第4話
緑の
美しい森に包まれた王国は、今日も生き物たちが、逃げ回る。
「俺がこの地を黄金に染めてやるよ!」
森の中、走り回る黄金の
己の部下を連れ、森の中を荒らしていく。
「そらそら出てこなくていいのか。森の中はどんどん荒んでいく。俺がすべてを、破壊し続けよう」
森の木々たちに剣を立てる兵士たち。頭上から鎖が飛び交い、兵士たちの首を飛び跳ねらせる。
木の上に姿を現したのは両目を包帯で隠す緑の
両手に持つ鎖は緑色に染まり、その下で妖しい笑みを見せる王を見た。
「俺の縄張りで何をしている」
「見りゃわかるだろう?殺しあさっているのさ」
「俺の森で大人しくできねぇ奴は、今すぐ死ね!」
「クケケケッ!」
二人の王がぶつかり合う。拳、剣、鎖、様々な武器が飛び交い、辺りにいた兵士たちを巻き込む。
嗚呼、彼らは気付いていない。その周りが、緑と黄金で染められ上げていくことに。
「俺は静寂を愛する者。俺の静寂はこの国のルールだ」
「知るか」
「お前のような下劣な奴と一緒にされてたまるか」
「俺がお前を昇天させてやろうか?」
「死ね」
「照れんなよぉ。今すぐあの世に送ってやるよォ!」
振り回す 振り回す 振り回す
鎖が宙を舞う
振り払う 振り払う 振り払う
拳が鎖を叩き落す
お互いどちらかが死ぬまで、どちらかを殺すまで、戦いは永遠と続けられる。
しかし、それは突如として止められた。
彼らの前に突如現れたのは金色の髪をした少女。
白色の瞳で彼らの姿を見た少女は、悲鳴を上げた。
「なんて恐ろしい人たちなの!」
その場を走り去る少女。
それを見て、王たちはぴたりと戦いを止めた。
「なぁ、みたか?」
「おお、見たぞ」
「あれはなんだ?」
「お前の国の女か?」
「俺の支配下にあんな女は居ない」
「更にあの目は」
『白く輝いていた』
言うまでもなく、王たちは走り始めていた。
少女を追い、駆け足で森を駆けていく。
しかしどこを走っても少女は見当たらない。何故だ?
気付いた時には、彼らは白い大地の前に立っていた。
この先には入れない。それは暗黙の了解。しかし、黄金の王は好奇心であふれていた。
追いかけてきた兵士の背中を押し、白い大地の靄の中へと入れた。
そして、秒で聞こえてきたのは、悲鳴。
何かがへし折られる音。何かが蠢く音。それだけで、その場にいた者が息を飲んだ。
「……まさか、な」
ここはすべてを拒絶する無の大地。
ここから誰かが出てくるなんて初めてだった。
「おい、緑の王」
「なんだ、黄金の王」
「ここは手を引いてこの場所を見張ろう」
「奇遇だな、俺も同じことを考えた。ただし、同胞なんて言ったら即刻に殺す」
「全く持って同じことを考えた」
そして二人はその場を後にした。
何かが変化し始めている。そう感じたのはどちらも同じ。
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