第24話 城

「ここより先は通さないぞっ!」

「どくのである!」


 ある方向へ進もうとすると、歓迎が激しくなるのである。 どうやらメイン会場はこちらである様であるな。


 その歓迎を案内として進んで行くと大きな門があった。 どうやら正解であるな。


 さらには歓迎のエキストラが今までの数倍はいたのである。


「押し通るのである」

「誰がさせるかよっ! 朱雀騎士団すざくきしだん、前へ!」


 おう、今度は紅いのが出てきたのであるな。 はてさて、以前よりは奮戦を期待するのである。


「テロリストよ、ここまでだっ! ここより先は、我ら朱雀騎士団がお相手する!」

「いざ、行くのである!」


 今回の紅いのは気合が入っているのであるな。 ならば我も少し本気を出すのである。


「ウインドカッター!」

「うぎゃぁぁぁ~っ!」


 あれ? 何だかミジン切りになってしまったのである。 失敗であるな。 もう少し手加減すれば良かったのである。


「ばっ、馬鹿なっ! 朱雀騎士団が全滅だとぉ! 何としてでもココを死守するのだっ! 宮廷魔導士にも応援を頼めっ!」


 中々の演技力であるな。 まるで本気で焦っているかの様に見えるのである。


 ならば我も付き合うべきであろうな。


「ふっふっふっ。 もう後が無い様ではないか。 それで我を止められるとでも思っているのであるか?」

五月蝿うるさいっ! 我々は命を掛けて貴様を足止めする。 死兵となりて貴様に一矢報いっしむくいてくれようぞっ!」


 おおぅ、迫真の演義であるな。 ならば我は悪役に徹するのである。


「ふっ、虫ケラめ。 どの程度の時間稼ぎが出来るか見てやろう」

「来いっ!」


 我は渾身の力を込める振りをして半分位の力で剣を振るう。


「てい!」

「うぎゃぁぁぁ~っ!」


 あれ? あれれ? ここから手に汗握る死闘の演義が始まるのではないのであるか?


「おーい、さっさと死合うのである」


 ダメだ、返事が無い。 ただの屍の様である。


 ふぅ、見なかった事にするのである。


 瓦礫がれきとなった門をくぐり、先にある建造物を見上げる。


「うむ。 立派なセットであるな。 まるで本物の城に見えるのである」


「エクスプロージョン!」

「ん?」


 爆裂の魔術であるな。 それが我を攻撃しているのである。 とは言え初級の爆裂魔術であるからノーダメージなのであるがな。


 少し我に気を遣い過ぎなのである。 少々怪我をしても楽しみたいので、もう少し派手目な魔術で攻撃して欲しいのであるがな。


 仕方がない、ここは我が手本を見せるとしよう。


「ギガ・エクスプロージョン!」

「ぎょぇぇぇ~っ! お助けぇぇぇ~っ!」


 あっ、折角のセットが半分ほど吹き飛んでしまったのである。 そうか、だから手加減していたのであるな。 失敗、失敗。


「この城はもうダメだ。 王族を避難させるために後宮にいる近衛騎士団に伝令をだせっ!」

「もう終わりだぁぁぁ~っ!」


「ぬぅ」


 もうこれで歓迎会は終了なのであろうか? 出来れば近衛師団とか言う連中とも戦ってみたかったのであるがな。


 いや、違う。 これは次は近衛師団との戦いであると、親切に教えてくれているのであろう。 ならばその申し出は受けねばなるまい。


「ほう、近衛騎士団であるか。 後宮にいるのであるな」

「しまったぁぁぁ~っ!」


 芸が細かいであるな。 ならば我も乗っておこう。


「はっはっはっ! 後宮までの道筋に、我をはばむ者は残っているのであるか?」

「ぶっ、文官だって最低限の訓練は受けているのだ。 時間稼ぎくらいはしてみせる!」


 おおぅ、今度は非戦闘員の投入であるか。 まるで本当の落日みたいではあるまいか!


 しかし流石に文官と戦うのは忍びないので、魔力と覇気で吹き飛ばすのである。


「ふん!」

「ぎゃぁぁぁ~っ!」


 あれ? あれれ? あれれれれ? 吹き飛ばされた文官たちがピクリとも動かないのである。


「おーい、演義が過剰過ぎるのである」


 返事が無い。 ただの屍に見えてしまうのである。


 迫真の演義である事だな。


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