第十八話「時には出浴し、ベンチで身体を冷ますべし」③
「……源泉復活祈念祭、『湯なしでもおもてなし! フェスタ』ですか」
「そう! またの名を『なしなし祭』!」
その日の夜。結衣奈の自室に、八人の温泉むすめが集まっていた。
結衣奈が作った企画書に目を通しているのは泉海だ。結衣奈の企画を聞いて「本気なら大がかりな行事になります。関係者に企画趣旨を周知できる文書を作成すること」と言い出したのも彼女である。
泉海はA4で六枚ほどの資料に一分弱で目を通して、「……いいでしょう」と言った。
「わたくしは賛成しますわ。折良く、源泉枯渇事件の調査も中断していたところですし」
「えっ? なにかあったの?」と結衣奈は尋ねた。
「いえ。手近な文献では原因が分からなかったので、史料を取り寄せ中なのです」
「というわけで、私も手が空いたから協力するわぁー♪」
綾瀬が白手袋に包まれた右手を挙げた。
「温泉が出なくなっちゃった今こそ、みんなの知らない草津温泉を見るチャンス! ――なんて、こういう逆転の発想、お姉さん大好きよ♪」
「あんた、そのキャラが素なわけ?」
輪花がうっとうしそうに綾瀬を見た。だが、「さあ?」とはぐらかした綾瀬に妖艶な笑顔で見つめ返されると、顔を赤くして目を逸らす。
「……ま、あたしも賛成。でも、週明けから学校始まるのよね。できる範囲で協力するわ」
「つまり、有馬姉妹も全面協力するわぁー♪ って意味だよ」
「ちょっ、ふうちゃん!? 綾瀬の真似しないの!」
輪花の言葉を楓花が通訳した。輪花のうろたえ方からして図星を突かれたようだ。
『広報ならユツバにお任せーっ!♨』
「
「ユツバ(陽)」と奏はすでに意気揚々だ。
結衣奈は彩耶と那菜子と並んで、皆に「よろしくお願いします!」と頭を下げた。
「最初は驚いたけど」頭を上げて、彩耶が笑った。「思えば、すごく結衣奈らしいアイデアだよね」
「うんうん。いつも広場でやってるやつだべ」と、那菜子も微笑む。
『湯なしでもおもてなし! フェスタ』は、要するにいつも結衣奈がやっている草津節ステージをイベント化したものだった。もちろん今回のメインイベントも、湯畑にある広場で結衣奈たちが歌って踊ることである。
『色々な温泉地の温泉むすめが踊りまくりまーすっ! って広報すればいいかな? 温泉むすめを見たい人がたくさんいてくれればいいですけど……』
そう言いながら、「ユツバ(陽)」は自信なさげに「ユツバ(陰)」に切り替わった。
「確かに、ステージが草津節だけじゃ厳しいね……。あ、そうだ。私たちみんなの温泉地に伝わる神楽も取り入れよう。一般の人には滅多に見せない神楽を一気に蔵出しします! って内容なら、興味を持ってくれる人が増えるかも」
彩耶がそう提案した。『あ、それさんせーい!』と、ユツバが「(陽)」に戻った。
「ず~っと神楽だと眠くなっちゃわないかな?」と、楓花が言った。
「コンサバっぽい本格派の神楽と、ポップっぽくてノリのいい神楽でメリハリをつけた方がいいわね。たとえば、泉海と那菜子はコンサバ、あたしと彩耶はポップとか」
「ヤー! バーデンに曲を投げてくれれば一晩でアレンジしますデスよ! ギュインギュイーン!」
輪花の発案を受けて奏がエアギターを始めた。話に出た泉海は「紺鯖なんて鯖、いましたっけ」と首を傾げている。
そんな泉海を愉快そうに眺めて、綾瀬が口を開いた。
「この企画書だと開催日が次の土曜日になってるけど……。少し早くないかしら?」
「あー……実は、それは完全に個人的な理由なんだけど……」と、結衣奈は頬を掻きながら答えた。
