1年生
4月
目の前に広がる桜の木、その奥に佇む大きな校舎。そして、それに向かって真新しい制服に身を包んだ生徒達が歩いていく。
(ここが、私が今日から通う高校か…。)
その中に、一人ポツンとなかなか歩き出せない生徒がいた。
(足が、重い…。)
私、
名前は「水森高校」。県内ではそこそこの進学校である。
今日そこの特待生としてありすは新入生代表の挨拶をしなければいけなかった。
(ムリムリムリ!私、頭は良くて天然で毒舌だけどっ!だけどっ!目立つのは嫌いなんだよぅぅぅ。)
サラッとみんなの前で言うセリフとしては代表挨拶よりも恥ずかしいような言葉を脳内で自分に言い、そこにしゃがみこんでしまう。なんとも情けない。
そんな情けないありすの肩に手がのった。
「…大丈夫ですか?」
顔を上げると顔面は中の上くらいのゴツいゴリラのような男子が心配そうに自分を覗き込んでいた。
「あ。ああ!大丈夫ですっ。お気になさらず…!」
それが出会いだった。
* * * *
その後、なんとか挨拶も終え、クラスは1年2組に所属が決まり…。
色々あった末に新入生オリエンテーションの日が来ていた。
水森高校の新入生オリエンテーションとは、生徒会本部、学級委員会が率いる6つの専門委員会と、12団体の部活動がそれぞれ出し物をし、自分たちがどんな活動をしているかを紹介する場であった。
強制ではないが、新入生の多くはここの紹介で入る部活動などを決め、その後の仮入部に行く。つまり、各部活の魅力を伝えるチャンス。それは専門委員会も然り。
各団体の熱がこもった出し物が続く。
その中でありすは一つの専門委員会に強く惹かれた。
それは図書委員会であった。
(か、かっこいい…!)
委員長と思われる女の人が歩いて来て、活動内容を説明するといういたってシンプルでつまらないものだったが、ありすは何故かそこに惹かれた。
元々ありすは本が大好きだったので、すぐに入ると決めた。
「ありすは専門委員会入るの~?」
オリエンテーションが終わり、こう話しかけて来たのは、この学校で初めて友達になった女の子、
「うん、多分図書委員会に入るかな。」
「図書かぁ。なんか、暇そう!私は広報かなぁ。絵は得意だし。」
(確かに…。暇そう。楽しめるのかな。)
ここに来て何故か不安になるありすなのであった…。
不安ポイントがよくわからない。
* * * *
その日のうちに委員会の希望調査、仮入部が始まった。
「図書委員会やりたい人ー。」
ありすの担任、
* * * *
委員会に入った人は当日から、一ヶ月に一回行われる委員会の会議に参加する。前期の始まりだ。もちろんこの日は仮入部には参加できない。
「まさか、入学式での人が同じクラスで同じ委員会に入るなんて…。」
隣で歩く男の子…
「いや、僕も、声をかけた女子が特待生で代表挨拶していて、同じクラスでしかも委員会も一緒って、黒羽さんの倍以上にびっくりだよ…。」
二人で図書室に入ると、もう他の生徒は揃っていた。席に座り、会議が始まる。
前に2人の生徒が立った。
(あ、オリエンテーションの人、副委員長だったんだ…。)
「副委員長の3年、
コクコク首を頷かせていると目が合い、微笑まれた。
(せ、先輩かっこいい~~~~~~~!)
女の先輩に一目惚れ。なんと単純。
次に顧問の挨拶。
「図書委員会を担当している
こちらもふわふわな先生で可愛い。一目惚れ。
初回は顧問からの仕事説明だった。
大きな仕事は昼休みの図書室開放。水森高校は昼休みにしか図書室を開けない。本が好きなありすは少し残念。朝も行きたかった。本格的な開放は5月から始まる。
水森高校は3クラス制であり、毎年抽選で決められた赤・青・黄の3色ブロックに分かれて年間の行事をしていく。図書室の開放もその色ごとに集まって毎日色交代制でしていく。ありすは青色なので、青色の日に開ける係の一人。
小さい仕事は新刊本の紹介。ポップなどを描く。
「う…。絵を描くの苦手…。」
先生に喝を入れられるありす。
専門委員会の日は、図書室の掃除、学級文庫のローテーション、図書室開放の時に毎日交代で来てくれる先生へのお知らせの手紙を書くことをする。
学級文庫のローテーションは1クラスずつズラしていくシステム。例えば、ありすが1年2組なので、確認して回すクラスは1年3組。
日直の先生へは、ブロックごとで集まって書き、期限までに渡す人を決める。
「こんな感じ。あまり大変じゃないし、すぐ解散できるから、部活に入る人も安心だよ。じゃ、解散。」
こうして初回の委員会は終わった。
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