第22話 指名手配

 仕方が無いので我は、武闘大会に望みを掛けて街を徘徊していたのである。


「武闘大会に参加したいのである!」


 我が道の真ん中で宣言すると、何故だか往来おうらいを行く者共は目をらして我を避け始めたのである。


 ぬぅ、気に入らんな。 何か隠しているのであろうか?


 もしかすると、我に内緒で武闘大会を開催しているのやも知れんな。 何人か捕まえて武闘大会の参加方法を聞くとしよう。


「待つのである」

「うぎゃぁ、危ない人に捕まったぁ!」

「大人しく武闘大会の参加方法を教えるのである」

「ひぃぃぃ~っ! 知らないですぅ。 趣味は読書と瞑想めいそうなんで」

「隠し事は良くないのである」

嘘吐うそついていましたぁ。 本当の趣味はのぞきと女性の下着収集です!」

「まだ隠しているのであるな」

「3丁目の下着ドロは俺がやりましたぁぁぁ~っ!」


 どうやら本当に武闘大会の事は知らない様であるな。 ならば次である。


「捕まえたのである」

「うぎゃぁぁぁ~っ、こっちに来たぁ!」

「武闘大会の参加方法をくのである」

「知りませんよぉぉぉ~っ! 僕の趣味は勉強と貯金です!」

「隠し事は良くないのである」

「嘘吐いていましたぁ。 僕の仕事はは詐欺さぎと窃盗です!」

「まだ隠しているのであるな」

「2丁目の放火は僕がやりましたぁぁぁ~っ!」


 ぬぅ、コイツも知らない様であるな。


「おい、1丁目の魔力災害は貴様が原因であるとのタレコミがあったのだが? 治安維持局まで同行してもらうぞ!」

「ふん、人違いなのである。 我は魔力災害など起こしていないのである!」

「それは貴様が決める事ではない。 黙秘権すら認めんからなっ!」

「ぬぅ、我はお前ごときに関わっている程、暇ではないのである。 失せるが良い」

「貴様ぁぁぁ~っ! 公務執行妨害で処罰してくれる!」


 頭のおかしな男に絡まれたかと思うと、何故か戦闘要員が我を取り囲んだのである。


 もしかしてこれは武闘大会のスカウトであろうか? ならば手を抜くワケにはいかないのであるな。


「かかってくるのである!」

めてんじゃねぇぞ、クソがっ!」


 そう言って遅いかかってくるのであるが、遅過ぎるのである。 さて、どうしたモノであるかな。


 さすがに殺してしまっては武闘大会に参加させて貰えなくなる可能性があるので、マズいのである。


 しかしよくよく見れは、審査員たちは完全防備の皮鎧かわよろいを身に着け、怪我けがへの備えは万全ばんぜんな様である。 ならばデコピンでも死ぬ事はあるまい。


 ピン!


「うぎゃぁぁぁ~っ!」


 ピン!


「ぎぇぇぇ~っ!」


 ふむ、ヘルムを着けていると頭が爆散する事はないみたいであるな。 ならばパフォーマンスとしてデコピン連打を披露するのである。


 ピン! ピン! ピピピン!


「ぎゃばっ!」「ぐへっ!」「ぐふぉっ!」


 決まったのである。 審査員たちに立っている者は存在しない。


「コイツ強いぞ! 応援を呼べっ!」


 ぬぬっ、第二審査であろうか? 大会出場への道は遠いのであるな。


 おおぅっ、今度は随分な数の審査員であるな。 これは張り切らねばならないのである。


「囲め囲めっ! 囲んで一気にブチ殺せっ!」


 何だか物騒な審査員が混じっているようであるな。 今度は大人数を相手にする試験であろうか? だが人数が多くても変わらない、一人ずつ倒せば良いのである。


「コイツ、やりが刺さらないんだがっ!」

「ダメだっ! 剣でも切れやしねぇっ!」


 ピン! ピン! ピピピン!


「ぐゃばっ!」「ばへっ!」「ぼふぉっ!」


「包囲網が崩壊するぞっ! それまでに何とか致命傷を与えるんだっ!」


 ピン! ピン! ピピピン!


「げゃばっ!」「ぼへっ!」「ぐふぉっ!」


「俺たちじゃ相手にならねぇ! 誰かっ、騎士団に救援を要請しろっ!」


 ピン! ピン! ピピピン!


「ぎゃばぁぁぁ~っ!」「ぐへぁぁぁ~っっ!」「ぼふぉぉぉ~っ!」


 しばらくデコピンの舞いを続けていると、何だか高級そうな金属鎧を身に纏った一団が現れた。 特別審査員であろうか?


「抵抗は無駄である! 我ら玄武げんぶ騎士団は無敵の固さを誇っているからなっ!」


 何だか矢鱈やたらと偉そうな審査員であるのだな。


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