かき氷

 猫たちはブラッシングをしてからは快適に過ごしているようにみえる。


 しかし暑い日がこれから増えてくる。この暑さから逃れるために必要なもの。それはエアコン。この国の冬は中央管理施設から温水が送られて快適に過ごせる。夏は……冷水は送られてこない。湖からは涼しい風が吹いて涼しいのでそこまで必要ではない。しかし暑いことは暑いそんな日に食べるものと言えばかき氷。


 ということでまずは確認


「デンさん。かき氷って知ってる?」


「かきごおり?かき……?ごおり……」


「冬の寒さで水が凍ったのを氷というんだけど、暑い日、夏の日とかにその氷を薄く削って果物やミルクとかで食べるの」


「フムー?おいしいのカ?」


「そのままだとおいしくはないけど味付けをするの。ミキちゃんは国王様から聞いたことありますか?」


「うん。聞いたことはあるけどこの国では難しいかもと言ってました」


「そうのですか?氷の魔法で塊を作って刃物で削ればできそうな感じだったのに」


「氷の魔法……。氷の魔法はありませんわ」


「そうなの!?水魔法があるからてっきり使えるものと思ってた」


「空気中の水分を集めて増やして使うのが水魔法なのです。それを凍らせる……凍らせる方法……寒くなると水が凍るからそれを再現……」


「ミキちゃん?」


「あ、ごめんなさい。魔法学を習っているのでどうなのかなぁと思って……。寒さを魔法で再現するには……うーん……」


 この国の魔法の生活をしていく上で必要なのは四大元素と言われる火と水。風と土はあまり重要ではないため使う人はほとんどいない。それ以外は研究すらしていない。他国では多少研究しているものもあると聞いた。


「火がつく原理は空気を圧縮して熱量をあげて発火させる……。水魔法は空気中の水分だけを圧縮して水を作る……」


 ミキちゃんのなにかに火がついたみたい。冷凍庫はどんな仕組みなのだろう……。


「フユはさむくてみずうみガこおる。あのサムさはどういうゲンリかわからんからのぉ」


「夏に打ち水と言って地面に水を撒くと気化熱で温度が下がって涼しくなりますが凍るまでは低くならないですからねぇ」


「お姉様。気化熱ってなんですの?」


「私もよくわからないんだけど水が蒸発するときに周りの熱を吸収するみたいなの。実際に少し温度が下がるみたいね」


「そういえば水魔法を使う時、周りの温度が下がる気がする……あれも気化熱?でも凍るような寒さではないよね……水を凍らせることより空気を冷やすことを……空気を水にするときにその周りの空気が冷たくなるなら……。1か所に水を貯めて、その中心にさらに空中から水を作る。移動させ続けると……」


 完全に集中してしまっている。ソレほどまでに氷を作るというのは大変なことなのかもしれない。改めて冷凍庫や冷蔵庫の凄さがわかった。


 突然ミキちゃんが大声をあげて、ごめんなさいと言葉とともにお店を出ていった……。なにか思いついたのかもしれない。


そして後日


「出来ましたわ!」


 と自信満々に氷を持ってきた。


水を生み出す魔法と火を生み出す魔法はどちらも圧縮や凝縮。その圧縮した場所を移動させまた圧縮。それを繰り返すとその周辺がどんどん冷えていくことに気づいた。素早く繰り返すことで空気が冷える。そこに水を入れた容器を置くと氷ができた。これはもう国を揺るがすことらしい。だけどこれに関しては今はまだ公表したくないと言っていた。大変なことになるのは目に見えるから……。氷を確保できるようになったけど聞かれたらどんな風に誤魔化せばいいのだろう……。


 ミキちゃんの協力で氷はできた。次は削る機械。刃物と箱があればいいかな。箱は木箱になるのでヤリさんに相談。すると大工道具で木を削る道具があるとおしえてくれた。日本でも使われるカンナと同じような物。これで大体の形にできるのであとは上から押さえながら氷を回転させながら削れるように要望をして完成を待った。


 そして後日


「出来たぜ!」


 と自信満々に氷削り機を持ってきた。

それはもう完璧にかき氷機!早速ミキちゃんの作ってくれた氷を入れて試運転。


 シャリシャリシャリシャリ……

氷がリズミカルに薄く削れていく。キレイなかき氷が完成してしまった。

第一弾。味付けはシンプルに牛乳と砂糖を煮詰めただけの練乳。スプーンで練乳を全体にかける。たっぷりかける。みんなに見守られながらひと口……。

 これは美味しい!すごく美味しい!氷の粒が多めのかき氷も美味しいけどふわふわのかき氷も美味しい!感動しながらもみんなに勧める。が、いまいち反応がよくない。それもそうだ。ただの氷に訳の分からない白い液体。

 みんなが迷っている中、後ろからスプーンを持った手が伸びてきた。


「お。ついに完成したんだね。どれどれ。……。おおお!懐かしい!これだよこれ!」


 食べてくれたのは国王の内藤さんだった。ミキちゃんの様子が気になりこっそり後をつけてきていた。


「みんなも美味しいから食べてよ!大丈夫だからさ」


 内藤さんの声にみんなスプーンを取り食べ始める。


「おおお!甘い!」


「なにこれ口の中であっという間に溶ける!」


「ひんやりしてて美味しい!」


「これは涼しくなるワイ」


 デンさんにもお皿に入れて渡す。


「ホウ……これはふわふわデすぐなくなるがヒンヤリしてていいナ」


 デンさんも喜んでくれている。


 ふと大事なことを思い出した。内藤さんはミキちゃんの氷のことを知っているのか……ミキちゃんは誰にも言ってないと話してたけど……確認をすると


「うん。知ってるよ。でも大丈夫だよ。娘が大事に巻き込まれるようなことは黙ってるよ。ただ、いつかは話さないといけなくなるから対策考えようね」


 と言ってくれてふたりで胸を撫で下ろした。


 内藤さんの協力もあって色々と隠したまま秘伝の氷を使ったかき氷として販売することになった。


 日本の夏ほど暑くはないけど強い日差しの下、建物の日陰で食べるのかき氷。まだまだ夏は続きそうです。

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