第2話 授かったスキルは凡庸で②
「きょうも楽しかったなぁ」
あのあとも球遊びにあけくれ、カイは自分の家に帰ってきた
まるで山小屋のようなこじんまりした家で、中は一部屋しかなく、簡単な厨房があるくらいであった
行商人をしていたカイの両親はアウルの町に荷物を運んでいる途中で盗賊に襲われカイが3歳のころに亡くなった。カイ自身も危なかったがたまたま近くで野営していた冒険者に命を救われ、不憫に思ったアウルの町長の計らいで今の家で暮らしている
一日の大半はご近所さんの畑の手伝いをして何とか生活している状況で、今日は久しぶりの休みだったので友だちと遊び惚けたのだった
「あしたの神授の儀に遅れないように早く寝ないといけないな」
町にある教会に年に一度、神の力が神官に宿り、集められた齢5歳の子どもたちに対してスキルが与えられる。これを神授の儀と呼び古来から続けられてきた
スキルにより、人生そのものが変わるためこの時期になると子どもの親も含め全ての人のテンションが高まる
「早めに終わらせて、畑の手伝いにいかないとな」
ただし、現状に満足しているカイは例外のようだ
淡々といつものように湯を沸かし、体を拭き、簡単な料理をして食べた後、早々に寝床について目をつぶるのだった
・・・コンコン
夜もふけた頃、おもむろに扉をノックする音が響く
「・・・ん?」
物音に敏感なカイが目を覚ますと扉に近づいた
「誰かいるの?」
普段なら全く警戒しないが、今は夜中。さすがにすぐには扉を開けずに扉の向こうにいるであろう人に向かって声をかける
「夜遅くにごめんね。少し話せないかな?」
「マリー?」
「うん」
友だちだと分かり扉を開けると部屋着のままのマリーが1人で立っていた
「ここじゃなんだし、どうぞ」
「ありがと。おじゃまします」
カイがマリーを招き入れる
「はい、お水」
「ありがと」
こじんまりしたテーブルにマリーを座らせ、水を差し出すカイ。
マリーが水を一口飲み、落ち着いた頃合を見計らってカイが質問をする
「こんな夜中にどうしたの?」
「・・・あしたのことが不安で眠れなくて、、、カイなら話相手になってくれるかもと思ってきちゃったの」
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