第21話 資料室
「魔王の事が知りたいのである!」
「今度は魔王ですか? どれだけ戦いたいんですか? もう無視して良いですか? 知りたい事があるならそこの資料室で調べるか、図書館にでも行って下さい!」
「
「誰の所為ですかっ!」
受付嬢はストレス過多であるの様なので、暫くそっとしておくのである。
それにしても資料室であるか。 我は魔王城の資料室にすら入った事がないのであるがな。 まぁ
「受付嬢よ、主も読書でもして心を落ち着けるのである」
「余計なお世話です! アビスさんお一人で読書でも何でもしておいて下さい!」
またもやフラれたのである。 別に我は寂しがり屋ではないので、一人で読書も出来るのである。
受付嬢に指示された資料室に入ってみると、そこは貸切状態であった。 やはり
我が読書をしないのは筋肉が寂しがるのと、執務で文字を見飽きているからであって、決して勉強嫌いなのではないのである。
とは言え本がズラリと並んでいても、ドコに何が書いているかは判らないので手下を召喚して手伝わせるのである。
「手下召喚、解体屋!」
「うわっ! 何が起こったっす? あれ? アビスさんじゃぁないっすか。 王都に行ったんじゃなかったんすか?」
「ここは王都ギルドである!」
「えっ? ついさっきまで魔物の解体をしていたんすよ。 王都まで、どんだけ距離があると思っているんすか!」
「召喚したのである!」
「はぁ? 本当に王都のギルドっすか? てか本ばかりじゃないっすか」
「その扉を出れば、受付嬢がいるので確認するのである」
「はぁ、そうっすか。 んじゃぁちょっと確認してくるっす」
そう言って解体屋は部屋を出て行った。 まあ直後に受付嬢の発狂する声が響いたのであるが。
「あっ、戻ったっす。 何だかあの受付嬢、アビスさんの名前を出したら発狂していたっすよ。 何かしたんすか?」
「強者への仲介を頼んだだけである」
「はぁ、つまりはマイペースにしていたって事っすね。 それでオレっちはどうして呼ばれたんすか?」
「解体屋は随分と落ち着いているのであるな」
「逆らっても無駄な場合は、素直になる事にしているっす。 それでオレっちは何を解体すれば良いんすか?」
「この中から魔王に関する資料を集めるのである」
「あの…オレっち解体屋っすよ?」
「まさか字が読めないのであるか?」
「いや、解体屋だって文字を読んだり書いたりするっすよ」
「ならば作業に取り掛かるのである」
「オレっち解体屋…」
「作業に取り掛かるのである!」
「
うむ、察しの悪さはあるが、中々使える男であるな。 それにしても
「慣れておるのか?」
「解体する方法が判らない時や、魔物が初見の場合は資料室で調べるっすからね」
「解体屋、出来る男である。 後で酒でも
「あざっす! ゴチになりやす、コンチキショウっす!」
そうして解体屋は、魔王に関して書かれた書物を差し出してきた。 うむ、上出来であるな。
「ご苦労である。
「ははぁ、有難き幸せっす」
我は白金貨数枚を解体屋に手渡し、資料の確認に入る。
【魔王とは】
『魔族を
ぬぅ、少し間違っておるのであるな。
【魔界とは】
『魔界とは魔族が住む大陸の事である。 なお、魔界に到達するにはゲートを通って…』
ぬぬ、ゲートであるか? そんなモノは知らないのである。 人族が作ったモノであろうか?
【魔族とは】
『主に魔界に生息する生物であり、独特の言語や文化を要している。 一般的な魔族には人型の者も含まれ…』
いやいや。 一部の魔物も魔族として生活しているのであるがな。
【第一次人魔戦争とは】
『その時が、魔族が確認された最初であった。 突如空から大量の人型生物が現れ、様々な魔術を使って…』
そうか、その時は魔術が主体の戦いであったのだな。 確か食べ物だか水が合わなかったから撤退したのであったか。
【第二次人魔戦争とは】
『前回同様、空から現れた多くの魔族に対して、聖剣を持った勇者が対峙して見事返り討ちに…』
前回の失敗を経験として、食料持参で攻め入ったが、途中で尽きて撤退したのであったな。
【第三次人魔戦争とは】
『度重なる魔族の侵攻に業を煮やした人類は、唯一の対抗手段である勇者パーティーを魔界に送り込むため…』
そうそう、初めて勇者が攻め入って来た時の話であるな。 何でも
【第四次人魔戦争とは】
『
魔界で散々迷子になってから帰っていったらしいな。 詳しくは知らないであるが。
【第五次人魔戦争とは】
『魔族による
風土病に患って、途中で息絶えたのではあるまいか?
うむ、全然戦っていないのである…。
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