ハチくんとエルフさん

「こんにちは」


 エルフのティリさんがやってきた。今日は職場の人も一緒だ。先日のこともあり勤務が空いている人たちで来てくれた。一斉に私に近寄ってくる。


「お嬢さん。この間はありがとうね」


「本当に助かったわ。ありがとう」


「ごはんも美味しかったしな」


「そうそう。すっごく美味しかったー。私あれ好き!」


「だなーまたごちそうしてほしいな」


「いいなー今度は違う手料理がいいな」


「簡単に作ってあの味になるにから本格的なのはすごいんだろうなぁ」


 と、なぜかエルフのみなさんがフリーズしてしまう。視線の先、後ろにハチくんがスゴい顔でにらんでいる。そういえばこの子があのフェンリルとは知らなかったハズ……。


「あぁ! みなさん。とりあえずご注文お聞きますのでカウンターへどうぞ。ナナさんお願いしますー」


 と言い残しハチくんをバックヤードへ連れて行く。


「ハチくん。ダメだよ。みなさんお客様よ。ちゃんといつものようにしてちょうだい? お願いだから。そりゃあの一件でキミはこんなとこに来ることになったんだけど……」


「ちがう! あのときワルいのはオレってわかってル。それココにきてたのしい。みんなやさしい。ネコたちモいいコばかり。デンさんモよくしてくレル。だけど、ツムギにちかすぎ。オレなにかイヤになった」


 そこまで言うとハチはうつむいて黙ってしまった。もしかすると思っているよりずっと子供でまだ甘えたかったり自分の気持ちに素直になれてないだけなのかも……。


「ハチくん……。ごめんなさいね。怒ってないから。キミの気持ちはよくわかったから。ね。いつものようにいきましょう。お客様にも私から行っておくから」


「うん。わかった」


「よし! あとで美味しいごはん用意するね」


 表情が明るくなる。やっぱ子供ね。ちゃんと見守ってあげないと。


「あと少し頑張ろうね! ……ところでハチくんって年はいくつなの?生まれてからの時間」


「んーー? よくワカンナイけどデンさんとオナジくらいたぶん500ネン? くらい?」


 ……フェンリルとしては子供なのでしょう。


 その後ティリさんたちにハチくんを紹介。ここで働いていることは知ってはいたけど人の姿で接客していることまでは知らなくてみんなびっくりしていた。以前のことを改めて謝罪。さきほどにらんでしまったことも謝って誤解をといた。なんとか落ち着いたかな……。ハチくんもエルフさんたちも楽しくしてくれているみたい。


 ふと、ハチくんがこっちを見る。とびきりの笑顔を見せてくれた。


 しかし。


 ……。


 500歳かぁ……。


 みんなの実年齢を聞いていないけど聞くのは怖いな……

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