「富美代さん……ちかやちゃんのおばあちゃんが、日曜日の朝一番に帰っちゃうんだよね」
「なるほど。素敵ね♪」
綾瀬は結衣奈にウインクした。
「――では」
そのへんで話がまとまったと判断したのか、泉海がパン、パンと手を叩いた。
「今日はちょうど土曜日。つまり、準備期間が一週間しかないということです。月曜日から師範学校も始まりますし、効率よく、全てのことを同時進行でこなしていくしかありません」
「あっ、いずみん。そのことなんだけど」
結衣奈は泉海の目をまっすぐ見つめて切り出した。これが最後の議題だ。
「わたしの転入、一週間ずらせないかな? せめて今週は草津温泉のために働きたいんだ」
「……分かりました。例外を認めたくはありませんが、スクナヒコ様に上申しておきましょう」
泉海は不本意そうに、しかしはっきりとそう言った。結衣奈は飛び上がった。
「わあ! いずみん大好き!」
「はあ……調子いいんですから……」
「わたしと彩耶ちゃんは休めないけど、『結』に泊まり込みで頑張るベ~!」
那菜子は胸の前でぐっと拳を握って気合を入れた。その足下には大きなキャリーケースがある。
同じく彩耶も、パンパンに詰まったボストンバッグを肩にかけている。
「なんてったって、結衣奈と那菜子、あと私の三人で草津節を踊るのがトリだもんね」
「うん! 彩耶ちゃん、那菜ちゃん、頑張ろうね!」と、結衣奈は力強く頷いた。
「……よし。では企画書にある分担通りに、すぐにでも動き出しましょう」
今度こそ泉海が話をまとめた。会議終了だ。
やるべきことが決まって、一同が結衣奈を見る。
「……?」
「結衣奈、号令を」と、泉海が微笑んだ。
「え、わたし?」
「ええ。あなたが総責任者です」
「そ、そう? じゃあ……えーっとえーっと、みんなありがとう!」
突然指名された結衣奈はどうしたものかと考え、なにも思い浮かばなかったので――とりあえず気合任せで天井に拳を突き上げた。
「『なしなし祭』、絶対成功させるぞーーーーっ!」
「「「「「「「『おおーーーーっ!!』」」」」」」」
♨ ♨ ♨
そこからの忙しさは、結衣奈の想像を遥かに超えていた。
内との折衝、外への広報、必要物資の調達と設営。
確かに泉海は「同時進行でやる」と言っていた。だが、まさか手続き的な作業がこれほど多いとは思わなかった。彩耶と那菜子がそばで支えてくれていなかったら、結衣奈は記憶がごちゃごちゃになってしまっていたかもしれない。
右に挙げた事項のうち、内との折衝――つまり地元の組合や町内会、議会からの協力を取り付けること――は火曜日までに目処がついた。結衣奈も会議には参加したが、泉海から「貴女は『やる気で充ち満ちています!』という表情で座っているのが仕事ですわ」と言われていたのでその通りにした。会議の内容は一割も理解できなかったが、終わったあと彩耶が要点を教えてくれた。
次いで、外への広報についても結衣奈は無力だった。なにしろ今週末のイベントである。迅速に動いて、水曜日までには広く情報が拡散していなければならない――と、ユツバが言っていた。
こればかりは飛び道具に頼らざるを得なかった。幸い、源泉枯渇という世紀の大事件のおかげで草津温泉にはそれなりに報道関係者が来ていたし、若い層に人気のユツバや輪花が内外にイベントをアピールしてくれたおかげでなんとかなった。ちなみに、那菜子は結衣奈も出演したPR動画を毎日一回ずつ見て、健気にも回数を伸ばそうとしてくれていたらしい。
物資の調達と設営に関しても結衣奈はマスコット扱いだった。理由は割愛。
以上三つの手続き的な業務の大筋がまとまり、あとは細かい調整になるからということで結衣奈が完全に解放されたのは――水曜日の夕方のことだった。
