじゃ。

それが、ツムギがきたあとにすがたをだしてくらすようになったんじゃ。だからよほどのりゆうができたんじゃろうなぁとおもったわけなのじゃ」


「そうなのですか……でもケット・シーと人が結婚やそういった関係になることはあるのですか?」


「けっこん?」


「紬ったらやだわー契といっても契約するだけよ。従魔契約ってよく言われるわ。ヒトが精霊、妖精などと契約を交わして互いに結びつきを得ることなの。

できるようになることは、お互いの居場所がわかるようになったり、気持ちがわかるようになったり。他にも色々とあるの。ある程度魔力を共有することもできるわ」


「てっきり契やつがいと言われたのでそういったことかと……でもその従魔契約というのもかなり重大なことなのでは……」


「そうじゃデンカはツムギをあるじにしたいんじゃな」


「神様の主になっても大丈夫なのでしょうか……畏れ多いです」


「大丈夫よ紬。そこまでかしこまることではないわ」


「そうなのでしょうか……」


「そうじゃ。ペットとしておせわをしてやればよいのじゃ」


「ポメロ様。流石に言い過ぎよ」


「それもそうじゃの」


楽しそうに笑っている。どうするかはまだ保留にして本人に確認をしないといけない。


「まぁデンカはこれからのやつじゃからツムギからもいろいろおしえてやってほしいのじゃ」


「わかりました。頑張ります」


「「「よろしくね。つむぎ」」」


ポメロ様、カイリさん、マリーさんからデンさんのことを任せられたのはいいけど、どうすればいいのか……帰ったら本人に確認をしよう。


「そうそう。あとこれをなツムギにのんでほしかったのじゃ。カイリよソレをだしてやっておくれ」


そういってカイリさんがグラスに注いでくれたのはオレンジのような果物。


「これはこのくにのくだものでオリカンというのじゃ」


「紬が国王にユノス茶を飲ませてくれたでしょう?そのときにこの果物を思い出したの。育ててはいるけどあまり使い道がないみたいなの。いい考えないかしら?」


「そうですね……これに似た物は知っているので持ち帰って研究したいと思います」


「ありがとうなのじゃ。よういをするようにつたえておくからよろしくなのじゃ」


「わかりました。頑張ります」


「それじゃあ。用事は済んだことだし。食べにいくわよー。ポメロ様また遊びにきますね」


「ごくろうじゃったのぉ。またくるのじゃよー」


「ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたしますね。ポメロ様」


ポメロ様に挨拶を済ませてお屋敷の方へ向かう。今度はこの国の王様との面会。

内藤さんとは違い、いたって普通の王様でポメロ様との内容を再び話す程度。王様との面会がおまけみたいな感じだった……。カイリ様に言わせると王様同士で話すから私たちは気にしなくていいとのことだった。


 屋敷をあとにしてその帰り道でもいくつかの屋台を食べまわる。


 一度宿に戻り休憩をする。


 カイリさんとマリーさんは宿の隣のお店でお酒を飲むと言っていたので、別行動をさせてもらうことにした。


少し休んでから気になったお店をいくつか見に行く。


この世界の飲食は地球のものとあまり変わらない。特に日本やアジア圏のものによく似ている。馴染みやすい雰囲気。


お店はフレッシュジュース、クレープ、麺類、串焼き、揚げ物が多い。アイスやパフェ、かき氷のような冷たいものはなかった。やはりミキちゃんの氷魔法はとても希少なものなのかもしれない。アイスクリームとかも作りたいけど、独占になってしまうしミキちゃんの負担もあるから氷魔法は広まったほうがいいのかな……?


明日の朝に帰国をするのでその日は早めに就寝。カイリさんたちは結局朝まで飲んでいたらしい……。


港に着くとポメロ様から大量の果物が入った木箱が届けられていた。新メニューの開発が大変そう。


帰りも来た時と同じようにドラゴンに運んでもらう。ちなみにドラゴン移動は王族や一部の貴族や豪商など限られた人しか乗れないみたい。


帰国後港で解散。果物の木箱は検査後お店へと届けてもらうことになった。


ひさびさにみんなと再会する。


ミキちゃんはお城でカイリさんとマリーさんのお出迎えみたいなので今日は来ていない。


ナナさんとデンさん、ハチくんがお店の前で待っていてくれた。


たった二泊三日の日程だったけどすごくひさびさに会う気がする。


ナナさんデンさんは普通におかえりと出迎えてくれたけど、ハチくんは泣きながら抱きついてきた。


ハチくんを慰めつつ店内に入るとジェフさんがお店のメニューのロコモコを出してくれた。


ごはんがまだだったのをわかってくれていたみたいで嬉しい。


「みなさん。お留守番ありがとうございました。お土産たくさんあるのであとで渡しますね」


「おかえりなさい。みんな待ちわびていましたよ」


「ナナさん。みなさん。ただいまです。お店は大丈夫でしたか?」


「はい。もちろん大丈夫でしたよ。ジェフさんもデンさんもハチくんも頑張ってくれてました。ミキさんもよくきてくださってました」


「ナナさんもありがとうね」


「いえ。お疲れでしょうからゆっくり休んでくださいね」


「うん。ありがとう明日からまた頑張るね」


ジェフさんが作ってくれたロコモコは本当に美味しくて帰ってきたと思える味になってました。

このロコモコは日本にいたときからカフェで提供していた定番料理だったからとても嬉しい。

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