第3話 授かったスキルは凡庸で③

「不安って?」


今にも震えだしそうなようすのマリーにカイが当たり障りの無い言葉をかける


「・・・」


俯いて水の入ったカップを見たまま言おうかどうか躊躇ってるマリーにカイは近づき両肩に手を置く


「!?」


驚いたマリーが顔を上げると目の前には真剣な顔をしたカイの顔があった

途端に顔が火照ってくるのをマリーは感じる


「マリーやマリーのお父さん、マリーのお母さんにはとても大きな恩があるんだ。こんな身寄りのないぼくに親切にしてくれた。みんながいなかったらぼくはあの日から生きてこれなかったと思う。だからせめてマリーの不安が和らぐためのお手伝いをさせてよ」


「・・・ありがとう」


マリーはカイの言葉に落ち着き、意を決する


「あしたの神授の儀でもしあたしやカイが高いランクのスキルを授かって離ればなれになってしまったらと思うと不安で仕方がないの」


よほど不安なのかマリーの目に涙が浮かぶ


思いがけない言葉にカイはキョトンとして


「あはははは」


お腹を抱えて笑い出した


「ちょっと、ひどくない!?」


まさか笑われると思わなかったマリーは笑い出したカイをにらむ


「ごめん、ごめん。あんまりにも変なことを言うからおかしくて」


「なんでよ、カイはあたしと離ればなれでも平気なの?」


今度は拗ねたように頰を膨らませてマリーが尋ねる


カイは一呼吸いれて落ち着いてから


「もちろん平気じゃないけど、そんな可能性ほとんどなくない?」


「っ!?どうして?」


平気じゃないとすんなりと答えてくれたカイに動揺してもののすぐにごまかすように尋ねる


「だってさ、離ればなれになるのってランク4以上のスキルが出たときでしょ?僕らの町から出た人なんて今までかぞえるくらいしかいないらしい」


「そうなの?でももしかしたらってあるじゃない?」


マリーはカイのあっけらかんとした言葉にある程度落ち着きを取り戻したが、不安がまだ残っている様子だ


「うーん」


カイはどのようにしてマリーの不安を取り除くか考え、いいアイディアが浮かんだのかぽんっと手を叩いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る