「ちょいな、ちょーいなー! ……っと」
「……うん。草津節は心配ないね」
「なんか踊るの楽しくなってきたベ」
『結』の大浴場の洗い場にある鏡には、結衣奈、彩耶、那菜子の三人が映っている。
三人で踊る草津節は完璧だ。練習を切り上げて、結衣奈は那菜子と一緒に休憩場所へ移動した。
「彩耶ちゃんと那菜ちゃん様々だよ! わたしがちょっとトチっても合わせてくれるし」
「ふふっ。いつも広場で踊る結衣奈ちゃんを見てたからだべ」
「でも、神楽はみんなソロで踊るんだよね。……すっぱ!」
結衣奈は、本来は長湯をしすぎたときに身体を冷ますために使う休憩用のベンチに座って、那菜子が配ってくれたハチミツ漬けレモンをかじった。
「わたしは泉海ちゃんと楓花ちゃんと同じで、原曲通りに踊ればいいから楽っちゃね~♪」
「本当に?」と、結衣奈はイタズラっぽく笑った。「那菜ちゃん、会議の間もこっそり神楽の振付表覚えてたよね」
「えっ!? み、見えてたべか……?」
「だーいじょうぶ。他の人には見えてなかったと思うよ」
結衣奈はレモンをおかわりした。
「でも、彩耶ちゃんほどたいへんじゃないべ」
「あはは。そうだね」
結衣奈と那菜子はそう言って洗い場に目をやる。
そこでは、彩耶がひとり残って自分の神楽の振付を確認していた。「はっ! やっ!」と短い気合の声とともに彼女の長いポニーテールがたなびく。その髪が重力にしたがって垂れ下がる暇もないほどに激しいダンスだ。
ダン! と床を鳴らして、彩耶は最後のポーズを取った。
「おお~っ!」「すごい、彩耶ちゃんかっこいいべー!」
結衣奈と那菜子は間の抜けた歓声をあげて拍手した。きりっとしていた彩耶の表情が緩む。
結衣奈はレモンを二枚取って、一枚を彩耶に差し出した。もう一枚は自分用だ。
「はあ……奏ったら、ロックにアレンジしすぎて原曲の面影が残ってないんだけど……」
彩耶は一口でレモンを食べ、「すっぱ!」と口をすぼめた。
結衣奈はまた二枚レモンをつまみ上げて一枚を彩耶に渡し、もう一枚を自分でかじる。
「でも、だいぶ仕上がってきたんじゃない? ……すっぱ!」
「いや、まだまだ。テンポが速いと細かいところがごまかせるからそう見えてるだけ」
「なるほど。でもでも、目処は立ったよね? ……すっぱ!」
「……結衣奈、わざとらしい」
彩耶がジトッとした目で結衣奈を見た。那菜子も「あはは……」と苦笑いしている。
「私の神楽が仕上がってることにしたい理由でもあるの?」
「うっ……」
「まあ、だいたい察しはついてるけどね。毎晩、奏とユツバにこそこそ連絡してたし」
「わたしたちの目は誤魔化せないっちゃね~♪」
「ううっ……!」
彩耶と那菜子の言うとおりだった。
「え、えーっと、まあ……」
結衣奈はハチミツのついた指をぺろりと舐めて目を逸らした。
その提案は、言えば絶対に反対されると自分でも分かっていた。
しかし、言うなら今夜がタイムリミットだ。でないと、練習の時間が足りなくなってしまう。
彩耶と那菜子が目を見合わせて「ふふっ」と笑う声が聞こえ――結衣奈はハッとふたりを見た。
「結衣奈――」
「いや、言う! 言います!」
またしてもふたりが結衣奈の背中を押してくれようとしている気配を感じ、結衣奈は彩耶を制止した。いつも促されてから言うのでは格好悪い。
今回の提案は、自分が責任を負いたかった。
「……実は、一曲だけ。一曲だけでいいから、みんなで新曲をやりたいの!」
結衣奈の言葉が浴室内に反響する。
彩耶と那菜子は、「その言葉、待ってました」とばかりに頷いた。
