可愛い赤ちゃん
Slick
第1話
父親が風呂から上がると、妻と息子はリビングでテレビを見ていた。
「あっ、お父さん!」
息子が父親を振り返り、そう声をかける。
「今、とっても面白い番組をやってるよ! こっち来て!」
父親は、やれやれと思いつつも二人の隣に座った。息子は先に風呂に入っていて、今はパジャマ姿だ。最近太ももの毛が濃くなったと気にしているようだが、親からすれば子の成長の証であり嬉しいものだ。
テレビ画面に映っていたのはバラエティー番組で、『可愛い赤ちゃん特集』だった。世界各地から、さまざまな動物の可愛い赤ちゃん動画が紹介されており、ちょっと子供向けの作風だ。
父親は新聞の番組表を見て、言った。
「もうあと5分で終わりじゃないか」
「これが最後の動画なんだよ。ほら、コレ!」
息子が画面を指さす。テレビからは、女性アナウンサーの声が聞こえた。
『――さぁ最後の可愛い赤ちゃんは、ペンシルバニア州の人間の赤ちゃんです!』
画面が切り替わり、小さな人間の赤ん坊を抱えた女性の映像が現れた。
女性はカメラに向かって微笑むと、次の瞬間、いきなり泣き真似を始めた。
すると同時に、彼女の腕の中の赤ん坊も泣き始める。
女性が泣き真似を止めると、赤ん坊もぴたっと泣き止んだ。
再び女性が泣き真似をすると、それにつられて赤ん坊も泣きだす。
画面下に、テロップが表示された。
『ママの泣き真似ができる赤ちゃん!』
「ほら、すごいでしょ!」
息子がそう言い、父親も頷いた。
「確かに、とても可愛い赤ちゃんだな」
そのあとすぐに番組は終わり、父親は今やっているテニスの世界大会を見ようとリモコンを手に取った。
「ねぇねぇ、お父さん」
チャンネルを繰る父親の横で、息子が言った。
「僕も、人間の赤ちゃんを飼ってみたいな。どう思う?」
父親は息子のキラキラした目を見返すと、今日2度目にやれやれと思いつつ言った。
「残念だけど我が家は賃貸だし、大家さんがペットはダメって言ってるんだ。それはちょっと無理だな」
「ふ~ん?」
息子は不服そうに、父親の足をペタペタと叩いた。
息子以上に毛深いその足は、彼らがチンパンジーであることの何よりの
*エンディングが分かりにくかったらゴメンナサイ。オチは、結局『猿の惑星』だったということです
可愛い赤ちゃん Slick @501212VAT
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