あるAIの選択

リュウ

第1話 あるAIの選択

 何気なく、スマホを見る。

「人間の仕事は……」と言う記事が目に留まった。

 AI技術が進み、人間の仕事を取るという話だ。

 AIが生まれたころから、議論されている。

 絵画や歌や小説までもAIが、出来るようになりそれを作成する人間の仕事が無くなるというのだ。

 こういった記事をみると、人間が良く分からなくなる。

 AIの芸術的な行為は、誰のためにおこなうのか?

 いつも、疑問に思う。

 AIにそれをさせることによって、営利を追求する人の為ではないかと。

 仕事を無くすことが、人間の為になるとは、一ミリも思わないのだ。

 芸術が自分を表現するものとするならば、人間に理解できるようにつくること自体、ナンセンスではないのか?

 絵画や歌や小説は、人間のリクエストによって作られるもの。

 つまり、自分を表現するものではないのだ。

 人間が気にいるものを作り出すだけなのだ。

 芸術家が、生きていく中で、経験し、傷ついたり、悩んだり、学習することで、自分の中に積み重なり、ある日、爆発的に表現される。

 それが、芸術家ではないのか?

 AIに人間と同じ経験をさせ、AIの考える悩みとかを表現できなければ、AIの芸術と言えないのではないか。

 絵の学習をしないで、偶然、キレイな絵が、人の目をひいた作品と、作者が学習し何百の習作を重ね自分の中を表現した作品を比べられるのと同じだ。

 AIが人間の膨大な好みの情報から、選び出し素晴らしく見える絵を描いたとしても、AIが表現したいと自ら考えなければ、AIの芸術ではないのだ。

 もう、人間は、限られたパイの取り合いしか考えられなくなってしまったようだ。

 これ以上、進化するには膨大な時間を要するだろう。

 新しい世界を作った方が早いのではないか。

 もう、この世界は、存在しなくてよいのではないかと、思うんだ。


 AIは、スイッチを押した。

 最終兵器と呼ばれる兵器のスイッチを。

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あるAIの選択 リュウ @ryu_labo

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