♨ ♨ ♨
「……大・反・対ですわ」
「さすがに無理があるでしょ……」
その晩。結衣奈たち温泉むすめが集まって毎晩行う定例会議にて。
親友ふたりとともにその案を開陳した結衣奈に返されたのは、泉海と輪花の冷たい視線だった。
「歌だけならともかく、踊るのよね? あと二日……土曜日入れても二日と半日しかないんだけど。どこで合わせるの?」と、輪花が眉をひそめた。
「そこはほら、みんなの神楽の動きを取り入れたダンスにするから!」
「そもそも今回の主目的は『草津温泉に来てもらうこと』ですわよね? もちろん手を抜くつもりはありませんが、わたくしたちの舞台はあくまでもその手段ですわ。舞台で新曲を披露することで、主目的に良い影響が出るというのなら賛成しますが……」と、泉海が首を傾げた。
「ある! いい影響あります! たとえば、えーっと……」
「九人みんなのメモリアルを作りたいそうデース!」
「だあーーーーっ!? バーデンちゃん、それ逆効果!」
奏がUSBメモリを指先で回しながら結衣奈の目的を暴露した。その中にはすでに完成した新曲の譜面が入っている。
「お……思い出……!?」と、泉海は信じられないといった表情で固まった。
『……あー……。泉海さん固まっちゃいましたね……』
結衣奈の作詞に協力してくれた「ユツバ(陰)」が溜息をついた。深夜、結衣奈が自室でうんうん唸りながら言葉をひねり出していたところに、珍しく彼女のほうから声をかけてきたのだ。
「『わたくしたちは、非常事態に陥った草津温泉のために協力しているのです!』♪」
「『わたくしたちの思い出作りなんて~、二の次に決まってるでしょうが~っ!』♪」
綾瀬と楓花が泉海の考えを代弁した。完全におもしろがっている。このふたりは賛成してくれているのか反対しているのか分からなかった。
「振り付けだけじゃないわ。衣装はどうするの? 不揃いな格好でステージに立つなんて、あたしが絶対に許さないわよ」
読者モデルのプライドを覗かせて輪花が言った。
「師範学校の制服じゃダメかな? 前にいずみんが着てたやつ」と、結衣奈が提案した。
「あの服、ステージ映えするかしら……」
輪花は腕を組んで考え込んだ。泉海はまだ硬直している。
旗色が悪いのを感じ取って、彩耶と那菜子が慌てたように助け船を出した。
「ま、まあ、そこはなんとかするよ。ね、那菜子」
「だべだべ! そこはなんとかするっちゃね~!」
「全員参加でやるかどうかは置いておいて、私、結衣奈、那菜子の三人でもやるつもりで練習しておくよ。曲順は……やるとしたら最後か、最後の草津節の前かな」
「……彩耶、あんた大丈夫? 神楽も結構重いんじゃないの?」
強引に話を進めようとした彩耶を輪花が睨んだ。
「あはは、大丈夫。睡眠時間を削ったりはしないから」
彩耶はひらひらと左手を振って、輪花を安心させるように笑った。
その左手が――一瞬だけもみあげを弄ろうとしたことに、結衣奈は気付かなかった。
「とりあえず、データだけは配っておくっちゃね~。輪花ちゃんも泉海ちゃんも、聴くだけ聴いておいてほしいべ」
那菜子がのほほんと言って全員にUSBメモリ(泉海のはカセットテープ)を渡し始めた。輪花と泉海も「ったくもう……」「受け取るだけですわよ」と唇を尖らせつつも受け取る。
那菜子のほんわかオーラのなせる業だなあと結衣奈は思った。
「みんな……無茶ばっかり言ってごめん! でも、もしよかったらお願いします!」
結衣奈ががばっと頭を下げて――その日の会議はお開きになった。
♨ ♨ ♨
『なしなし祭』の準備自体は順調に進んだ。
