第23話 騎士団

 玄武げんぶ騎士団とか名乗っている連中は特別審査員であろうか?


 であっても我のする事は変わらないのである。 やはりここでもパフォーマンスとしてデコピン連打を披露ひろうするのが良いであろう。


 ピン! ピン! ピピピン!


「ぎゃばっ!」「ぐへっ!」「ぐふぉっ!」


 ぬぅ、今度の連中は金属鎧きんぞくよろいを着ている関係か、デコピンを喰らっても立ち上がってくるのである。 これはデコピン以外のパフォーマンスを見せる必要があるのであろうか?


 ならば、今度は張り手でパフォーマンスをするのである。


 ブン!


「うぎゃっ!」 ゴキッ!


 おや? 何だか首が変な方向を向いているのである。 


 マズイ、マズイであるな。 殺してしまっては大会出場が危ぶまれてしまうのである。


「ダークヒール!」


 ぬぅ、起き上がって来ないのである。


「やろう! デビッドのかたきだぁぁぁ~っ!」

「待つのである! 悲しい事故なのである!」

「うるせぇ! 死ねっ! 死ねっ! 死ねっ!」


 ぬぅ、完全に失敗であるな。 こうなってしまっては大会出場は無理であろうな。


 とは言え素直すなおに帰して貰えなさそうな雰囲気でもあるので、大会出場の代わりに少し暴れるのである。


 まあ審査員をするくらいであるから、少しは腕は立つ可能性もあろうからな。


「ぬうぉぉぉ~っ! 悲しみの爆裂拳なのである!」


 流石にもうパフォーマンスではないので、拳を振るう。 まあ相手は死ぬかも知れないのであるが、我の悲しみを慰めるために散ってもらうとしよう。


「ほわたたたたたたたたたぁ~っ! ほわたぁ!」


「ぎゃぁぁぁ~っ!」

「うぎゃぁぁぁ~っ!」

「どひゃぁぁぁ~っ!」


 金属鎧たちが噴水の様に舞い上がり、血飛沫ちしぶきが地面を染める。 ぬぅ、むなしいであるな。


「このままでは玄武騎士団が全滅してしまうぞ! 青龍せいりゅう騎士団と白虎びゃっこ騎士団にも応援を頼め! 朱雀すざく騎士団は近衛騎士団と王族の護衛だ!」


 何であろうか? 満たされない我のために審査員を増員してくれるのであろうか?


「青龍騎士団参上!」

「白虎騎士団参上!」


「我ら四神騎士団が、王都の平和を守り抜く!」


 おおう、気合が入っているのであるな。 こう言ったサービスは大歓迎である。


 特に青い金属鎧を着ている連中は真剣な眼差しで、攻めを担当する様であるな。 ついでの白い鎧はサポートに回るようである。


「参るのである!」

「来やがれっ! 犯罪者は我らが決して許しはしない!」


 おおぅ、燃えているのであるな。 ならば我も少しばかりは本気で行くべきであろう。


 腰のアダマンタイトの剣を引き抜き、少し過剰ぎみに魔力を注ぐ。 すると内に貯めきれなくなった魔力が稲妻いなずまとなって、周囲に飛び散り始めた。


 ふむ、急拵きゅうごしらえとは言え悪くはないのであるな。 愛剣であるレバンテインには及ばないが、我の力をある程度とは言え受け止められるのであるから中々のモノである。


「おい、流石にアレはマズイぞっ! あんなモノを使われては王都が崩壊してしまう」

「聖剣の勇者はどうした? アレに対抗出来るのは聖剣ぐらいだろ!」


 大げさであるな。 このアダマンタイトの剣は魔剣ではないし、名前すら無いのだ。


 そりゃぁ我に掛かればこんな剣でも都市を消滅させられるであろうが、都市を吹き飛ばすくらいなら素直にレバンテインを使うのである。


 なに、コレは真剣になってくれた審査員に対する返礼であり、それ以外のモノを吹き飛ばす予定は無いのである。


 そして十分に温まったアダマンタイトの剣を審査員に対して振り抜いた。


 ぶをぉん!


 んごごごごごごご~っ!


 おや? 何故が審査員がいた一角が消失したのである。 おかしいな。 もう少し威力を抑えたつもりであったが、思いの外強かったのである。


「ああ、セットであるか。 ならばいたかた無いのであるな」


 魔族領の街並みであれば、魔術の暴走や暴発などに備えて魔力防御の仕掛けがあるのが常である。


 でないと街中で魔術が使えないであるからな。


 それが無かったと言うことは訓練用のセットと考えるのが通常であるからして、これは大会参加者を喜ばすためのセットだと考えるのが妥当であろう。


 ならば審査員を殺してしまったのは悪い事をしたのであるな。 まあ後の祭りであるが。


 とは言え折角せっかく用意して貰ったセットであるから、ストレス発散も兼ねて壊してしまうとしよう。


 ぶをぉん!


 んごごごごごごご~っ!


 まあこんな一日も悪くないのであるな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る