第6話 授かったスキルは凡庸で⑥

「あ、カイっ!」


教会の中に入ると子どもたちが楽しそうにおしゃべりしながら待機していた。今年の5歳になる子どもは全員でたしか13人であったはず。その中から、手を振りながら女の子が走ってくる


「マリー、おはよう!」


「うん。おはよう!!」


カイの挨拶に元気に返すマリー。少しためらってから


「・・・昨日、ありがとね」


マリーが顔を少し赤くしてお礼をいう


「・・・ううん。気にしないで」


(かわいいなぁ)


カイは自分の顔が火照るのを感じた


「・・・」


「・・・」


「お、カイ!やっときたな!!」


マリーとカイが何も言えずに沈黙しているとザイルも近づいてきた。

後ろにはリックもいる


「おはよう、カイ」


「おはよう!リック」


「二人してなぁに黙ってたんだ?」


「「!?」」


「「な、なんでもないよ」」


ザイルの珍しい指摘に、マリーとカイはドキッとしてから二人揃って同じことを言う。

それに気づいた二人は顔を見合わせてから


「「ぷっ!あはははは!!」」


同時に笑い出した


「へんなの」


ザイルがそんな二人を見てつぶやくのだった







「みんなは昨日寝れた?」


落ち着きを取り戻したマリーがみんなに聞く


「俺は、楽しみ過ぎてあんまり寝れなかった!」


ほとんど寝てないはずなのにザイルは元気そうに答える


「ザイルらしいね。リックは?」


「・・・ぼくもあんまり寝れなかった」


ザイルとは対照的にリックは眠そうにしている


「ここにいるみんなはほとんど寝不足なんじゃないかな」


カイが周りを見渡すと、楽しそうに話しながらも時折、あくびをしている子どもが目に入る


「そうよね」


マリーも見渡しながら苦笑する


「あ~、早く始まんねぇかなぁ」


ザイルがつぶやく


「・・・ぼくもそう思う」


リックも同意する

ザイルとリックは一緒に行動することが多い。対照的な二人だが家が近所ということももちろんあるが、根本的な考えが似ているところもあるのだろう。



ゴーン ゴーン ゴーン



話をしていると教会に付いている大きな鐘がなる音が響いた


「さあみんな!お待ちかねの神授の儀が始まりますよ!元の位置に戻ってくださいね」


レイチェルが子どもたちに向かって着席を促す


最後に来たカイは一番後ろに座り、姿勢を正す



ちりん ちりん



そうすると鈴を鳴らす音が段々と近づいてきた

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