第12話 授かったスキルは凡庸で⑫
「ただいま」
カイは家に帰ると挨拶をするが誰もいないので反応はない。返事を期待してのことではなく、なんとなく帰った気がするので言うようにしていた
(今日も畑仕事はお休みだったっけ)
昨日に続き、今日は神授の儀のためにお休みであった
本当は、手伝いに行こうと思っていたのだがとてもそんな気分ではなかった
ぐぅ
少し落ち着いたからか、お腹が食事を欲する音をさせる
(何か食べよ)
気持ちを切り替えるためにも食事を摂ろうとしたカイは食品棚にしまっていた芋をひとつ取り出し、焼き始めたのだった
〜〜〜〜〜少し時間は遡り、教会前〜〜〜〜〜
マリーを囲んで町の人たちが熱狂していた。
(なんで!なんであたしがこんなにすごいスキルを授かっちゃったの!?しかも2つも!!)
名誉だとは思うがマリーにとっては困惑しかない
動揺しているマリーにザイルが近づく
「すごいな!マリー!!おめでとう!!」
ランク5のスキルを授かりたがっていたザイルだが悔しそうな顔も見せずに心の底から祝福する
「あ、ありがとう」
こんなスキルいらないって言いたかったがザイルの気持ちを考えるとお礼しか言えなかった
「早く父ちゃん母ちゃんに結果を教えたいからまたな、マリー」
「あ・・・」
そう言うとザイルはマリーの返事も聞かずに家に向かって駆けていった
ザイルのそばにリックがいないということは自分の希望のスキルを手に入れたことが嬉しくて家に帰ってしまったのだろう
(カイは落ち込んでそうだったわね)
マリーのすぐ後に、教会からカイが出てきたのは視界に入っていた。
カイはマリーに話しかけようとしたがマリーの周りを人が囲んでいたため諦めて家の方に向かっていったという事情は理解していた
(あたしもここを離れよう)
少しだけ落ち着きを取り戻し、このままここにいても状況は変わらないことに漸く気づいたマリーは
「すみません。通してください!!」
大きな声を出して人波を掻き分けて出ていく
(カイに会いたい)
落ち着いてきたら今度は不安がぶり返してきた。昨夜のように安心させてほしいマリーはカイの家に向かって歩き出した。
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