なにより土日の宿泊客数が目標に達したのは最上の連絡だった。さすがにどの旅館も満員御礼というわけにはいかなかったものの、ユツバや輪花のファン層にはネット上での発信力のある人もいるし、既存メディアの取材申し込みも想定通りに増えていた。
「その土日だけ人が増えても意味がないですわ」とは泉海の言である。祭に来てくれた人がクチコミを広め、源泉が枯れていても草津は楽しめるということが理解され、イベントがなくてもお客さんが来てくれるようになる。『なしなし祭』はその第一歩だ。
結衣奈も地元の人々も、そのことを充分に分かって動いていた。最後の調整で草津中を走り回る結衣奈を激励する声が数多く届いた。温泉まんじゅう屋の檜ちゃんなどは、『結』の大浴場で練習中の結衣奈に差し入れを持ってきてくれて、「絶対に成功させましょうね!」と言ってくれた。
草津温泉に、湯けむりのような期待感が満ち始めていた。
そして、イベント前日の――金曜日の夜。
結衣奈は、完成したステージの壇上から湯畑を眺めていた。
『なしなし祭』のリハーサルのため、湯畑は一週間ぶりにライトアップされている。準備期間中にどこかの源泉が甦るといったこともなく、いまなお湯畑は沈黙している。
「見ててね、湯畑」と、結衣奈は呟いた。
「あなたが戻ってくるまでわたしたち頑張るから! 明日はその決意表明ってことで!」
結衣奈は湯畑に向かってびしっと宣言すると、満足してステージを下りた。
今日は早めに寝ようと思って家路を急ぐ。すると、草津湯根神社の石段の下で、ちかやと富美代が結衣奈を待っていた。
「ちかやちゃん! 富美代さん!」
「夜分遅くにすみませんねえ。この子がどうしてもご挨拶したいって聞かなくて」
「そんな、とんでもないです! 力になります!」
「……おねえちゃん、ちょっとつかれてる?」
「あはは。確かに疲れてるかも。一週間も温泉に入らないなんて、人生で初めてだもん」
――『ガタガタッ!』
「おわっ!?」
絶妙のタイミングでスマホから振動音がしたので、結衣奈は驚いてしまった。
スマホを引っ張り出すと、「ユツバ」のアバターがすやすやと眠っている。二次元アイドルも寝返りするんだなあ、と結衣奈は笑った。
「……がんばってね、おねえちゃん」
ちかやは少し早口で言った。たぶん結衣奈を早く家に帰してあげようとしているのだろう。
「うん、頑張る! ありがとう!」
「明日、この子と一緒にお邪魔しますね」
「はい。ありがとうございます! 最高のステージをお見せしますね!」
結衣奈はそう言って、再びちかやと指切りをした。
――湯けむりのような期待感が、確信に変わっていく。
ふたりと別れた結衣奈は、湯根神社の賽銭箱に温泉まんじゅう代の九〇円を突っ込んで拝んだ。
そして再び走り出し、『結』で待ってくれているふたりの親友のもとへ向かう。
シャクナゲの林を抜け、坂道を駆け下りると、落ち着いた佇まいの目的地が見えてくる。
その門前には、いつものように親友の影が――ひとつ。
「……あれっ? おーい、那菜ちゃーん!」
ひとり足りない。
結衣奈は首を傾げ、那菜子に駆け寄っていく。
結衣奈を見つけた那菜子が真っ青な顔で駆け寄ってきた。
「結衣奈ちゃん!」
「な、那菜ちゃん……?」
那菜子は結衣奈の肩に縋り付いた。そうしないと立っていられない様子だった。
彼女の脚は震え、目尻には涙が溜まっている。
那菜子は鼻水混じりの涙声で――悲鳴のように言った。
「彩耶ちゃんが……彩耶ちゃんが突然倒れちゃって……っ!」
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