第25話 王族
「王たちを一刻も早く脱出させるのだぁ! 急げっ!」
おおう、迫真の演技であるな。 最後の演出としては中々なのである。
「はっはっはっ! もう後が無いのである!」
「ちくしょうっ! 何としても王族だけは護ってみせるぞっ!」
迫真の演技につられて、我もノリノリで
「ほぅ、我の行く手を阻むであるか。 余程に死にたいらしいな」
「時間稼ぎが出来るのであれば、この命すら惜しみはしない!」
「何秒もつであるかな?」
「来いっ!」
「ふん!」
「うぎゃぁぁぁ~っ!」
おう、切られ役も中々であるな。 悲壮感がビシバシと伝わって来るのである。
「口先だけであったな。 わっはっはっ!」
「もうお
ガヤの演技も最高である。 本当に絶望したかの様な演技は
我は後宮のセットへとズカズカと進んでいく。 途中に足止め役が数人現れては消えていくと言う細かな演出を堪能しながら、ついにクライマックスとも言える場面に遭遇した。
派手な
「なっ、名を聞こう」
「アビスである!」
我の名前を確認するとは、やはり審査で間違っていなかったようであるな。 ならば最後まで演技に付き合うのである。
「もう後が無いのである!
「ふっ、ワシが死んでも息子のレオニダスがいる限り、我が王国は不滅である!」
「ならばその息子とやらも後で
「やらせはせん! やらせはせんぞぉぉぉ~っ! 者共、奴を打ち倒した者には
だが
我はワザと1人ずつ切り伏せて、王役へと近付いて行く。 うむ、絶望に染まっていく演技の迫真であるな。
「くっ、近衛騎士団ですら役には立たぬか。 だがレオニダスが落ち延びる時間は
「
「悪魔めっ!」
ややもすると、金属鎧は1人もいなくなった。
「もう終わりであるな」
「時間は稼げた、もうワシは逃げも隠れもせん。 いつかは我が息子が、貴様を地獄へと送ってくれるであろうよっ!」
「ならば死ぬのである!」
そう言って王役を切り捨てて、周囲を見回す。 アレ? 審査員が残っていないのである。
「しまったのである!」
失敗であるな。 もしかして審査員もぶっ飛ばしてしまったのであろうか?
いや待て。 そう言えば息子がどうのとか言っていたのである。 ここは追跡イベントの発生であろうか?
でもどうする? 何処に王子がいるのか判らないのであるな。
「ぬぅ、困ったのである」
何かヒントを言っていなかってであろうか? そう言えば落ち延びるとか何とか?
落ち延びると言えば、他の都市や国などに逃げる事であるな。 時間稼ぎがどうのこうのとかも言っていた事であるし。
ならば、一応この城を吹き飛ばして周囲を確認すべきであろうか? まあ最悪、この都市から脱出する集団を見つければ良いだけであるしな。
「テラ・エクスプロージョン!」
丁度、城全体を吹き飛ばす程度に威力を制限し、辺りを見回してみる。 うむ、王子役っぽい死体は見つからないのであるな。
「フライ!」
我
まあ当然か、これだけ大掛かりなセットなのである。 誰がエキストラで誰が審査員かは知らないが、雰囲気は伝わってくるのである。
頭を抱えて
いや、待て。 こうなると、この都市を放棄して逃げ出す者たちで
ならば同じ様にこの都市から出て行く王子役を見つけるのが困難になるのである。
最終試験であろうか? 中々の高難易度であるな。
我は更に高度を上げ、都市を脱出しようとする人々を見守る。 ぬぅ、少しずつであるが門の周囲に人が集まり始めているのである。
ぬぅ、どうすれば良いのであろうか? 困ったのであるな。
通常の我であれば、大臣たちに意見を訊くのであるが今の我は1人である。
いや、いるではないか。 少し
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